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恋に恋せよ
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姫君を庇い死んだ久光は、その後の姫君の行方を案じていた。
その為、黄泉の国にも行かず、現し世に残り、亡霊として彷徨っていた。
(姫様…………)
哀れな恋人達。
決して、この恋は報われることを知らない。
(父上が亡くならなければ、僕は姫様と同等に…………恋をしても、誰にも咎められなかったろうに。)
嘆いても、そればかりは仕方が無い。いくらそう言えども、大臣であった亡き父君は帰っては来ない。
(零落してしまったのは、もう、仕方が無いことなんだ………生きていても、家族は居ないのだし、婆やも死んだから、きっと、生きてはいけないんだろうな。)
そう思うと、世の中の儚さが思いやられる様だった。
(…………………………………)
姫君は半ば放心状態で脇息にもたれていた。
「姫様。如何なさいましたか。」
それを珠寿が心配して駆け寄るが、全くそれに気が付かない。
(珠寿達には悪いけれど、我が魂を、連れて逝ってくれないかしら。)
まだ長いまま、裾の辺りで渦巻く黒髪を、鬱陶しく思う。
「姫様。如何なさいましたか!?」
珠寿は一番に姫君のことを考えているので、姫君のことを一番心配している人であった。
(………………!?)
やっと気が付いたように振り向くと、泣きそうな珠寿が座っていた。
「姫様。涙が…………」
「いいえ、何でもないわ。本当に、何でもないのよ。だから、下がってもよろしいわ。」
珠寿が嘘だ、と顔を顰めると、突然遠くから、「珠寿~!!」と呼ぶ声がした。
「大君どのが呼んでいるわ。さあ、参りなさい。此処にいたら、また、何か言われそうじゃないの。」
仕方が無く、珠寿は「御前、失礼致します」と、去って行く。
久光は暫く彷徨っていたが、やっとの思いで姫君の邸へ着いた。
(死んだはずの僕が目の前に現れたら、姫様、驚かれるかな。)
その前に、姫君が幽霊が見えるのか、と心配していたが、姫君は霊感がある人だった。
-クスン。
部屋から、人が泣いて、啜っている音がした。
(誰か?)
久光が部屋に入ると、几帳越しに、誰かが泣いていた。
(姫様かな?)
見てみると、案の定、姫君であった。
『姫様。』
「何?誰?」
久光の呼びかけた声に応じるように、問いかけてきた。
『僕です、覚えておられますか?久光です。』
(え?久光…………!?)
驚いて顔を上げると、正面にいたのは、他でもない、幼馴染の久光だった。
『覚えてらっしゃる様ですね。』
当たり前、と姫君は言いたかったが、喉につかえて出てこない。
「久…………」
やっとの思いで声を出したが、その頃には既に、久光は姿を消していた。
「久光ッ!」
その為、黄泉の国にも行かず、現し世に残り、亡霊として彷徨っていた。
(姫様…………)
哀れな恋人達。
決して、この恋は報われることを知らない。
(父上が亡くならなければ、僕は姫様と同等に…………恋をしても、誰にも咎められなかったろうに。)
嘆いても、そればかりは仕方が無い。いくらそう言えども、大臣であった亡き父君は帰っては来ない。
(零落してしまったのは、もう、仕方が無いことなんだ………生きていても、家族は居ないのだし、婆やも死んだから、きっと、生きてはいけないんだろうな。)
そう思うと、世の中の儚さが思いやられる様だった。
(…………………………………)
姫君は半ば放心状態で脇息にもたれていた。
「姫様。如何なさいましたか。」
それを珠寿が心配して駆け寄るが、全くそれに気が付かない。
(珠寿達には悪いけれど、我が魂を、連れて逝ってくれないかしら。)
まだ長いまま、裾の辺りで渦巻く黒髪を、鬱陶しく思う。
「姫様。如何なさいましたか!?」
珠寿は一番に姫君のことを考えているので、姫君のことを一番心配している人であった。
(………………!?)
やっと気が付いたように振り向くと、泣きそうな珠寿が座っていた。
「姫様。涙が…………」
「いいえ、何でもないわ。本当に、何でもないのよ。だから、下がってもよろしいわ。」
珠寿が嘘だ、と顔を顰めると、突然遠くから、「珠寿~!!」と呼ぶ声がした。
「大君どのが呼んでいるわ。さあ、参りなさい。此処にいたら、また、何か言われそうじゃないの。」
仕方が無く、珠寿は「御前、失礼致します」と、去って行く。
久光は暫く彷徨っていたが、やっとの思いで姫君の邸へ着いた。
(死んだはずの僕が目の前に現れたら、姫様、驚かれるかな。)
その前に、姫君が幽霊が見えるのか、と心配していたが、姫君は霊感がある人だった。
-クスン。
部屋から、人が泣いて、啜っている音がした。
(誰か?)
久光が部屋に入ると、几帳越しに、誰かが泣いていた。
(姫様かな?)
見てみると、案の定、姫君であった。
『姫様。』
「何?誰?」
久光の呼びかけた声に応じるように、問いかけてきた。
『僕です、覚えておられますか?久光です。』
(え?久光…………!?)
驚いて顔を上げると、正面にいたのは、他でもない、幼馴染の久光だった。
『覚えてらっしゃる様ですね。』
当たり前、と姫君は言いたかったが、喉につかえて出てこない。
「久…………」
やっとの思いで声を出したが、その頃には既に、久光は姿を消していた。
「久光ッ!」
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