魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん

文字の大きさ
558 / 577
第四章

318『浮島の譲渡契約』

しおりを挟む
 老公爵はアンナリーナとセトを自らの書斎に案内した。
 そこでは侍女が、すぐにでも茶を淹れられるよう準備して待っていた。

「そこに掛けてくれ。
 あと、お前たちは茶を出したらここから出て行くように」

 頷いて、無言で自分たちの仕事をこなし、そしてまた無言で礼をした2人が部屋を出たのを確かめてから、老公爵は話し始めた。

「さて、リーナ殿が提供してくれた事で孫娘の命が助かった。
 今度は儂が約束を守る番だな。
 まずはこれを見てくれ」

 先ほど、退室して行く前に筆頭執事が用意していた巻物を広げる。
 それは自領が詳しく描かれた地図であって、そこには浮島も記入されていた。

「儂の領地の北の端……主に海上や海岸沿いに分布している【浮島】は、ある程度の大きさのものは7個。
 細かいものは無数にあるが、リーナ殿の求めているのは」

 そこで老公爵は顔を上げた。

「そんなものではないのじゃな?」

「はい、それなりの大きさの【浮島】が欲しいのです。
 公爵様は私が望んだものを本当にくださるのですか?」

「もちろん約束は守る。
 どちらにしろあれは儂にとっては無用の長物。
 それがある事によって土地が陰り、あまり良いものではない」

「では、私がそれを移動しても?」

「どうやって動かすつもりかわからんが、構わぬよ。
 むしろ大歓迎だ」

 アンナリーナはにっこりと笑った。

「では契約を。
 そして明日にでも行ってきます」



 今日のこの後の時間はジャクリーヌの、これからのケアのために使う。
 夕餉の支度の前の休憩時間に入っていた料理長に無理を言い、時間を取ってもらった。
 彼はかなり思考が柔軟な人間で、アンナリーナからもたらされるメニューに興味津々のようだ。
 そして、高栄養食の観念を教えられ、今までの肉料理などの高カロリー料理とはまた違ったものだと知ってびっくりしていた。

「鳥肉のハンバーグ……これはオークとミノタウロスの合挽きですが、ハンバーグと言う料理です。
 そうですね、一緒に作ってみましょうか」

 そこから即席の料理教室となった。
 まずは基本のハンバーグ。
 下働きの少年に玉ねぎのみじん切りをするように頼み、アンナリーナと料理長は食料庫に向かった。

「オーク肉はありますか?
 牛系魔獣の肉は?」

「オークはこちらに。
 あと牛系は牛鹿と言う、このあたりでは昔から食べられている魔獣の肉ですが、いかがでしょう?」

 アンナリーナは巻かれていた布を外し、肉質を見る。
 赤身のきれいな肉だ。

「どうやらあっさり目のようですね。
 ではオーク6、牛鹿4の割合で細かくみじん切りにして下さい」

 次はみじん切りされた玉ねぎを飴色になるまで炒めていく。
 同時にパンをすりおろし、調味料を確かめた。

「普段、肉の臭み消しには何を使ってますか?」

 料理長はかぶりを振る。
 どうやら、公爵家レベルの料理人でも臭み消しの概念はないようだ。

「そうですね……生姜はありますか?
 はい、それです。それをすりおろして下さい」

 料理長以下、公爵家の料理人たちはアンナリーナの言うことを一言一句聞き逃さないように集中し、その手元を食い入るように見つめていた。
しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

留学してたら、愚昧がやらかした件。

庭にハニワ
ファンタジー
バカだアホだ、と思っちゃいたが、本当に愚かしい妹。老害と化した祖父母に甘やかし放題されて、聖女気取りで日々暮らしてるらしい。どうしてくれよう……。 R−15は基本です。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした

ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。 彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。 そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。 しかし、公爵にもディアにも秘密があった。 その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。 ※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています ※表紙画像はAIで作成したものです

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です

結城芙由奈@コミカライズ連載中
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】 私には婚約中の王子がいた。 ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。 そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。 次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。 目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。 名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。 ※他サイトでも投稿中

婚約者を姉に奪われ、婚約破棄されたエリーゼは、王子殿下に国外追放されて捨てられた先は、なんと魔獣がいる森。そこから大逆転するしかない?怒りの

山田 バルス
ファンタジー
王宮の広間は、冷え切った空気に満ちていた。  玉座の前にひとり、少女が|跪い《ひざまず》ていた。  エリーゼ=アルセリア。  目の前に立つのは、王国第一王子、シャルル=レインハルト。 「─エリーゼ=アルセリア。貴様との婚約は、ここに破棄する」 「……なぜ、ですか……?」  声が震える。  彼女の問いに、王子は冷然と答えた。 「貴様が、カリーナ嬢をいじめたからだ」 「そ、そんな……! 私が、姉様を、いじめた……?」 「カリーナ嬢からすべて聞いている。お前は陰湿な手段で彼女を苦しめ、王家の威信をも|貶めた《おとし》さらに、王家に対する謀反を企てているとか」  広間にざわめきが広がる。  ──すべて、仕組まれていたのだ。 「私は、姉様にも王家にも……そんなこと……していません……!」  必死に訴えるエリーゼの声は、虚しく広間に消えた。 「黙れ!」  シャルルの一喝が、広間に響き渡る。 「貴様のような下劣な女を、王家に迎え入れるわけにはいかぬ」  広間は、再び深い静寂に沈んだ。 「よって、貴様との婚約は破棄。さらに──」  王子は、無慈悲に言葉を重ねた。 「国外追放を命じる」  その宣告に、エリーゼの膝が崩れた。 「そ、そんな……!」  桃色の髪が広間に広がる。  必死にすがろうとするも、誰も助けようとはしなかった。 「王の不在時に|謀反《むほん》を企てる不届き者など不要。王国のためにもな」  シャルルの隣で、カリーナがくすりと笑った。  まるで、エリーゼの絶望を甘美な蜜のように味わうかのように。  なぜ。  なぜ、こんなことに──。  エリーゼは、震える指で自らの胸を掴む。  彼女はただ、幼い頃から姉に憧れ、姉に尽くし、姉を支えようとしていただけだったのに。  それが裏切りで返され、今、すべてを失おうとしている。 兵士たちが進み出る。  無骨な手で、エリーゼの両手を後ろ手に縛り上げた。 「離して、ください……っ」  必死に抵抗するも、力は弱い。。  誰も助けない。エリーゼは、見た。  カリーナが、微笑みながらシャルルに腕を絡め、勝者の顔でこちらを見下ろしているのを。  ──すべては、最初から、こうなるよう仕組まれていたのだ。  重い扉が開かれる。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

処理中です...