15 / 22
⑮逃亡
しおりを挟む
私達は、追ってくるパパから逃げ続けた。私を背中に乗せたこの男は、すごい速さで階段を駆け上がる。
「貴様! 止まれっっ!!」
「それで止まるアホはいません!」
男は私の体を支えながら、左手で小さな針を放った。行く手を阻む銃を持った大男の首に突き刺さる。
「すみませんが、とっても緊急事態なので辞表は後で郵送しますっ!!」
「びゅっ!?」
大男は、口から血の泡を吐いて地面に倒れた。
「もうすぐ地上だから頑張れ!」
男は、十三個目のドアを思い切り蹴り飛ばした。
『っ!?』
「はぁ~~…………もう朝…か…」
私達を眩しい光が包み込む。目の前には、見たことのない景色が広がっていた。
青い空…………。
その空を自由に羽ばたく鳥。
優しい風が、私の全身を撫でていく。
「この先で下ろすから。もう少し我慢して」
『はぃ………』
これが、外の世界ーーー。
すべてがキレイで新しく。
涙が止まらなかった。男のシャツを濡らしていく。
「よしっ!」
男は、私を背負い直すとまた走った。
『………』
その時、誰かの視線を感じた。
私だけに見える角度。建物の影からスッと姿を表した、銀色の髪の女性。優しく笑いながら、指先を口に当てていた。
『……………』
「どうした? 大丈夫?」
男は、全く気付いていない。
『はい……。大丈夫です』
女性は吸い込まれるように、音もなく、私達が壊したドアから建物の中に入っていった。
「貴様! 止まれっっ!!」
「それで止まるアホはいません!」
男は私の体を支えながら、左手で小さな針を放った。行く手を阻む銃を持った大男の首に突き刺さる。
「すみませんが、とっても緊急事態なので辞表は後で郵送しますっ!!」
「びゅっ!?」
大男は、口から血の泡を吐いて地面に倒れた。
「もうすぐ地上だから頑張れ!」
男は、十三個目のドアを思い切り蹴り飛ばした。
『っ!?』
「はぁ~~…………もう朝…か…」
私達を眩しい光が包み込む。目の前には、見たことのない景色が広がっていた。
青い空…………。
その空を自由に羽ばたく鳥。
優しい風が、私の全身を撫でていく。
「この先で下ろすから。もう少し我慢して」
『はぃ………』
これが、外の世界ーーー。
すべてがキレイで新しく。
涙が止まらなかった。男のシャツを濡らしていく。
「よしっ!」
男は、私を背負い直すとまた走った。
『………』
その時、誰かの視線を感じた。
私だけに見える角度。建物の影からスッと姿を表した、銀色の髪の女性。優しく笑いながら、指先を口に当てていた。
『……………』
「どうした? 大丈夫?」
男は、全く気付いていない。
『はい……。大丈夫です』
女性は吸い込まれるように、音もなく、私達が壊したドアから建物の中に入っていった。
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる