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新しい生活
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喪があけ、姫君と女房達は叔父君の邸へ移った。
叔父君は姫君と大君を同等に扱おうと思っていたので、大君の向かいの、別の対に住まわせた。
「景色の良いお邸ですわ、姫様。御覧になって下さい!」
女房達はきゃあきゃあと声を上げてはしゃいでいる。
一方、姫君は独りで畳の上に座り、脇息にもたれかかっていた。
「私はいいわ。折角ですから、貴女達は楽しんでいなさい。私は疲れたので、少し休んでいます。」
残念そうな顔をした女房達だが、すぐに切り替え、景色を愛でながら賑やかに喋っていた。
(嫌ね………あれから、どれだけ経ったでしょう。なのに、何一つ忘れられないわ。お父様、お母様、それに、久光も…………帰ってこないのは分かっているけれど、寂しいのよ。)
独り、喪失感に襲われ、泣いていた姫君を、珠寿だけが見ていた。
次の日は、大君との顔合わせの日になっていた。
姫君が大君を嫌っていたのは珠寿も知っていたので、姫君を屏風や几帳で囲むように配置した。
「大君様がいらっしゃいました。」
別の女房がそう知らせたので、珠寿は姫君を屏風や几帳の中に押し込んだ。
「何?この几帳の数は。」
と、大君がいらいらしながら問うので、姫君は困ってしまう。
「姫様はお風邪を召しておられるので、お目通りはさけたい、との御要望で。」
そう、珠寿が機転を利かせて言いのけた。
「ふぅん。」
その言葉には全く耳を傾けず、大君は几帳を剥がすように倒す。
「大君様、おやめください!」
珠寿が慌てて大君の袿の裾を掴んだが、大君は珠寿を蹴飛ばしてしまった。
(まぁ、何て意地の悪い!)
姫君はスッと大君にバレないように抜けだした。
(チッ。不細工な間抜け面を見届けてやろうと思ってたのに。行動の早い娘だこと。)
叔父君は姫君と大君を同等に扱おうと思っていたので、大君の向かいの、別の対に住まわせた。
「景色の良いお邸ですわ、姫様。御覧になって下さい!」
女房達はきゃあきゃあと声を上げてはしゃいでいる。
一方、姫君は独りで畳の上に座り、脇息にもたれかかっていた。
「私はいいわ。折角ですから、貴女達は楽しんでいなさい。私は疲れたので、少し休んでいます。」
残念そうな顔をした女房達だが、すぐに切り替え、景色を愛でながら賑やかに喋っていた。
(嫌ね………あれから、どれだけ経ったでしょう。なのに、何一つ忘れられないわ。お父様、お母様、それに、久光も…………帰ってこないのは分かっているけれど、寂しいのよ。)
独り、喪失感に襲われ、泣いていた姫君を、珠寿だけが見ていた。
次の日は、大君との顔合わせの日になっていた。
姫君が大君を嫌っていたのは珠寿も知っていたので、姫君を屏風や几帳で囲むように配置した。
「大君様がいらっしゃいました。」
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「何?この几帳の数は。」
と、大君がいらいらしながら問うので、姫君は困ってしまう。
「姫様はお風邪を召しておられるので、お目通りはさけたい、との御要望で。」
そう、珠寿が機転を利かせて言いのけた。
「ふぅん。」
その言葉には全く耳を傾けず、大君は几帳を剥がすように倒す。
「大君様、おやめください!」
珠寿が慌てて大君の袿の裾を掴んだが、大君は珠寿を蹴飛ばしてしまった。
(まぁ、何て意地の悪い!)
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