推しよ、ここはBLゲームの世界です!〜属性:腐女子のモブは、推しも世界も救いたい〜

はちよ

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15話 招集

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 アンの家を後にし、エルヴィンは直ぐに王都へ向かうべく馬車に乗った。
 揺れる馬車の中で、向かいに座るルーカスはわざとらしくため息をつく。

「エルヴィン、お前は何を考えてるんだ」
「…………」
「王都に向かうってことは、眷属として救世主と契約する決意が固まったんだな?」
「……好きにしろ」

 不貞腐れたようなその言葉に、ルーカスの視線は段々鋭くなっていく。

「命令を受けることと、お前がアンちゃんを好きなこと……何の関係もないだろう」
「…………」
「確かに各地を巡る旅に出ればアンちゃんに会えなくなるだろうな。それに、眷属となれば護衛も兼ねて王宮内の屋敷で暮らすことになる。でもそれは今も同じはずだ」

 エルヴィンの所属する傭兵団は傭兵だけの小さな集落があり、エルヴィンは基本的にそこで暮らしている。そこで依頼を受けては都度必要な人材で出征し、戦場で何週間と過ごすことも多い。

 傭兵達の集落とアンの住む町は特別近いわけでもなく、眷属になったとしてエルヴィンの生活が大きく変わることは無いだろう。

「お前は何がそんなに嫌なんだ」

 ルーカスの言葉に答えることなく、エルヴィンはただ黙って窓の外を睨み続けた。


 ◆◆◆


 アンの元にルーカスが来る数日前のこと。

「(国王陛下直々の押印の入った呼び出しなんて……こんなの初めてだ)」

 いつも通り、傭兵として魔獣の駆除にあたっていたエルヴィンの元に国王陛下からの呼び出しがかかったのは2日前のこと。

 後は他の仲間に任せ、丸2日馬を走らせやっと王都までたどり着いたエルヴィンは案内に従い、初めて王宮内に足を踏み入れた。

「(……やたら警備が手厚い。それに……案内してるのは教皇庁の奴ら? 何があった……?)」

 王宮内に入ったことが無いとはいえ、外ではなくやたら「内」に配置された警備兵の数と、教皇庁の所属を表す制服を纏った神官たちがかなり行き交う様子にエルヴィンは警戒心を強めた。

 とにかく、「何か」が起こっていることは間違いない。
 持っていた武器も防具も全て回収され、丸腰となった状態でエルヴィンは一室に案内された。

「こちらで暫くお待ちください」

 そう開かれた扉の先。
 警戒しながら覗いた部屋の中に見知った金髪を見つけ、エルヴィンの表情は和らいだ。

「ルーカス!」

 その部屋にはルーカスの他に2人男がいたが、どちらからも敵意は感じない。
 テーブルにはお茶と軽食が並び、外の物々しさはどこへやら、そこでは穏やかな時間が流れているようだった。

「エルヴィン、お前もか」

 ルーカスもエルヴィンに柔らかく笑顔を向け、隣に座るように促した。

「こんなところで会うなんてな。ルーカスも国王陛下からの呼び出しか?」
「あぁ。僕も受け取ったよ」
「……外の警備、やけに厳重だったな」
「まぁ、『何か』があったんだろうね」

 含みを持たせ、ルーカスは他の二人に視線を送る。
 その視線にまず反応したのは、見るからに几帳面そうな男だった。

「王都騎士団所属、クラウスです」

 クラウスと名乗った男は王都騎士団の制服をきっちりと着込み、姿勢を真っ直ぐに伸ばしてエルヴィンを見た。
 その後に続くように、クラウスの隣の男も会釈をする。

「テオです。俺はただの農民で……なんでこんな所に呼ばれたのか分からないんですけど」

 テオは人の良さそうな笑みを浮かべ、エルヴィンに握手を求めた。

「あぁ……西傭兵団のエルヴィンだ。よろしく」

 クラウスは身長は高いが細身、テオは身長はエルヴィンと同じくらいだが農業で鍛えたのか、しっかりとした筋肉があった。

「(王都騎士団に貴族出身の超エリートが居るって噂は聞いてたけど……)」

 恐らくクラウスがその「超エリート」なのだろうとエルヴィンはあたりをつける。
 その所作は無駄がないほど美しく、立ち居振る舞いだけで彼が貴族の出であることは明白だった。

「(ルーカスは国内一の魔法使い、クラウスは超エリートの騎士……なら、この男は?)」

 このメンバーの中で「ただの農民」がいる筈がない。
 エルヴィンの視線にテオは困ったように笑い、クラウスは真っ直ぐにエルヴィンを見た。

「テオ殿はとても優秀な治癒士だ。どんな病もすぐに治してしてしまうと一時期王都はテオ殿の噂で持ち切りだった事もある。私も部下を一度目の前で助けていただいた」
「へぇ……治癒士って高圧的な奴らが多いから意外だな」
「そんな、俺はただの農家ですから……」

 謙遜の言葉に嫌味はなく、彼の笑顔はその人柄が全て現れているようだった。

「エルヴィン殿の噂もかねがね。先日もモンスターベアの討伐で大活躍だったとうかがいました」
「そうですよ!ディアナ王国が誇る最強の戦士の噂は俺もよく聞いていました。まさかこんなに若くて爽やかな方とは思いもしませんでした」
「いや、俺は体質的に無茶が効くから無茶が出来るだけで……」

 部屋に響いたノックの音に、全員が口をつぐみ立ち上がる。

 重々しい音を立てて開いた扉から現れたのは、大神官と第二王子・バージルだった。

 小柄の割に割腹のいい大神官は白地に金の豪華な刺繍が施された式典用の礼服をまとっており物々しい。
 バージルは特別式典用の装いでは無かったが、癖のある黒髪から除く表情は厳しかった。

 直ぐに頭を下げた4人に顔を上げるように告げ、バージルは上座に腰を下ろす。

「とりあえずはこれで全員だな。一旦座ってくれ」

 全員が腰を下ろすと、大神官がゆっくりと前に出た。

「お集まりいただき、感謝申し上げます。バージル殿下を含め、ここにいらっしゃる皆様には国王陛下より重要な任務が下りました」

 大神官より重々しく告げられたのは「救世主」の召喚について。

 既に教皇庁では世界を蝕む魔力汚染の解決策として救世主の召喚に成功したとのこと。

 そして、その救世主が役割を果たすため、眷属として契約し傍に仕えて欲しいという内容だった。

 驚きと緊張が走る空気の中、エルヴィンだけは別の混乱の中にいた。

「(救世主……眷属……バージル、クラウス、テオ……ルーカス…………まさか)」

 エルヴィンは静かに唇を噛み締める。

「(俺は、この未来を知っている)」


*****

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今後ともお付き合いいただけますと幸いです。


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