冷やし上手な彼女

カラスヤマ

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再び現代

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「あのバカ女と関わったのが、お前の運のツキだ」

「……バカ?」


ザザザザザザザザ、ザザザザザザーー。

大量の蝶が番条の体から剥がれ落ち、代わりに蝶の死骸。赤い絨毯が広がった。麻袋をゆっくりと顔から外した番条が、青い目で男を見つめる。

「それが、悪魔の瞳か……。その瞳に魅入られると逃れられない」

「……会長をバカに出来るのは……青井君だけ……だよ」

「強いな。触れたら即死の毒蝶が全滅か。人間じゃねぇ」

男が地面に右腕をつけると、地面が盛り上がり、土中から小さな蠍が無数に現れた。

「さっさと逝け」

怯えた女が手を叩くと、派手な女に変身した。その女は、群がる蠍を長針で次々と串刺しにしていく。
内臓と共に噴き出す体液で、針が溶けた。中庭に植えられた草花が枯れていく。女は毒液から避難する為、四階まで軽く飛翔した。


「逃げてばかりじゃ、俺には勝てないぞ」

「虫ばかり出して……。気持ち悪っ!」

「気持ち悪くないっ!!」

風のように眼前に来た男に先の曲がったナイフで女は腹を抉られた。

「死ぬ前に答えろ。どうしてお前は、格下のあんな奴についてる?」

「格下? アッハハハハハ!! はぁ~~~。何にも分かってないね」

ナイフで刺された傷口が次第に歪み、ぐにゃぐにゃと動き出す。
次第にその体は人間の輪郭を失い、蠅の集合体になっていく。

「っ!?」

「蟲を扱えるのは、あなただけじゃないの。一度見たら、だいたい出来るから」

「糞女が」

蠅は、黒霧となり空高く昇っていく。

「それともう一つ。あの人こそ本物の悪魔だから。あなたが崇拝する会長さんさぁ、たぶん地獄を見ると思うよ?」

荒れ果てた中庭を見つめた。酷い惨状。でも何故か溜め息の代わりに自然と笑みがこぼれた。

「悪魔か……。面白くなってきたな」

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