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忍ぶ恋
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「ふぅ。」
召使いの部屋とは思えない程、大きな部屋で、久光が溜め息をついていた。
「如何なさいましたか。」
隣で、彼の乳母が心配しながら問う。
彼は、乳母のツテでこの邸に参ったのだが、それには哀しい過去があったのだ。
「まだ、お心の傷は癒えませんか。御両親を亡くされたのは大変不幸なことです。しかし、お気を確かになさいませ。-若君様。」
久光は早くに家族全員を亡くしている。
そして、彼自身は良家の出で、本来ならこんな場所で他人に仕えることなど、有り得ないのだ。
(違う。確かにそれは悲しかったけれど………僕は、それを考えているわけではないんだ。)
「久光、久光、何処に居るの?」
日が暮れて、暗くなった頃、姫君は久光の部屋へやって来た。
「此処です、如何なさいましたか?御自らいらっしゃるなんて。」
ふふ、と笑いつつ、姫君は久光に近づいていく。
「お堅いのね。この邸の者は、皆。御簾の内から出ると、叱るのよ。」
当たり前でしょう、と言いたいのを、久光はぐっとおさえた。
「夜も、深まるわ。夜の桜も、美しいわね。」
姫君はうっとりと外を眺めて言った。
召使いの部屋とは思えない程、大きな部屋で、久光が溜め息をついていた。
「如何なさいましたか。」
隣で、彼の乳母が心配しながら問う。
彼は、乳母のツテでこの邸に参ったのだが、それには哀しい過去があったのだ。
「まだ、お心の傷は癒えませんか。御両親を亡くされたのは大変不幸なことです。しかし、お気を確かになさいませ。-若君様。」
久光は早くに家族全員を亡くしている。
そして、彼自身は良家の出で、本来ならこんな場所で他人に仕えることなど、有り得ないのだ。
(違う。確かにそれは悲しかったけれど………僕は、それを考えているわけではないんだ。)
「久光、久光、何処に居るの?」
日が暮れて、暗くなった頃、姫君は久光の部屋へやって来た。
「此処です、如何なさいましたか?御自らいらっしゃるなんて。」
ふふ、と笑いつつ、姫君は久光に近づいていく。
「お堅いのね。この邸の者は、皆。御簾の内から出ると、叱るのよ。」
当たり前でしょう、と言いたいのを、久光はぐっとおさえた。
「夜も、深まるわ。夜の桜も、美しいわね。」
姫君はうっとりと外を眺めて言った。
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