ゾンビになった彼女と錬金術師になった彼氏

カラスヤマ

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これは僕の大切な記憶。


『ねぇ、サトル。一緒に死んでよ』


自殺願望のあったナツ。


『うん。分かった』



ゴッ。


ナツに軽く胸を叩かれた。



『死んだ?』


『うん。死んだ。死んだ。ここって、天国ですか?』


『フフ、何それ。つまんね』


それでもナツは、笑ってくれた。




その晩ーーーーー


狩りに出た。ナツの新しい体の【材料】を手に入れる為。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



こんな夜更けに一人で出歩いちゃいけない。幼い子供でも分かる。


だから、きっと。悪いのは君だよ。



「あのぉ……すみません。さっき、何か落としましたよ。これ、違いますか?」


「えっ」


若い村娘にハンカチを手渡した。


目の前の女性が、ただの『器』にしか見えない。 越えてはいけない一線を越え、自分が自分でなくなる。



最初の【材料】を殺した時から、僕は人間ではない別の何か、気持ちの悪いモノに成り下がった。



「あっ、これ。私のハンカチじゃありません」


「そうですか………。すみませんでした」


女性からハンカチを受けとると、僕はしばらく立ったまま、女性の様子を観察していた。



「あの……」


「僕の前で跪いて下さい」


「はぃ?」


「僕の前で跪いて下さい」


「あなた、さっきから何言ってるの。バカじゃないの、ほんと」



怒りを露にして、女性は僕の前から消えた。


「………………」



僕は、一度深呼吸すると、ゆっくりと歩き出す。罠にかかった獲物を捕らえる為に。



右ポケットに無造作に入れたハンカチ。

これは、ただのハンカチじゃない。僕が数種類の毒キノコと蟲を錬成・融合して造り出した【世界に一匹しかいない新種の毒虫】。その体液を先ほどの布に染み込ませていた。

そんな物を素手で触った彼女が、無事で済むはずがない。


錬成は、基本的に等価交換。人間を造るには、別の人間を使うのが一番手っ取り早い。




しばらく歩いていると道路の真ん中で、先程の女性を発見した。僕の前で跪いている。


あの虫の体液には、強力な幻覚作用がある。今は、僕を神様の様に感じているはずだ。


「この鈴の音をしっかり覚えて下さい。この音が聞こえたら、必ず僕に会いに来て」



僕は、持っていた小さな鈴を二三度鳴らした。



チリン……チリン…………。



「分かり…ました………」



彼女が、今度のナツの新しい『器』になる。


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