魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん

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第四章

219『嵐の前の静けさ』

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 アンナリーナたちはすぐにツリーハウスに場所を移した。
 あの場に留まっていても意味がないし、何よりも誰かに見られたら騒動になる。
 ネロが土魔法で墓所を整えたあと、ツリーハウスまで転移し、まずは2人に部屋を与えた。
 そこで2人に【洗浄】をかけ、特に棺桶の中でボロボロになった着衣を取り替える。
 これはとりあえず、マチルダの夫にはネロのローブを、マチルダにはアラーニェが学院で侍女をするときのドレスが貸し与えられた。

「すぐに相応しい衣装を用意するから、今夜のところはこれで我慢してちょうだい。
 それと、マチルダさんの旦那様の名前は何と言うの?」

「トラサルディです。お嬢様」

 すっかり骨だけのスケルトンな彼は、生前デラガルサでは大店の店主だった。
 マチルダ共々、その頃のノウハウを発揮してもらうつもりでいる。

「ではトラサルディ、あなたにはマチルダとともにうちの雑務をお願いします。
 うちの中は……細々とした掃除や洗濯などは魔法で行うため、雑用を望んでいるわけではありません。
 特に大切なのは、全体の取りまとめ……これは個々人との連絡ですね。
 それともうひとつはポーションなどの販売です」

「販売ですか?」

 これに関しては、マチルダは自分が関わってきたデラガルサの事しか知らず、トラサルディはまったくの初耳だ。

「そう、細かい事は後で書類にして渡しますが、取引先はいくつかあります。
 そこに、決められた日時に納品して、次の注文を受けてきて欲しいのです」

 今まではアンナリーナやテオドールが時間を作って行っていたが、専任のものがいればずいぶんと負担が減る。

「もちろん、トラサルディには生きた人間に見えるように魔法をかけます。
 マチルダはそのままで大丈夫そうね」

 微笑むアンナリーナの元で、マチルダとトラサルディの “ 第二の人生 ”が始まる。



「おまえの故国のダンジョンに潜りたい?
 何言ってんだ、おまえ!」

 アンナリーナが新たなダンジョン攻略に興味を示して、それならばあの、スタンピートを煽ったダンジョン(仮)を探索しようと思ったのだ。
 だが過保護なテオドールが声を荒げて怒った。

「え? どうしたの、熊さん」

 アンナリーナがびっくりしている。
 だって彼女にとってあの国での事は過去の事だ。
 今でも、このツリーハウスのある魔獣の森はあの国に隣接しているが、気にした事はないのだ。
 あの、アンナリーナにとって忌まわしい記憶しかない村はもうない。
 その母体である国すら存亡の危機に陥っていた。

「私の事、気にしてくれてるの?
 熊さん、優しいね」

「ばっ、何言ってんだよ!」

「主人、あそこにはまだ一度も潜っていない。
 もう少し落ち着いて探査出来る時にした方がいいのではないか?」

 セトからもダメ出しを食らった。
 今回は諦めざるを得ないようだ。

「絶対駄目だと言ってるわけじゃない。だが、せめて船旅が終わってからの方がいい」

 テオドールの言葉がトドメだった。

「デラガルサの深層で我慢しろ。
 何なら新しい階層に行ってもいい」

「やったー!!」

 喜びのあまり、くるくる回るアンナリーナの姿に、皆は笑いを誘われた。
 こんな風に皆でツリーハウスのリビングでまったりしているが、本来彼らは大陸へ渡航中なのだ。
 見張りとしてイジが残っているが、1日のほとんどを船以外で過ごしているアンナリーナはただ日々が過ぎて行くのを待つばかりだ。

 そんな風にして2ヶ月ほど過ぎた時、本当に思いがけない事件がアンナリーナたちを襲った。

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