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マッチングアプリの待ち合わせは慎重に
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◆◆◆
賢太郎は婚活マッチングアプリで由美子とマッチングした。
お互い誠実にメッセージをやりとりして好印象を持った。
「フルネームで呼び合うなんて、誠実な人に違いない」
そんな印象を抱き、初回デートが決まった。待ち合わせ場所はスタンダードなデートスポット、みなとみらい駅。下調べもばっちりだ。
彼は大手商社勤務のエリート。これまで仕事一筋だったが、そろそろ結婚を考える年齢だ。
「理想の伴侶を見つけよう」 と婚活を始めた賢太郎にとって、帰国子女で上品なお嬢様OLの由美子は運命の相手に見えた。
この日のためにシンプルで清潔感のある服装を選び、ヘアサロンとヒゲ脱毛まで完璧に準備してきた。
アプリのメッセージでも連絡は取れるが念のためお互いの風貌を連絡し合う。
賢太郎は33才 水色のシャツにチノパン、茶色の革スニーカーだ。メガネに黒髪。どれもシンプルだが仕立ての良い彼らしい服装だ。
由美子は30才 白いニットにグレーのスカート 黒系サンダル グッチのバッグ 白いスカーフ 黒髪ロング。
◆◆◆
同じ頃、健は同じく婚活マッチングアプリで祐実とマッチングしていた。
「よーし、今日もヒモ候補探しだ!」
パチンコと借金まみれのケンは、金づるを見つけるために婚活を装っている。
ユミは女子大卒の銀行員。
「絶対に金持ってるに違いない!母性本能をくすぐって、ヒモになってやるぜ」
手持ちの中ではいちばん無難そうな服装をして、待ち合わせの みなとみらい駅 へと向かった。
アプリのメッセージでも連絡は取れるが念のためお互いの風貌を連絡し合う。
ケンは37才 水色のヨレヨレシャツに古着のチノパン、茶色の踵のすり減った革靴だ。メガネに無精髭、黒髪。無難な格好をしてはいるがだらし無さが滲み出ている。
ユミは27才 白いニットにグレーのスカート 黒系サンダル 黒ストッキング 細いネックレス コーチのバッグ 黒髪ロング。
◆◆◆
ーーーさて懸命な読者諸君はこの後何が起きるかわかったであろう。
そう、2組のペアが入れ替わってしまったのであるーーーー
◆◆◆
日曜日、みなとみらい駅の改札前。
賢太郎は早めに到着し、由美子を待っていた。
ふと見ると、他にもスマホを見ながら誰かを待っている男性がいる。
「あの男、だらしないな…」
水色のヨレヨレシャツにくたびれたチノパン、革靴はすり減り、無精髭まで生えている。
「あれじゃせっかく来てくれる相手の女性が可哀想だなあ」 と眉をひそめる賢太郎。
その時、黒髪ロングの女性 がはにかみながら彼に近づいてきた。由美子さんに違いない。
「ケンさんですよね!」
ん? いきなりあだ名呼び?まぁ、思ったよりカジュアルな女性なのかな。
彼女は、白いニットにグレーのスカート。アプリで見た服装の特徴にぴったり一致している。
並んで歩き出すと、
「ユミって呼んでいいですよ!」
少し予想外だったが、好感触だった。
◆◆◆
その頃、ケンの前には別の黒髪ロングの女性 が駆け寄ってきた。ユミに違いない。
「ギリギリになってすみません」
「あ、別に、大丈夫っす、ユミさん」
「…あだ名呼びですか…ちょっと馴れ馴れしいんですね。」ちょっと表情が曇った。
彼女はピシッとした白いニットにグレーのスカート。まさにアプリの連絡通りだ。
「(ヤベェ、ちょっと機嫌悪いか?)」
ケンは自分のペースに持ち込もうとしたが、会話が盛りあらがない。
店も決めていなかったので、適当に歩き回った挙句、大衆居酒屋を選んだ。
「煙いし騒がしいし、最悪なんですけど…」
女性の表情はどんどん曇っていく。
これといった会話もないまま1時間ちょっとを過ごす。
女性が口を開いた。
「今日は初回だし、これでお開きにしましょう。」
「あ、悪いっす、俺、財布に1500円しかなくて」
「…はぁ?」
呆れた表情の彼女は、仕方なく全額支払うと、そそくさと帰っていった。
「最低…」
バツが悪そうに後を追うケンであったがそれっきり。
ケンはその足でパチンコ屋で憂さ晴らしした。
◆◆◆
一方、賢太郎と女性は、高級レストランで無難に会話が弾んでいた。
「丸の内OLって聞いてたけど、銀行員だったんですね!」
「帰国子女っておっしゃってましたよね?どちらで?」「え?今なんて?」「あ、失礼、話題を変えましょう!」
料理の好みがぴったりで、横浜ベイスターズのファンという共通点まで見つかった。
「次は野球観戦して、中華街に行きましょう!」
「ええ、楽しみです!」
(完璧だ…理想の女性だ…)
レストラン代は賢太郎が全額支払い、次回のデートの約束まで取り付けて、「デート大成功!」 と満足して帰宅した。
その夜、賢太郎はメッセージを送った。
「今日は素敵なデートをありがとう。由美子さんはやっぱり理想的な人だ。次回、野球観戦と中華街、楽しみにしています!」
数分後、返信が届いた。
「賢太郎さんは思っていたのと違う人でした。だらしない人ですね。もう連絡はしません。」
「え!? なんで!!?あ!ブロックされてる?なんで?僕何かした?」
絶望する賢太郎であった。
◆◆◆
一方、ケンはパチンコで負けた帰り道、ユミからのメッセージを受け取った。
ん?振られたはずでは…。
「ケンさん、今日は楽しいデートをありがとう! 高級レストラン、ご馳走様でした。次回、野球観戦と中華街、いつにしますか?」
「なんで!?俺なんで許されてるの?ラッキーってことでいいの?」
思わず叫ぶケン。
◆◆◆
マッチングアプリの待ち合わせは慎重に
賢太郎は婚活マッチングアプリで由美子とマッチングした。
お互い誠実にメッセージをやりとりして好印象を持った。
「フルネームで呼び合うなんて、誠実な人に違いない」
そんな印象を抱き、初回デートが決まった。待ち合わせ場所はスタンダードなデートスポット、みなとみらい駅。下調べもばっちりだ。
彼は大手商社勤務のエリート。これまで仕事一筋だったが、そろそろ結婚を考える年齢だ。
「理想の伴侶を見つけよう」 と婚活を始めた賢太郎にとって、帰国子女で上品なお嬢様OLの由美子は運命の相手に見えた。
この日のためにシンプルで清潔感のある服装を選び、ヘアサロンとヒゲ脱毛まで完璧に準備してきた。
アプリのメッセージでも連絡は取れるが念のためお互いの風貌を連絡し合う。
賢太郎は33才 水色のシャツにチノパン、茶色の革スニーカーだ。メガネに黒髪。どれもシンプルだが仕立ての良い彼らしい服装だ。
由美子は30才 白いニットにグレーのスカート 黒系サンダル グッチのバッグ 白いスカーフ 黒髪ロング。
◆◆◆
同じ頃、健は同じく婚活マッチングアプリで祐実とマッチングしていた。
「よーし、今日もヒモ候補探しだ!」
パチンコと借金まみれのケンは、金づるを見つけるために婚活を装っている。
ユミは女子大卒の銀行員。
「絶対に金持ってるに違いない!母性本能をくすぐって、ヒモになってやるぜ」
手持ちの中ではいちばん無難そうな服装をして、待ち合わせの みなとみらい駅 へと向かった。
アプリのメッセージでも連絡は取れるが念のためお互いの風貌を連絡し合う。
ケンは37才 水色のヨレヨレシャツに古着のチノパン、茶色の踵のすり減った革靴だ。メガネに無精髭、黒髪。無難な格好をしてはいるがだらし無さが滲み出ている。
ユミは27才 白いニットにグレーのスカート 黒系サンダル 黒ストッキング 細いネックレス コーチのバッグ 黒髪ロング。
◆◆◆
ーーーさて懸命な読者諸君はこの後何が起きるかわかったであろう。
そう、2組のペアが入れ替わってしまったのであるーーーー
◆◆◆
日曜日、みなとみらい駅の改札前。
賢太郎は早めに到着し、由美子を待っていた。
ふと見ると、他にもスマホを見ながら誰かを待っている男性がいる。
「あの男、だらしないな…」
水色のヨレヨレシャツにくたびれたチノパン、革靴はすり減り、無精髭まで生えている。
「あれじゃせっかく来てくれる相手の女性が可哀想だなあ」 と眉をひそめる賢太郎。
その時、黒髪ロングの女性 がはにかみながら彼に近づいてきた。由美子さんに違いない。
「ケンさんですよね!」
ん? いきなりあだ名呼び?まぁ、思ったよりカジュアルな女性なのかな。
彼女は、白いニットにグレーのスカート。アプリで見た服装の特徴にぴったり一致している。
並んで歩き出すと、
「ユミって呼んでいいですよ!」
少し予想外だったが、好感触だった。
◆◆◆
その頃、ケンの前には別の黒髪ロングの女性 が駆け寄ってきた。ユミに違いない。
「ギリギリになってすみません」
「あ、別に、大丈夫っす、ユミさん」
「…あだ名呼びですか…ちょっと馴れ馴れしいんですね。」ちょっと表情が曇った。
彼女はピシッとした白いニットにグレーのスカート。まさにアプリの連絡通りだ。
「(ヤベェ、ちょっと機嫌悪いか?)」
ケンは自分のペースに持ち込もうとしたが、会話が盛りあらがない。
店も決めていなかったので、適当に歩き回った挙句、大衆居酒屋を選んだ。
「煙いし騒がしいし、最悪なんですけど…」
女性の表情はどんどん曇っていく。
これといった会話もないまま1時間ちょっとを過ごす。
女性が口を開いた。
「今日は初回だし、これでお開きにしましょう。」
「あ、悪いっす、俺、財布に1500円しかなくて」
「…はぁ?」
呆れた表情の彼女は、仕方なく全額支払うと、そそくさと帰っていった。
「最低…」
バツが悪そうに後を追うケンであったがそれっきり。
ケンはその足でパチンコ屋で憂さ晴らしした。
◆◆◆
一方、賢太郎と女性は、高級レストランで無難に会話が弾んでいた。
「丸の内OLって聞いてたけど、銀行員だったんですね!」
「帰国子女っておっしゃってましたよね?どちらで?」「え?今なんて?」「あ、失礼、話題を変えましょう!」
料理の好みがぴったりで、横浜ベイスターズのファンという共通点まで見つかった。
「次は野球観戦して、中華街に行きましょう!」
「ええ、楽しみです!」
(完璧だ…理想の女性だ…)
レストラン代は賢太郎が全額支払い、次回のデートの約束まで取り付けて、「デート大成功!」 と満足して帰宅した。
その夜、賢太郎はメッセージを送った。
「今日は素敵なデートをありがとう。由美子さんはやっぱり理想的な人だ。次回、野球観戦と中華街、楽しみにしています!」
数分後、返信が届いた。
「賢太郎さんは思っていたのと違う人でした。だらしない人ですね。もう連絡はしません。」
「え!? なんで!!?あ!ブロックされてる?なんで?僕何かした?」
絶望する賢太郎であった。
◆◆◆
一方、ケンはパチンコで負けた帰り道、ユミからのメッセージを受け取った。
ん?振られたはずでは…。
「ケンさん、今日は楽しいデートをありがとう! 高級レストラン、ご馳走様でした。次回、野球観戦と中華街、いつにしますか?」
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