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22かぼ!キスしてみる?
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「やっほー」
「リュスト!今日は遅かったね」
「そりゃー僕も父に着いて勉強しているからねー。疲れたよ」
「もうお城に住めば?」
「何を言ってるんだ!名ばかりも今朝記事を見ただろう」
厳しい声をしたかぼパンが新聞を広げ記事を見せてくる。
開いたページにはカナル家のリュスト様猛攻?一歩リードか?!
連日城を訪れるリュスト様!と言う記事が写真付きで掲載されている。
「私朝この記事を見て爆笑したよ!リュストはかぼパンを愛でに来てるのにね~」
「ハハハ!僕も朝見て笑ったよ!」
「我が国は平和なので他に話題がないのでしょう」
私とリュストが笑い、ランがいつもの落ち着いた笑みを見せる。
まったりとしたひと時。だが我らがかぼパンは違った。
「ど、う、し、て、笑い事ですますんだ!」
フンフンと鼻息を荒くして言ってくるけど。
「笑い事じゃないの?」
逆に訊ねるとかぼパンは首を横に振り、言い聞かすように人差し指を立てブンブンと振った。
あー、指先まで可愛いっ!
「リュストよ、分かっているのか?カナル公爵家の後継なんだぞ?こんな事で話題に上ってどうする!家名に関わるだろう!」
「御心配には及びません。父には頑張ってベビーシッター様を嫁に連れて来いと言われています」
「カナル公爵め!名ばかりはやらんぞ!」
かぼパンの言葉に全員が目を見開いた。
何も考えずに発した言葉なのだろう。かぼパンは驚いている私達を不思議そうに眺めた。
「何故そんなに驚いた顔をしている?」
自分が何を言ったか気付いてないらしい。
嬉しさが込み上げた私は最大級にニヤニヤしながらかぼパンの頬をつついた。
「名ばかりはやらんぞ!なんて、かぼパンがそういう風に言ってくれるなんて思いもしなかった!」
「ハァァッ!?」
長めに息を飲んだかぼパン。口が閉じなくなったのか開いたままワナワナ。
「あ…あ…」
自分が言った事に気付いたのだろう。
さあっと青ざめていく。
「あ……う……ちがうんだ……口から出ただけで……」
モゴモゴと歯切れが悪い。
でも口から出ただけと言うことは、心の中でそう思ってくれていると解釈してよろしいか?!
「嬉しすぎてニヤニヤしちゃう!心配しなくても私はずっとかぼパンのそばにいるよ」
屈んでかぼパンの顔の高さに合わせて言うと、ハッと驚いた顔をしたかぼパンの頬はみるみると赤く染まってゆく。これこれ!
「かぁーわーいー!」
「はい、可愛いですね」
「僕もこの純粋さにやられました」
「ううぅ、からかうなっ!早く大人に戻りたいぃぃ」
両手で拳を握り、必死で叫んだかぼパン。
抱き上げて優しくしたいところだけど、多分このパターンはあれが来る。
「3人とも可愛いばかり言ってないで今すぐ僕が大人に戻る方法を考えろっ!」
「やっぱりきた」
そう簡単に大人に戻る方法と言われてもねぇ……
「格闘技を習ってみる」
「全然関係ないだろう」
やっぱりバレるか。
空手衣を着て「やあっ!」てやっているかぼパン、超可愛いだろうなと思ったんだけど。
リュストがサッと手を上げる。
「恋をする」
「なんだとっ?!」
かぼパンは驚いたけど、何気に核心をついている気がする。リュストって前世日本人なんじゃないの?
リュストに続けと私も手を上げる。
「はーい!私もリュストの案に賛成でーす!」
「……何故恋なんだ?」
「愛の力よ!どんなに困難な事があっても愛の力で奇跡が起こる事があるの!」
「愛か……僕は愛の前に恋も分からない」
かぼパンは少し俯き口を結んだ。するとランがやけに落ち着き払った様子で微笑む。
「そうでしょうか?陛下はすでに恋を知っているのでは?」
「僕が……?」
「はい、陛下のお心に誰かがずっといませんか?目を離せず、誰にも渡したくない。そんな存在が……」
ハアッ!と目を見開いたかぼパンは自分の胸をぎゅっと押さえる。
「ラン……」
まさに恋に気付いた瞬間のヒロインのようである。なんとも言えない、恋を知ったような瞳でランを見つめる。
やっぱりかぼパンってランの事が好きなんじゃないの?いつもランはやらないって言うし他に思い当たる人もいないしね。
もうこれは最終手段ってくらい効き目がありそうなアレを言うしかない!
アレとは好きな人と心からのキスだ。
「かぼパン、ランとキスしてみたら?」
「ぬにゃ?」
かぼパンが訳の分からない言葉を漏らすと、完全に固まってしまった。
ここでランがパシャリと写真を撮る。
いちいちカメラマンを呼ぶと手間なので、この世界では超高級品のカメラを愛で会で購入したのだ。
いつもなら撮るな!と叫ぶところだが、叫びもしないで固まっている。相当ガツンと来る言葉だったのだろう。
かぼパンが戻って来るまで軽くトーク。
「何故あんな事を言ったのですか?」
「物語では好きな人にキスしてもらって戻るの!つまり恋をしてキスをするって事よ!」
「なるほど。それでまた僕が相手だと勘違いしたのですね……」
ランはまだ固まっているかぼパンに向かって溜息を吐き告げる。
「では、私がキスしてみましょうか」
「ヤーメーロー」
表情は変わらないが声が出た。どうやら戻ってきたらしい。
リュストも面白がって笑う。
「僕もしますよ!」
「いーらーぬー」
私も笑いながら参戦。
「じゃあかぼパン、私とキスしてみる?」
「ふぐにゃあっ!?」
変な声をあげたかぼパンはすぐさま手で口を押さえた。そんなかぼパンを見たランがニヤニヤしながら私にイケと合図をして来る。
ランって意外とドSだよね。
「お口を隠しても頬があいてるんだよーん」
もちろんからかっているだけで、本気でするつもりはない。あくまで頬にキスをするフリ。
しかし、私の上唇は真っ赤に染まったかぼパンの頬に少しだけ触れてしまったのだった——
「リュスト!今日は遅かったね」
「そりゃー僕も父に着いて勉強しているからねー。疲れたよ」
「もうお城に住めば?」
「何を言ってるんだ!名ばかりも今朝記事を見ただろう」
厳しい声をしたかぼパンが新聞を広げ記事を見せてくる。
開いたページにはカナル家のリュスト様猛攻?一歩リードか?!
連日城を訪れるリュスト様!と言う記事が写真付きで掲載されている。
「私朝この記事を見て爆笑したよ!リュストはかぼパンを愛でに来てるのにね~」
「ハハハ!僕も朝見て笑ったよ!」
「我が国は平和なので他に話題がないのでしょう」
私とリュストが笑い、ランがいつもの落ち着いた笑みを見せる。
まったりとしたひと時。だが我らがかぼパンは違った。
「ど、う、し、て、笑い事ですますんだ!」
フンフンと鼻息を荒くして言ってくるけど。
「笑い事じゃないの?」
逆に訊ねるとかぼパンは首を横に振り、言い聞かすように人差し指を立てブンブンと振った。
あー、指先まで可愛いっ!
「リュストよ、分かっているのか?カナル公爵家の後継なんだぞ?こんな事で話題に上ってどうする!家名に関わるだろう!」
「御心配には及びません。父には頑張ってベビーシッター様を嫁に連れて来いと言われています」
「カナル公爵め!名ばかりはやらんぞ!」
かぼパンの言葉に全員が目を見開いた。
何も考えずに発した言葉なのだろう。かぼパンは驚いている私達を不思議そうに眺めた。
「何故そんなに驚いた顔をしている?」
自分が何を言ったか気付いてないらしい。
嬉しさが込み上げた私は最大級にニヤニヤしながらかぼパンの頬をつついた。
「名ばかりはやらんぞ!なんて、かぼパンがそういう風に言ってくれるなんて思いもしなかった!」
「ハァァッ!?」
長めに息を飲んだかぼパン。口が閉じなくなったのか開いたままワナワナ。
「あ…あ…」
自分が言った事に気付いたのだろう。
さあっと青ざめていく。
「あ……う……ちがうんだ……口から出ただけで……」
モゴモゴと歯切れが悪い。
でも口から出ただけと言うことは、心の中でそう思ってくれていると解釈してよろしいか?!
「嬉しすぎてニヤニヤしちゃう!心配しなくても私はずっとかぼパンのそばにいるよ」
屈んでかぼパンの顔の高さに合わせて言うと、ハッと驚いた顔をしたかぼパンの頬はみるみると赤く染まってゆく。これこれ!
「かぁーわーいー!」
「はい、可愛いですね」
「僕もこの純粋さにやられました」
「ううぅ、からかうなっ!早く大人に戻りたいぃぃ」
両手で拳を握り、必死で叫んだかぼパン。
抱き上げて優しくしたいところだけど、多分このパターンはあれが来る。
「3人とも可愛いばかり言ってないで今すぐ僕が大人に戻る方法を考えろっ!」
「やっぱりきた」
そう簡単に大人に戻る方法と言われてもねぇ……
「格闘技を習ってみる」
「全然関係ないだろう」
やっぱりバレるか。
空手衣を着て「やあっ!」てやっているかぼパン、超可愛いだろうなと思ったんだけど。
リュストがサッと手を上げる。
「恋をする」
「なんだとっ?!」
かぼパンは驚いたけど、何気に核心をついている気がする。リュストって前世日本人なんじゃないの?
リュストに続けと私も手を上げる。
「はーい!私もリュストの案に賛成でーす!」
「……何故恋なんだ?」
「愛の力よ!どんなに困難な事があっても愛の力で奇跡が起こる事があるの!」
「愛か……僕は愛の前に恋も分からない」
かぼパンは少し俯き口を結んだ。するとランがやけに落ち着き払った様子で微笑む。
「そうでしょうか?陛下はすでに恋を知っているのでは?」
「僕が……?」
「はい、陛下のお心に誰かがずっといませんか?目を離せず、誰にも渡したくない。そんな存在が……」
ハアッ!と目を見開いたかぼパンは自分の胸をぎゅっと押さえる。
「ラン……」
まさに恋に気付いた瞬間のヒロインのようである。なんとも言えない、恋を知ったような瞳でランを見つめる。
やっぱりかぼパンってランの事が好きなんじゃないの?いつもランはやらないって言うし他に思い当たる人もいないしね。
もうこれは最終手段ってくらい効き目がありそうなアレを言うしかない!
アレとは好きな人と心からのキスだ。
「かぼパン、ランとキスしてみたら?」
「ぬにゃ?」
かぼパンが訳の分からない言葉を漏らすと、完全に固まってしまった。
ここでランがパシャリと写真を撮る。
いちいちカメラマンを呼ぶと手間なので、この世界では超高級品のカメラを愛で会で購入したのだ。
いつもなら撮るな!と叫ぶところだが、叫びもしないで固まっている。相当ガツンと来る言葉だったのだろう。
かぼパンが戻って来るまで軽くトーク。
「何故あんな事を言ったのですか?」
「物語では好きな人にキスしてもらって戻るの!つまり恋をしてキスをするって事よ!」
「なるほど。それでまた僕が相手だと勘違いしたのですね……」
ランはまだ固まっているかぼパンに向かって溜息を吐き告げる。
「では、私がキスしてみましょうか」
「ヤーメーロー」
表情は変わらないが声が出た。どうやら戻ってきたらしい。
リュストも面白がって笑う。
「僕もしますよ!」
「いーらーぬー」
私も笑いながら参戦。
「じゃあかぼパン、私とキスしてみる?」
「ふぐにゃあっ!?」
変な声をあげたかぼパンはすぐさま手で口を押さえた。そんなかぼパンを見たランがニヤニヤしながら私にイケと合図をして来る。
ランって意外とドSだよね。
「お口を隠しても頬があいてるんだよーん」
もちろんからかっているだけで、本気でするつもりはない。あくまで頬にキスをするフリ。
しかし、私の上唇は真っ赤に染まったかぼパンの頬に少しだけ触れてしまったのだった——
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