78 / 93
第4章
二人の転生者
しおりを挟む「クレア様の仰るとおりです。わたくし、この世界に生を受けた瞬間から、前世の記憶がございました」
「えっ!? 生を受けた瞬間からですって!!」
「えぇ。正確には、日本で普通に暮らしていたのに、朝、目が覚めたら産まれたばかりの赤ん坊になっていたと言う訳です」
「――――それは、酷ね」
「たぶん、寝ている間に心臓麻痺かなんかで死んで、この世界に前世の記憶を持ったまま、魂だけ転生しちゃったんだと思います。それはもう赤ちゃんの時は羞恥プレイの連続で、私の魂を転生させた神だか何だかを、何度恨んだことか。まぁ、今では日本人だった時の記憶もあり、好き勝手生きてますし、家族にも恵まれ幸せなんで、転生させた神を恨んではいませんが」
「そうだったの……、大変だったわね」
「なので、クレア様が仰っていた事は全て理解しています。『白き魔女は蜜夜に溺れる』でしたっけ。その乙女ゲーム、わたくしも前世でやっておりましたから」
「では、この世界が乙女ゲームに酷似している事も始めから気づいていたの?」
「実は、乙女ゲームに似ていると思い出したのは最近の事なのです。幼児期から前世の記憶があった割に、この世界が乙女ゲームの世界に似ていると気づいたのは、リアムに捨てられてからなんです。しかも、前世の記憶では、アイシャという名のキャラクターは一切出て来ないのに、今までの私の行動や起こった出来事は、乙女ゲームのヒロインの立ち位置そのものだった。不気味な符号の一致に気づいた時は、寒気が走りました」
「そうね。今のアイシャの立ち位置は完全にヒロインよね。そして、グレイスが悪役令嬢の立ち位置で間違いないわ」
「でも、何故その様なバグが起こったのか? そして、何よりも私の存在って、いったい何なんでしょうね?」
ヒロインの立ち位置にいる乙女ゲームにいない『アイシャ』という存在は不気味でしかない。しかし、この世界でアイシャは生きているのだ。乙女ゲームに似た世界だと言えども、『私』は生きている。
私の人生は私のものなのだ。
ただ、もし本当にこの世界が乙女ゲームの世界だとしたら、いつかアイシャという存在は消えて無くなってしまうのだろうか?
矯正力という名の元に……
「いつかアイシャという存在は、この世界から消えてしまうのでしょうか?」
「――――っ!! わたくしがそんな事させないわ!!!! アイシャを死なせるような事、絶対に!」
前世でプレイした乙女ゲームには、たった一つだけバッドエンドが存在する。しかし、前世の『私』は、そのバッドエンドに興味がなかった。腐女子だったこともあり、男女の恋愛に興味がわかなかったというか、乙女ゲームに出てくる美麗男性キャラクターをくっつけ、妄想する遊びにハマり、全ルート攻略に興味を示さなかった。
バッドエンドが存在することも、噂では知っていた。そして、そのバッドエンドが、話題を呼ぶほど好評を博したことも。
怒りを露わに拳を握るクレア王女を見て、アイシャの中に確信にも似た思いが芽生える。
「クレア様は、わたくしがこの世界から消える未来をご存知なのではありませんか?」
クレア王女の瞳が驚きで見開かれる。
「わたくしは、乙女ゲームの記憶を全て思い出した訳ではありません。キース様にナイトレイ侯爵家の薔薇園でプロポーズされました。そのシーンは乙女ゲームの中にも出てきたのではありませんか? この婚約指輪をクレア様がご存知だったのが何よりの証拠です。そして、この先ヒロインの命が危険に晒されるシーンが出てくる」
そう……、たった一つのバッドエンドへと繋がる道。あの薔薇園でのプロポーズが、『アイシャ』を破滅へと導く鍵となっていたのだろう。
(結局、乙女ゲームの矯正力には勝てないのかしらね……)
「アイシャが、乙女ゲームのバグのような存在なら命が危険に晒されるシーンでアイシャという存在は淘汰されると考えられます」
「私がそんな事絶対にさせない!! そのために、アイシャに前世の記憶を打ち明ける決心をしたの!
――――もう親友を亡くす悲しみは味わいたくない。アイシャを見ていると思い出すの。若葉の事を……………、後悔しても仕切れない彼女との日々を」
顔を両手で覆い泣き崩れたクレア王女を見つめ、アイシャの心に大きな衝撃が走る。あまりの衝撃に、言葉が出てこない。
若葉って……、まさか……、そんな事ってありえるの?
クレア王女が『桐山梨花』だなんて、そんな運命の悪戯が。
11
あなたにおすすめの小説
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
【完結】家族に愛されなかった辺境伯の娘は、敵国の堅物公爵閣下に攫われ真実の愛を知る
水月音子
恋愛
辺境を守るティフマ城の城主の娘であるマリアーナは、戦の代償として隣国の敵将アルベルトにその身を差し出した。
婚約者である第四王子と、父親である城主が犯した国境侵犯という罪を、自分の命でもって償うためだ。
だが――
「マリアーナ嬢を我が国に迎え入れ、現国王の甥である私、アルベルト・ルーベンソンの妻とする」
そう宣言されてマリアーナは隣国へと攫われる。
しかし、ルーベンソン公爵邸にて差し出された婚約契約書にある一文に疑念を覚える。
『婚約期間中あるいは婚姻後、子をもうけた場合、性別を問わず健康な子であれば、婚約もしくは結婚の継続の自由を委ねる』
さらには家庭教師から“精霊姫”の話を聞き、アルベルトの側近であるフランからも詳細を聞き出すと、自分の置かれた状況を理解する。
かつて自国が攫った“精霊姫”の血を継ぐマリアーナ。
そのマリアーナが子供を産めば、自分はもうこの国にとって必要ない存在のだ、と。
そうであれば、早く子を産んで身を引こう――。
そんなマリアーナの思いに気づかないアルベルトは、「婚約中に子を産み、自国へ戻りたい。結婚して公爵様の経歴に傷をつける必要はない」との彼女の言葉に激昂する。
アルベルトはアルベルトで、マリアーナの知らないところで実はずっと昔から、彼女を妻にすると決めていた。
ふたりは互いの立場からすれ違いつつも、少しずつ心を通わせていく。
次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました
Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。
そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。
お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。
挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに…
意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。
よろしくお願いしますm(__)m
[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜
桐生桜月姫
恋愛
シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。
だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎
本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎
〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜
夕方6時に毎日予約更新です。
1話あたり超短いです。
毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
このたび、あこがれ騎士さまの妻になりました。
若松だんご
恋愛
「リリー。アナタ、結婚なさい」
それは、ある日突然、おつかえする王妃さまからくだされた命令。
まるで、「そこの髪飾りと取って」とか、「窓を開けてちょうだい」みたいなノリで発せられた。
お相手は、王妃さまのかつての乳兄弟で護衛騎士、エディル・ロードリックさま。
わたしのあこがれの騎士さま。
だけど、ちょっと待って!! 結婚だなんて、いくらなんでもそれはイキナリすぎるっ!!
「アナタたちならお似合いだと思うんだけど?」
そう思うのは、王妃さまだけですよ、絶対。
「試しに、二人で暮らしなさい。これは命令です」
なーんて、王妃さまの命令で、エディルさまの妻(仮)になったわたし。
あこがれの騎士さまと一つ屋根の下だなんてっ!!
わたし、どうなっちゃうのっ!? 妻(仮)ライフ、ドキドキしすぎで心臓がもたないっ!!
【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます
鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────
私、この子と生きていきますっ!!
シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。
幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。
時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。
やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。
それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。
けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────
生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。
※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~
藤原ライラ
恋愛
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――
子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。
彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。
「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」
四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。
そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。
文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!?
じれじれ両片思いです。
※他サイトでも掲載しています。
イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる