ゾンビになった彼女と錬金術師になった彼氏

カラスヤマ

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5 アンデッド

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やっと、アンデッドが出没する【サイタマ】に着いた。


「ってか、ナツはどうしてこの町に来たの?」

「この場所は、ママのお墓があるから。たまぁに来るんだ。花をお供えしに」

「そっか。なんか……ごめん」

「サトルちゃんさぁ、謝り過ぎるとストレスでハゲるぜ~?」

「………ごめん」

ナツだけじゃない。僕の母親もあの【第三次世界大戦】にまきこまれ、死んでしまった。僕達から全てを奪った戦争。

しかもこの国の裸の王様が、たくさんの魔獣・魔物を生物兵器としてバカスカ使用したから、戦争が終わり放置された危険な奴等が全国に出没するようになった。

治安は、最悪。

たぶん、ナツを襲ったアンデッドも戦争の生き残りだろう。

魔物を警戒しているせいか、僕達以外に外を出歩いている人は誰もいない。どの家も塀や門で固く閉ざされていた。


「あっ!?」

「どうしたの?」


僕達の目の前に、ヨレヨレの服が破れ、しかも裸足の少女が1人で立っていた。

「知り合い?」

「………アンデッド見つけた」

「えっ! あの女の子が、アンデッド? 図鑑とは違い過ぎる。えぇーーー、嘘でしょ?」

「私もあの姿に騙されたの。お腹すかしていると思って食べ物をあげようとしたら、腕を優しく掴まれて、ゾンビ菌に感染したの」

「は? あぁ……じゃあ、ゾンビになっちゃったのはナツにも非があるね」

「うるさいっ! バカちん」

ナツをゾンビにした憎い魔物。でも僕は、涙跡を残すこの少女を殺すことを躊躇っている。

ナツ自身も痩せたこの少女を見て、復讐の炎は鎮火したみたいだ。

戸惑う僕達。そんな僕達をしっかりとした目で見ながら、少女はゆっくりと口を開いた。


【 私の新しいパパになって 】


そう、確かに少女は言った。

さっきよりも更に小さく感じた少女から目を離せなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《アンデッドの記憶》


静かな部屋。
私以外に誰もいない。天井から、声がする。パパの声だ。

「何か欲しい物ある?」


「…………」


「そう……。何かあったら、パパに教えてね」


「はい」


「じゃあ、次の悪者退治もお願いね」


「はい」


ビーーーーーッッ!!!!


目の前のドアが、開いた。少しだけ外が、見えた。私が知らない外の世界。
産まれてから、ずっと私はここにいる。この白い部屋にいる。部屋の外は危険だから、絶対に出ちゃダメだとパパに言われている。

いつものように私の部屋に悪者が入ってきた。

私は、悪者が嫌い。

パパが、悪者が嫌いだから。

私が彼らを退治しないと、世界はもっとダメになってしまうとパパが前に言っていた。


この悪者は、私を見ると

「あなたを倒せば、ここから出られる。あなたを殺せば……」

「?」

意味が、分からない。でもこの悪者も前の悪者と同じことを言っていた。

私は、少しだけ。この悪者と話をすることにした。


「ここから出て、どうするの?」

「そんなの決まっているじゃない!! 家族のとこに帰るの。あなたにもいるでしょ? 家族が。心配してくれるパパやママが」

カゾク?

ママはいないけど、私にはパパがいる。まだ一度も会ったことがないパパ。いつも声だけ。


パパは、家族?


分からない。


「ごめんなさい。あなたには、悪いけど。私は、私は………。もう帰りたいの!!」

悪者は、いつものように首に大きな注射を突き刺した。中の緑色した液体を流し込む。

十秒もしないうちに悪者の体が、だんだんと大きくなる。獣化。


「だがら………死んデ……」


私を襲おうと向かってきた。鋭い歯。爪。尖った耳。

「やっぱり……。悪者は、み~んな一緒」


私を傷つけようとする。仲良く出来ない。


ピギュッ……。


私は、思い切り悪者の顔面を殴った。すると悪者の頭から、ブリュッと脳ミソが飛び出て、目玉や良く分からない血の塊が、部屋に散らばった。

あ~ぁ。また、部屋が汚れちゃった。

「良くやった。さすが、パパの娘だ」


「ねぇ、パパ……。パパは、私の家族?」


「あぁ……」


パパ……。なんで嘘をつくの。

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