理想的な夫婦

カラスヤマ

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⑮逃亡

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私達は、追ってくるパパから逃げ続けた。私を背中に乗せたこの男は、すごい速さで階段を駆け上がる。

「貴様! 止まれっっ!!」

「それで止まるアホはいません!」

男は私の体を支えながら、左手で小さな針を放った。行く手を阻む銃を持った大男の首に突き刺さる。

「すみませんが、とっても緊急事態なので辞表は後で郵送しますっ!!」

「びゅっ!?」

大男は、口から血の泡を吐いて地面に倒れた。

「もうすぐ地上だから頑張れ!」

男は、十三個目のドアを思い切り蹴り飛ばした。

『っ!?』

「はぁ~~…………もう朝…か…」

私達を眩しい光が包み込む。目の前には、見たことのない景色が広がっていた。


青い空…………。

その空を自由に羽ばたく鳥。

優しい風が、私の全身を撫でていく。

「この先で下ろすから。もう少し我慢して」

『はぃ………』

これが、外の世界ーーー。

すべてがキレイで新しく。

涙が止まらなかった。男のシャツを濡らしていく。

「よしっ!」

男は、私を背負い直すとまた走った。

『………』

その時、誰かの視線を感じた。
私だけに見える角度。建物の影からスッと姿を表した、銀色の髪の女性。優しく笑いながら、指先を口に当てていた。

『……………』

「どうした? 大丈夫?」

男は、全く気付いていない。

『はい……。大丈夫です』

女性は吸い込まれるように、音もなく、私達が壊したドアから建物の中に入っていった。

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