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恋人編(前編)
第37話(ある女の話⑤)
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だが、レオノーラの謀はそう上手くはいかなかった。
*****
すでに大きくなった呪いの威力は、フェルディナントに触れるだけでピリッとした痺れを出すようになってきていた。
まずい。と思った。
まだほんの少し電流が流れるようなもので感知しにくかったが、これはどんどん強くなっていくだろう。数日後には触れただけで命を落とす程にまで強力になるかもしれない。
レオノーラはそれが大きくなる前に、彼にある話を持ちかけた。
「恋人にならない?」
彼らの仲を崩すような提案だったが、仕方がなかった。
心を鬼にしてでも彼らを何としてでも離さなければならなかった。
このままでは危険だからだ。
彼はもちろんそれを断った。
当たり前だ。彼は小さな彼女をわかりやすいほど愛している。
そう簡単に手放さないだろう。
────だから、レオノーラは呪いで脅すことにした。
脅迫するのはいけないことだが、彼女は彼らの為にそれをした。
そして、あの小さな少女に呪いをかけたと言った。
レオノーラを殺せばその少女も死ぬとも言った。
あながちそれは間違いではない。
呪いに耐性のない少女は、少しの攻撃でも呆気なく命を落としてしまうだろうから。
彼に触れるだけで死ぬ可能性もこれからは有り得るかもしれないから。
レオノーラが頑張らなければ、呆気なく小さな彼女は息絶えるであろうから。
相手探しの監視員がいると嘘も連ねた。
彼が俺じゃなくてもいいじゃないかと言ったが、無理無理受け入れてもらった。
これは矛盾を減らすための口実で、本当に監視員はいないのだが。
そうすれば、その少女を愛してやまない彼はまたも殺気を漏らした。
それでも彼女はひるまずに条件を出した。少しでも彼らに物理的な距離があくような条件にした。
その恋人に一切触れないこと。
それを破れば、呪いを消すことはないと。
そして、
────この契約は成立した。
*****
小さな少女を助ける為なのか、彼はたくさん街の図書館に赴いていた。
そして呪いに関する本を読み漁っていた。
本当に呪いがかかっているのは彼の方なのだがと思ったが、彼には彼女に呪いをかけたと言ってあるので、知る由もない。
レオノーラも家で呪いに関する本をひたすら読んでいた。
たまに街の図書館も利用して読んでいた。
兄のおかげで発動したそれをどうにかして消したかったからだ。
何としてでも彼ら助けたかったからだ。
だが、やはり結果は惨敗であった。
何一つとしてそれを解くヒントはなかったのだ。
彼もそれは同じだったようで、大きく肩を下げていたのを覚えている。
あの小さな少女には、フェルディナントはレオノーラのことが好きなのだと言った。
その時に、彼女に精神に関与する魔法をかけた。
呪いをかけた張本人であるブタが掛けた呪いもフェルディナントに近づいた者の精神に関与するらしいが、この魔法はそこまで強力なものでは無い。どちらかと言えば弱い魔法だ。
それは悪いことを考えればネガティブなものとなり、ドキドキすることを考えれば極限までドキドキするものになるというヘンテコな魔法である。
これは彼女自身が独自に編み出したもので、ブタの排除方法にも役立っていた。
この魔法は彼らを離すのにも役立つだろう。また、彼らの仲を元通りに戻すのにも役立つだろう。彼女はそう思ってかけたのだ。もちろん、矛盾を補う為でもあるが。
しかし、あの小さな少女はめげていなかった。
仲直りをしようと思っていたのか、フェルディナントに近づこうとしていたのだ。
精神に関与する魔法をかけてあったのに、だ。
強い、と思った。それほどまでに彼女は彼を深く愛しているのだと思った。
強力な呪いがいつ少女に降りかかることかと恐怖したレオノーラは、すぐに変化魔法で小さな彼女を呼び出した。
小さな彼女を彼に近づかせてはならないから。
ギルドの前でフェルディナントの姿になり、小さな彼女を突き放した。
すまないと言った後に別れようと言った。
精神に関与する魔法の効果もあり、その言葉に小さな彼女は呆気なくそれを信じて泣き崩れた。
ぐわりと罪悪感が押し寄せる。それに耐え切れなくなったレオノーラは、すぐにその場から立ち去った。
泣きじゃくる彼女の顔が、頭から離れなかった。
*****
すでに大きくなった呪いの威力は、フェルディナントに触れるだけでピリッとした痺れを出すようになってきていた。
まずい。と思った。
まだほんの少し電流が流れるようなもので感知しにくかったが、これはどんどん強くなっていくだろう。数日後には触れただけで命を落とす程にまで強力になるかもしれない。
レオノーラはそれが大きくなる前に、彼にある話を持ちかけた。
「恋人にならない?」
彼らの仲を崩すような提案だったが、仕方がなかった。
心を鬼にしてでも彼らを何としてでも離さなければならなかった。
このままでは危険だからだ。
彼はもちろんそれを断った。
当たり前だ。彼は小さな彼女をわかりやすいほど愛している。
そう簡単に手放さないだろう。
────だから、レオノーラは呪いで脅すことにした。
脅迫するのはいけないことだが、彼女は彼らの為にそれをした。
そして、あの小さな少女に呪いをかけたと言った。
レオノーラを殺せばその少女も死ぬとも言った。
あながちそれは間違いではない。
呪いに耐性のない少女は、少しの攻撃でも呆気なく命を落としてしまうだろうから。
彼に触れるだけで死ぬ可能性もこれからは有り得るかもしれないから。
レオノーラが頑張らなければ、呆気なく小さな彼女は息絶えるであろうから。
相手探しの監視員がいると嘘も連ねた。
彼が俺じゃなくてもいいじゃないかと言ったが、無理無理受け入れてもらった。
これは矛盾を減らすための口実で、本当に監視員はいないのだが。
そうすれば、その少女を愛してやまない彼はまたも殺気を漏らした。
それでも彼女はひるまずに条件を出した。少しでも彼らに物理的な距離があくような条件にした。
その恋人に一切触れないこと。
それを破れば、呪いを消すことはないと。
そして、
────この契約は成立した。
*****
小さな少女を助ける為なのか、彼はたくさん街の図書館に赴いていた。
そして呪いに関する本を読み漁っていた。
本当に呪いがかかっているのは彼の方なのだがと思ったが、彼には彼女に呪いをかけたと言ってあるので、知る由もない。
レオノーラも家で呪いに関する本をひたすら読んでいた。
たまに街の図書館も利用して読んでいた。
兄のおかげで発動したそれをどうにかして消したかったからだ。
何としてでも彼ら助けたかったからだ。
だが、やはり結果は惨敗であった。
何一つとしてそれを解くヒントはなかったのだ。
彼もそれは同じだったようで、大きく肩を下げていたのを覚えている。
あの小さな少女には、フェルディナントはレオノーラのことが好きなのだと言った。
その時に、彼女に精神に関与する魔法をかけた。
呪いをかけた張本人であるブタが掛けた呪いもフェルディナントに近づいた者の精神に関与するらしいが、この魔法はそこまで強力なものでは無い。どちらかと言えば弱い魔法だ。
それは悪いことを考えればネガティブなものとなり、ドキドキすることを考えれば極限までドキドキするものになるというヘンテコな魔法である。
これは彼女自身が独自に編み出したもので、ブタの排除方法にも役立っていた。
この魔法は彼らを離すのにも役立つだろう。また、彼らの仲を元通りに戻すのにも役立つだろう。彼女はそう思ってかけたのだ。もちろん、矛盾を補う為でもあるが。
しかし、あの小さな少女はめげていなかった。
仲直りをしようと思っていたのか、フェルディナントに近づこうとしていたのだ。
精神に関与する魔法をかけてあったのに、だ。
強い、と思った。それほどまでに彼女は彼を深く愛しているのだと思った。
強力な呪いがいつ少女に降りかかることかと恐怖したレオノーラは、すぐに変化魔法で小さな彼女を呼び出した。
小さな彼女を彼に近づかせてはならないから。
ギルドの前でフェルディナントの姿になり、小さな彼女を突き放した。
すまないと言った後に別れようと言った。
精神に関与する魔法の効果もあり、その言葉に小さな彼女は呆気なくそれを信じて泣き崩れた。
ぐわりと罪悪感が押し寄せる。それに耐え切れなくなったレオノーラは、すぐにその場から立ち去った。
泣きじゃくる彼女の顔が、頭から離れなかった。
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