俺、勇者として召喚されたのに詰みました。〜これブチ切れ案件じゃないっすか?〜

なこ。

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第一話〜龍国リザドラ王国〜

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第一話~龍国リザドラ王国~



「あのー…すいません?きこえますかー?」





んー…眠い…なんだ…?なんか聞こえるような…





「もしもーし?きこえますかー?…あれ?聞こえないのかな…」




女の声…?眠たい…寝かせてくれよ…












「あのおおおおお!!!おきてくださああああい!!」

「だりゃあああああ!?び、びっくりしたぁ!」



急な耳元での大声に勢いよく起き上がると目の前には可愛らしい女の子がいた。


「よかったぁ!やっと起きた~!」

「…え、あ、まぁ、そうすね。あんだけ耳元で大声出されたら嫌でも起きますよね…。」

「うふふっ」



 目の前の女の子は俺の寝起きがそんなにおかしかったのか、くすくす笑っていた。


「ごめんなさいね、どうしても起きて欲しかったから…」
 
「そうですか…」


「にしてもぐっすりでしたね。あ、申し遅れました!私は小坂ていいます!」



見た目は20代前半ぐらいに見えるこの女の子は笑顔で自己紹介を始めた。



そんな中俺は、可愛い…日頃女の子と触れ合う機会が全く無い俺からしたらえげつない美貌の彼女と話すなんて烏滸がましいのでは、と陳腐なことを考えてた




「あのー?きいてますかー?」

「え!?ああ!はいきいてみゃっす」
「へ?」



ボーッとしてた時に顔を近づけられたものだから思っきり舌を噛んでしまった…。
恥ずかしさで顔を赤らめながら咳払いし、俺も自分の自己紹介をした。



「自分は堀井春風です」

「春風…すごくかっこいい名前だね!」

「そ、そおっすか///あ、あざぁす///」
多分俺の顔は今真っ赤だろうな。



「ご、ゴホンッあ、あの、小坂さん?」

「ん?なあに??」

「今更なんですけど…ここ…どこですか?」

「あー…」



今になってやっとこの場所がどこなのかを小坂さんに聞くことにした。



「なんか神殿みたいな建物ぽいんですけど…。俺がさっき居たとこは工場で、なぜここにいるかわかんないんですけど…。」

「工場…?私も実は知らないんですよね…。春風君より先に目を覚ましただけで…。だから何か知ってるかなって思って春風君を起こしたんだけど…。」

「そうゆうことですか…。俺もわからないんすけど…。」

「やっぱりそうですよね…。」



この小坂という子もなぜここにいるか分かってないみたいだった。



「とりあえず少し周りを調べて見ます、か、?」

「そうですね!行きましょう!」




ここで考えても埒があかないので周りを探索することにし、
立ち上がろうとした時にふと俺は気づいた。




「あれ…俺の足…」
「春風君?足がどうしたの?」
「いや、俺の足怪我してたはずなのに…」




確か俺の足は工場での火災で怪我をしたはずなのに傷1つない。

工場で着ていた服はボロボロであちこち焼けた箇所はあるのに、だ。

何かがおかしい。






「あれは夢だったのか…?いや、でも…」
「んー…?でも無事なら何よりじゃないですか!」
「確かにそう…だな」




疑問は消えないが怪我がないのは俺にとってはいい事だから気にしないことにした。

だがそれにしても工場の火災は凄くリアルだった。あの熱さも、呼吸する度に肺が燃えるような痛みも、そして最後に自分に落ちてきた…。

嫌、あれは夢だ。思い出すのは辞めよう。


妙にリアルだった夢を忘れるために俺は頭を振った。





「春風さーーーん!ここに扉ありますよー!」
 


「い、いつの間にあんなところまで…」
 
俺が長考してる間に小坂さんは遠くの方に行ってしまってたみたいだった。
  


「扉…?」

俺は急いで小坂さんの元へ急いだ。

「あ!春風君!!ここに扉があるの!」

「はぁはぁ…小坂さん、もうこんな所まで探索してたんですね…はぁはぁ…。」

「あ、ごめんなさい!春風君がぼーってしてたから先に探してました!」

「あ、すんません。ちょっと考え込んじゃってて…。」

「そんなことより!扉!どうします?開けてみます?」

「この扉…」


目の前には2mぐらいの大きさの扉があった。

というか、この神殿のような場所といいこの悪趣味とも言えるデザインの扉…。
 

「ここは本当に日本なのか…?」

「え?春風くん?日本…?」

「あ、すいません。ちょっとこんな建造物とかを聞いたことも見たこともなかったんで…」

「?まずニホンってなんですか?」

「え?」



 思わずバッと小坂さんの方へ顔を向けるが冗談で言ってるように見えない顔つきで俺を見つめていた。

この子の話してる言語は普通の日本語にしか聞こえないが日本を知らない…?
他国籍の子なのか?



「失礼ですが小坂さんはどこの国の方なんですか?」

「私ですか?私はナキラ国ってとこから来てますけど…」


ナキラ国…?聞いたことがないぞ?



「初めて聞く国ですけど…アジア系でそんな国があるのか…?」

「すいません、ニホンといい、アジアといい…なんですか?初めて聞く言葉なんですが…」

「…え?」


聞くところによると小坂さんが住んでいたナキラ国というのは俺がいた日本と全く似た文化の国らしく、違うのは名前だけ…。
 

「もしかしたらだが、俺たちは…異なった世界の人間同士なのかもしれない。」

「そんな…。異世界同士の私たちがどうして…」

「わからない。だけどもしかしたらその答えがこの扉の向こうにあるのかもしれねぇな…。」



 俺たちは扉に手をかけ開いた。
 ギィという音を立てながら扉はゆっくりと開く






「よくぞ参った。」






 扉の向こうには玉座に座る厳ついお爺さんと綺麗に整列している騎士達が居た。



「え?あのぉ、、、?」

「何をしておる。そこに参れ。」

ここはどこかと質問しようとしたのを偉そうなお爺さんに遮られた。
どこかのお偉いさんか…?
だとしてもなんだよ、、ここ…。



言われるがままお爺さんの正面に立つに俺と小坂さんは移動した。


「まずはそなたたちの名を聞こう」

「…。まずは自分から名乗るのが筋では?」

「貴様ァ!陛下に対して無礼だ!!!」

「よい。まだ現状を理解してないのだろう。よかろう。余は龍国りゅうこくリザドラ王国の王、ガザナル・レ・リザドラだ。」

「りゅう、こく?」

初めて聞く国の名だ…。龍…?リザドラ…?

 
「…ではそなた達の名はなんと申す。」


 
「…俺の名は堀井春風だ。」

「…私は、小坂…。小坂えみりです…」



 震える声の小坂さんに目をやると完全に萎縮しているのか、身を小さくし肩を震わしていた。
可哀想に…。

「ふん。今回は2人か…。」


「陛下、どうしても今城にいる老魔術師を集めて召喚の儀をするとしても2人が限界でして…。」


「(召喚の儀…?)どうゆうことだ?俺らはなぜここにいるんだ!?」


「…はぁ。子奴らは真に天の言う龍勇者なのか?1人は頼りない容姿に、もう1人は女ではないか。」


「(全く話聞いてねーじゃんか。っつか!頼りないつったかこのジジイ!!!そして龍勇者ってなんだよ、、、?)」




しかも召喚?2人が限界?龍勇者って…まるで…異世界ファンタジーじゃねーかよ、、、。





「…なぁジーさん。俺達にも分かりやーーーすく教えてくんねぇかな?言ってることが全部ちんぷんかんぷんなんだが。」

「お前!!!陛下に対してまた無礼な発言…!」
 
「よい。…教えてやろう。お主らはリザドラ王国の魔術師によって召喚されたのじゃ。」

「なんのためになんですか…?」




小坂さんも声を震わしながら王と呼ばれるジーさんに疑問を投げかけた。



「…我が国では300年ほど前に魔族と人間の戦争が絶えず起きていた。」

「魔族と人間の…戦争…?」

「…魔族は人間の国を滅ぼすほどの力があり…どれだけの戦力に人を割いても魔族の力は恐ろしく、儂ら人間はあと少しで滅亡しかける直前にまで追い詰められた。…そこに救世の者が現れた。」

「…」

「それが龍勇者じゃ。その龍勇者は異国から現れ、我らの窮地を救ったのじゃ。」

「…なるほど。だがそれと俺らはなんの関係が…?しかもそれ過去の話なんだろ?」

「…魔族がまた復活したのじゃ。」

「復活した…?魔族は滅びたんじゃないのか?」

「魔族の生き残りがまだ居たようなのじゃ。それが隠れて勢力を付け、そして今まさに各地で悪さをしておる。」

「そんなことが…」

「どうにか儂らも打開策はないかと策を講じ、それで神樹に天のお告げを賜わうことにしたのじゃ。」

「お告げ?それでそれにはなんと言われてたんだよ」

「…召喚によりこの地の争い止ゆる力持つ者現る。とな。」



それで召喚したのか。だけど…。


「…おい。なんで、2人も召喚する必要あるんだよ。しかも俺らを見た時に2人だけか、て言ったよな?どうゆう意味だそれは。」


俺らは2人も召喚された。そのお告げでは1人でいいのでは無いのか?



「…前回も召喚を行ったのじゃが、その召喚で現れた異世界人は龍勇者の力がなかったのじゃ。」

「龍勇者の力…?」

すると王の斜めに立っていた男がスっと前に出てきた



「龍勇者というのは龍を従属する力を持つのだ。前回の勇者はその力を持たぬ者だった。そして、そやつは国を裏切った。」

「まって下さい!裏切ったって…」

「前龍勇者は魔族寝返ったのだ。そして、この国の3つしか無かった龍の卵を…」


俺達の目の間にいる男の前には真っ黒の卵のようなものを手にしていた。
 

「この国にはもうこの2つ龍の卵しかない。そしてこの龍を、使役できる力を持てる者を早く見つけださねばならぬのだ。」

「…だから数多く召喚したかったってわけね。んでその龍勇者の資格はどうやって調べるんだ?」

「…その龍の卵は龍勇者の魔力を吸い、満月の夜に孵化する。ちょうど2人だ。それぞれがその卵を満月の日まで持つのだ。」

「満月って…次は何日後なんだよ。」

「質問の多い若造だ。1週間程前が満月だったからな。後3週間程だろう。」

「…私たちはそれまでの間どうしていたら…?」

「孵化次第、魔族討伐出来るように外に出て鍛錬でもしていればよかろう。」


このジジイ…。まぁ、この世界の情報も全くわからないからな。都合がいい。外に出て情報を集めるべきだな。


「さぁ、卵を受け取れ。」



俺は小坂さんと顔を見合わせお互い頷き、1歩前に出て卵を受け取った。




…?なんか動いたような…?





俺は卵に視線を落としたが、別に変わった様子は無い。
ただの気のせいか…?




「おい王様とやら。この卵、龍勇者なら孵化するんだろ?じゃあ俺と小坂さんの2人が孵化出来たら俺ら2人が龍勇者なのか?」

「…残念だがそれは無い。」
 
「?無いというのは…?」
 
「龍は勇者を1人しか選ばぬのじゃ。」

「じゃあ…?俺と小坂さんのどちらかしか卵を孵化出来ないのか?」

「そうじゃ。」

なんてこった。じゃあもし、もし孵化しなかったら…?

「じゃあ孵化しなかった方は元の世界に戻れるのですね!」

小坂さんは期待を宿した顔で問いただした。



「…。」

「?え?ねぇ王様?帰れるんでしょう?」

「残念じゃが、お主らは元の世界では死ぬ運命のもの達なのじゃよ。」

「どうゆうことだ?」

「わしらは龍勇者になりえる者を、異世界の“死んだ魂”として召喚したのじゃ。元の世界ではお主らは既に死んでいる人間じゃ。戻れる世界はない。」

「「!?」」



なんてことだ。じゃああの地獄絵図は夢じゃなかったのかよ…




「そんな…私…うぅっ…ひっく…」


小坂さんは泣き落ち出した。そうだよな。こんな場所に急に連れてこられたと思ったら元の世界で勝手に死んだことにされてるんだもんな…

おれは小柄な彼女を励まそうと手を伸ばした




ゾクッ




「(?!なんか変な感じがまた…)」

「春風くん…?ひっく」

「あ、いや!なんでもないっ!…えっと、小坂さん、大丈夫だ。お、俺が守るから!」

「春風君…うん!ありがとう!」

なんだろう。この感じは…





「はぁ、もう話はよいだろう。…この者たち装備を繕え。」

陛下がそう言うと騎士達が剣やら防具などを持ってきたが、どれも騎士達が着ている装備より劣る物ばかりだった。

「なぁ、王様?もう少しマシなのはないのか?これなんか穴空いてるぞ…?」

「龍勇者かどうかまだ定かじゃない者に一流の龍勇者の装備を渡す訳にはいかぬ。」

「まじかよ。」



けちくせぇジジイだな。
まぁ何も無いよりはいいか。俺と小坂さんはその装備に着替えた。



「もう渡す物は渡したのじゃから、街に出て鍛錬に励め。」

陛下はそう言うと面倒な厄介者を払うように手を振り、騎士たちが俺たちを城の外に追いやった。
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