ムズキュン注意報!7分で恋のドキドキ完結

もっくん

文字の大きさ
24 / 63

マッチングアプリの待ち合わせは慎重に

しおりを挟む
◆◆◆

賢太郎けんたろうは婚活マッチングアプリで由美子ゆみことマッチングした。
お互い誠実にメッセージをやりとりして好印象を持った。
「フルネームで呼び合うなんて、誠実な人に違いない」
そんな印象を抱き、初回デートが決まった。待ち合わせ場所はスタンダードなデートスポット、みなとみらい駅。下調べもばっちりだ。

彼は大手商社勤務のエリート。これまで仕事一筋だったが、そろそろ結婚を考える年齢だ。
「理想の伴侶を見つけよう」 と婚活を始めた賢太郎にとって、帰国子女で上品なお嬢様OLの由美子は運命の相手に見えた。
この日のためにシンプルで清潔感のある服装を選び、ヘアサロンとヒゲ脱毛まで完璧に準備してきた。

アプリのメッセージでも連絡は取れるが念のためお互いの風貌を連絡し合う。

賢太郎は33才 水色のシャツにチノパン、茶色の革スニーカーだ。メガネに黒髪。どれもシンプルだが仕立ての良い彼らしい服装だ。
由美子は30才 白いニットにグレーのスカート 黒系サンダル グッチのバッグ 白いスカーフ 黒髪ロング。

◆◆◆

同じ頃、ケンは同じく婚活マッチングアプリで祐実ユミとマッチングしていた。
「よーし、今日もヒモ候補探しだ!」
パチンコと借金まみれのケンは、金づるを見つけるために婚活を装っている。
ユミは女子大卒の銀行員。
「絶対に金持ってるに違いない!母性本能をくすぐって、ヒモになってやるぜ」
手持ちの中ではいちばん無難そうな服装をして、待ち合わせの みなとみらい駅 へと向かった。

アプリのメッセージでも連絡は取れるが念のためお互いの風貌を連絡し合う。

ケンは37才 水色のヨレヨレシャツに古着のチノパン、茶色の踵のすり減った革靴だ。メガネに無精髭、黒髪。無難な格好をしてはいるがだらし無さが滲み出ている。
ユミは27才 白いニットにグレーのスカート 黒系サンダル 黒ストッキング 細いネックレス コーチのバッグ 黒髪ロング。

◆◆◆

ーーーさて懸命な読者諸君はこの後何が起きるかわかったであろう。
そう、2組のペアが入れ替わってしまったのであるーーーー

◆◆◆

日曜日、みなとみらい駅の改札前。
賢太郎は早めに到着し、由美子を待っていた。

ふと見ると、他にもスマホを見ながら誰かを待っている男性がいる。

「あの男、だらしないな…」
水色のヨレヨレシャツにくたびれたチノパン、革靴はすり減り、無精髭まで生えている。
「あれじゃせっかく来てくれる相手の女性が可哀想だなあ」 と眉をひそめる賢太郎。

その時、黒髪ロングの女性 がはにかみながら彼に近づいてきた。由美子さんに違いない。
「ケンさんですよね!」
ん? いきなりあだ名呼び?まぁ、思ったよりカジュアルな女性なのかな。
彼女は、白いニットにグレーのスカート。アプリで見た服装の特徴にぴったり一致している。

並んで歩き出すと、
「ユミって呼んでいいですよ!」
少し予想外だったが、好感触だった。

◆◆◆

その頃、ケンの前には別の黒髪ロングの女性 が駆け寄ってきた。ユミに違いない。
「ギリギリになってすみません」
「あ、別に、大丈夫っす、ユミさん」
「…あだ名呼びですか…ちょっと馴れ馴れしいんですね。」ちょっと表情が曇った。
彼女はピシッとした白いニットにグレーのスカート。まさにアプリの連絡通りだ。

「(ヤベェ、ちょっと機嫌悪いか?)」
ケンは自分のペースに持ち込もうとしたが、会話が盛りあらがない。
店も決めていなかったので、適当に歩き回った挙句、大衆居酒屋を選んだ。
「煙いし騒がしいし、最悪なんですけど…」
女性の表情はどんどん曇っていく。
これといった会話もないまま1時間ちょっとを過ごす。
女性が口を開いた。
「今日は初回だし、これでお開きにしましょう。」
「あ、悪いっす、俺、財布に1500円しかなくて」
「…はぁ?」
呆れた表情の彼女は、仕方なく全額支払うと、そそくさと帰っていった。
「最低…」
バツが悪そうに後を追うケンであったがそれっきり。
ケンはその足でパチンコ屋で憂さ晴らしした。

◆◆◆

一方、賢太郎と女性は、高級レストランで無難に会話が弾んでいた。

「丸の内OLって聞いてたけど、銀行員だったんですね!」
「帰国子女っておっしゃってましたよね?どちらで?」「え?今なんて?」「あ、失礼、話題を変えましょう!」

料理の好みがぴったりで、横浜ベイスターズのファンという共通点まで見つかった。
「次は野球観戦して、中華街に行きましょう!」
「ええ、楽しみです!」
(完璧だ…理想の女性だ…)

レストラン代は賢太郎が全額支払い、次回のデートの約束まで取り付けて、「デート大成功!」 と満足して帰宅した。


その夜、賢太郎はメッセージを送った。
「今日は素敵なデートをありがとう。由美子さんはやっぱり理想的な人だ。次回、野球観戦と中華街、楽しみにしています!」

数分後、返信が届いた。
「賢太郎さんは思っていたのと違う人でした。だらしない人ですね。もう連絡はしません。」

「え!? なんで!!?あ!ブロックされてる?なんで?僕何かした?」
絶望する賢太郎であった。

◆◆◆

一方、ケンはパチンコで負けた帰り道、ユミからのメッセージを受け取った。
ん?振られたはずでは…。

「ケンさん、今日は楽しいデートをありがとう! 高級レストラン、ご馳走様でした。次回、野球観戦と中華街、いつにしますか?」

「なんで!?俺なんで許されてるの?ラッキーってことでいいの?」
思わず叫ぶケン。

◆◆◆

マッチングアプリの待ち合わせは慎重に

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

乳首当てゲーム

はこスミレ
恋愛
会社の同僚に、思わず口に出た「乳首当てゲームしたい」という独り言を聞かれた話。

処理中です...