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劣情を煽られ ※

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肌蹴られたシャツから覗く胸元は、何の可愛げもない下着が奴に見えていることだろう。

俗に言う『おばブラ』

真っ白なワイシャツから透けない飾り気のないシンプルなベージュのブラジャーは、最近の定番だった。不意に思い出した会社で囁かれている不名誉なあだ名が頭をよぎり、シラけた笑いが漏れそうになる。

『女を捨てた仕事人間』

あの噂通り、可愛げのカケラもない女など興味を持たないで欲しかった。今更、過去の自分を悔いても仕方ないが。

きっと奴が遊んで来た女共は女子力の高い美女ばかりだったのだろう。情事の際に間違ってもベージュの『おばブラ』など着ない。何故よりによって、私なのだ。高級ステーキばかり食い過ぎて、安い小間切れ肉でも食いたくなったのか。

………あぁぁ、このまま放置して去ってくれないだろうか。

恋人契約を交わした後、真っ先に連れて来られたのがBARから少し歩いた所にあるホテル街だった。適当な一軒を奴が選び、部屋に入って早々押し倒された。シャワーくらい浴びさせろと叫びたかったが、奴のギラついた目を見て口をつぐんだ。下手に刺激して悲惨な目には遭いたくない。咄嗟の防衛本能だったのだろうか、多少は冷静さを取り戻していたのかもしれない。

「随分余裕だね?さすが、鉄壁の女王様って言われているだけあるよね。年下の男とのsexなんて余裕綽々ですか」

「そうかもね………
私を崇拝する可愛い下僕が沢山いるのに、毛も生え揃ってない生意気なガキの相手は萎えるわぁ」

見上げた先の奴の瞳に一瞬過ぎった怒りの感情を読み取り、失言に気づいたが後の祭りだ。

ーーー売り言葉に買い言葉。

あまり好戦的な性格ではないつもりだが、BARでの奴とのやり取りで荒んだ心は、変な方向へと振り切れてしまった様だ。

「………生意気なガキですか。
貴方にとったら7歳下の俺は、毛も生え揃ってないガキなんでしょうね。
でも、そんなガキに嵌められ言いなりになっている貴方は、分別ある大人の女性と言えますか?貴方が言う子供の俺に騙されている時点で、低レベルだ。しかも、後先考えずヤケ酒して見知らぬ男について行った過去は女としても終わっている。そんな貴方にガキだと言われてもねぇ………
貴方は、俺と同レベルの馬鹿なガキですよ」

「………ふふっ………
なら、サッサとやる事やって解放してくれないかしら。貴方の自尊心が満たされれば解放してくれるんでしょ。馬鹿な女を組み敷いて、想い通りに扱って、ズタズタにすれば、貴方の自尊心も満たされるでしょ。私の身体好きにすればいいわよ」

「ちっ!本当に生意気………
なら、俺が満足するまで付き合って貰いますよ」

性急な手つきで、着ていたシャツを剥ぎ取られ、履いていたスカートも抜き取られ面白みの全くない上下ベージュの下着姿にされてしまう。

「………本当女捨ててんな。上下ベージュの下着って。色気のカケラもねぇ」

改めて突きつけられた女の自尊心を粉砕する言葉に、頭がカッとなる。

………お前に言われなくたって自覚してるわ‼︎

「お生憎さま。下着は色気より機能性で選ぶ主義なの。こんな女相手するのも嫌でしょ。貴方の周りにいる可愛らしくて煌びやかな女のところに、さっさと戻りなさいよ、坊や」

「あぁぁ、ムカつく………」

覆い被さって来た奴の怒りの表情を最後に視界が暗転する。熱を持った唇に唇を塞がれ、僅かに開いていた歯列から強引に舌が侵入してくる。怒りのまま暴れ回る舌に、逃げ惑う舌を捕らわれ、絡められ、吸われれば、強烈な刺激となり脳を痺れさせる。

「………くくっ………
少しは見れるようになったか」

銀色の糸が、二人の間を繋ぐ橋となり消えていく様をボーっと見つめていた私は奴の言葉に現実へと引き戻され、気づく。

ーーー素っ裸にされている。

ディープキスをしていた数秒間にブラジャーもパンツも剥ぎ取るという神技に感心している場合ではない。

「案外、感じやすいんだな。ココ立ってる………」

「ひっ…あぁぁ………」

突然与えられた強烈な刺激に甲高い声が漏れ、背が僅かに浮く。

「あぁ、ゴメンゴメン。強く潰し過ぎた」

胸の先端で赤く染まり出した頂きを労るように優しく転がされれば、緩慢な刺激が背をゾクゾクと震わす。先端を摘まれ同時に乳房を揉み込まれると、腹の奥底に官能の炎が灯される。

「膝を擦り合わせて………
ただ胸、触られているだけなのに感じちゃうんだ。でも、こんな刺激だけじゃ物足りないんじゃない?」

不穏な囁きに思わず下を見れば、奴の唇が反対の乳房に喰らいつく瞬間が、脳にダイレクトに映し出される。唇に柔肌を喰まれ、舌先で双丘の縁を丹念に舐め回される。乳輪をクルクルと回る舌先が、時折り赤く染まる頂きを悪戯に掠めれば、腹の奥底の炎を燃え上がらせる。

焦らされているのは分かっていた。首筋から徐々に下がる唇は、乳房の天辺で震える頂きには一切触れず、谷間を抜け腹へ脇腹へと舌先を滑らせていく。堪え切れず漏らしてしまう小さな喘ぎ声を聞き取れば、そこを執拗に手や唇で刺激されるものの、官能の炎を悪戯に燃え上がらせるだけで、決定的な快感をもたらしてはくれない。もちろん絶対的な快楽を生む下腹部には触れるそぶりすらしない。

緩慢な愛撫に煽られるだけ煽られた官能の炎は抑えられないところまで燃え上がっていた。

ーーーあと僅かな刺激が欲しい

無意識に胸に伸びた手を掴まれ、ハッとする。奴の弧を描く笑みを見つめ屈辱で目の前が赤に染まる。

「………自分で触ろうとするなんて、鈴香は意外と変態なんだ」

掴まれた手を引き寄せられ、奴の唇に指先を含まれる。赤く覗く舌先が別の生き物のように蠢く様は、更なる火種を引き摺り出すには充分だった。

思わず顔を背ける私を嘲笑うかのように耳元で囁かれる悪魔の言葉は、甘い毒となって私の身体を支配していく。

「こんな悪い手は縛ってしまおうか………」

ネクタイをシュと解いた奴に、掴んでいた手をベットヘッドの支柱に括られてしまった。

「俺は優しいから片方の手は自由にさせてあげる。我慢出来なかったら触ってもいいよ。ただ………
毛も生え揃ってない生意気なガキの愛撫に感じる事もないよね。経験豊富なお姉さん」

「………ふふ…………
そうね。感じる事なんて間違ってもない。生意気なガキの愛撫になんかね」

「………本当可愛くない」

ギラっと光った瞳の強さに撃ち抜かれた脳は、甘美な拷問の始まりを告げる開始のゴングをどこか他人事のように聴いていた。





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