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勝負下着は恋の始まり(なんかちょっと違うけど)
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クラスメイトの美和に誘われて、放課後に一緒にテスト勉強する約束をした。
「キミが頼りになるのはテスト前だけだねっ!」
「なんだよ、それ。まあ記憶力だけは自身あるけど。」
美和とはクラスが一緒になって以来、よく二人で遊んでいた。
でも家に行くのは初めてで、なんだか妙に緊張する。
部屋に通されてみると、几帳面な性格の美和らしい女子の部屋だ。
可愛らしいクッション、ぬいぐるみ、ジャンル分けして整然と並んだ本棚、壁際には大きなピンク色の衣装ケース。
「ちょっとお茶入れてくるから、そこ座って待ってて」
美和が下の階に降りていき、僕はテスト勉強の準備を始めた。
「ねえ美和!蛍光ペンある?」
下の階の美和に声を掛けると
「引き出しに蛍光ペン入ってるから、それ使って!あとこれからパンケーキ焼くからゆっくりしてて!」
「わかった!」
引き出しってどれだよ…と目の前にあったピンクの衣装ケースの引き出しを開けると。
「うわっ…!」
目に飛び込んできたのは、引き出しいっぱいのカラフルな下着の山。
しかも、「勝負♡」「一軍」「二軍」 というラベルとかわいい猫のイラスト付き。
小さく畳まれて整然と並べられている。
ふんわりと甘いメープルシロップのような香りが下着の山から漂ってくる…。
魅惑の引き出し…。
美和らしい、めちゃくちゃ几帳面…。
見てはいけないと思いつつもやっぱり見てしまう。
…それなりにじっくり見てしまう。
白、チェック、水玉、グレー、淡いピンク、薄いイエロー、紺、ミントグリーン、フラワー柄、縞々…
美和の胸、意外に大きかったんだな。
ふむふむ「二軍」はやっぱり楽な素材が多いのかな。
ほう、「一軍」も思ったより地味なのが多いんだな。
やっぱり「勝負♡」はカラフルで女の子っぽい、ぺらっとクシュッとしたのが多いな。…っていうか勝負♡はどこかで見たことあるのが多い気が…。
下の階からパンケーキの焼ける香りが漂ってきたので、僕は我に返って静かに引き出しを閉めた。
でも頭の中にあの光景が焼き付いて離れない。
美和がパンケーキと紅茶を持って戻ってきた。
「あれ?蛍光ペンの場所さっき教えたじゃん」
「悪りぃ、忘れてた。」
「もう!先におやつ食べてから勉強しようねっ!」
「う…うん」
「パンケーキ美味え!ありがとう。」
「よかった!焼き加減きっちり計ったもん!」
勉強会で僕たちの距離は狭まった。
翌日以降、僕は授業中もあの整然と並んだ下着の絵面が頭から離れない。
なんなら「勝負♡」「一軍」「二軍」のラインナップが頭の中で再現できてしまう。
記憶力テストがあったなら90点は余裕だ。
見覚えがあった「勝負♡」に思いを巡らす。
そういえば、前に美和と一緒に行ったカラオケで立ち上がる瞬間にチラッと見えた水色は「勝負♡」の中にあったアレだ。縁取りのレースが白かったし間違いない。
ハンバーガー屋の階段で見上げた先に見えたフラワー柄も「勝負♡」にあった。
図書館で初めて自習に誘われたとき見えたのも、きっと「勝負♡」だ。
特徴的なミントグリーンは1つしかなかった。
ん?なんか美和が僕と会う日、必ず「勝負♡」ラベルの下着を着けている気が?
これって、もしかして…俺のこと、好きなのか?
いやいや偶然に違いない。
それからは意識せずとも美和のスカートの中が気になって仕方なくなってしまった。
風が吹いたとき、美和が階段を登るとき、クラスで女子たちと談笑して足を組み替えるとき…。
一緒に帰った公園のベンチで、二人でファストフードに行ったときの向かいの席、二人でカラオケに行ったときにちょっと屈んだとき…
シチュエーションの違いを意識して観察し、ちょっとしか見えなかった時も脳内の記憶と照らし合わせて特定する。
「おまえ美和のことずっと見てるよな。もう付き合っちゃえよ!」
クラスメイトも茶化してくる。
結果は、ハッキリしていた。
僕と二人で会う予定の無い学校生活では「一軍」「二軍」、僕と会う予定がある日は「勝負♡」だった。
一度だけ美和と約束が無い日に学校で「勝負♡」を確認したときは、やっぱりランダムだったのかとガッカリした。
その矢先、美和から「今日一緒に帰ろ?限定のアイスあるらしいよ!」と誘われた。
これはさすがにもう確定なのでは?
几帳面な性格の美和のこと、あれだけ整頓しておきながら朝、適当にがさっと掴んで着用してるとは思えない。
僕に会う約束を考えながら下着を選んでいる、ちょっと照れくさそうな美和の姿を想像し、僕はたまらなく愛おしく感じた。
もう迷っている暇は無い!
美和ひとりにずっと待たせるわけにはいかない!僕から告白するんだ!
初めて僕のほうから美和と一緒に帰る約束をした。
「ちょっと話があるんだけど」
「なに?」
「俺、美和のことが…好きだ」
美和は一瞬驚いた顔をして、すぐに嬉しそうに赤くなった。
「…ほんと?」
「うん。付き合ってほしい」
美和は恥ずかしそうにうつむいて、でも嬉しそうにうなずいた。
「…うん、私もずっと好きだった。」
付き合い始めてから数週間後、美和が突然聞いてきた。
「ねぇ、私の気持ちにいつから気づいたの?なにかきっかけがあったの?」
「えっ…」
「だって、最初は全然気づいてくれなかったみたいなのに、急に告白してくれたから。」
やばい。理由が絶対言えない。
「えっと、それは…その…」
ピンクの衣装ケースのことは、一生秘密にしないといけない。
「キミが頼りになるのはテスト前だけだねっ!」
「なんだよ、それ。まあ記憶力だけは自身あるけど。」
美和とはクラスが一緒になって以来、よく二人で遊んでいた。
でも家に行くのは初めてで、なんだか妙に緊張する。
部屋に通されてみると、几帳面な性格の美和らしい女子の部屋だ。
可愛らしいクッション、ぬいぐるみ、ジャンル分けして整然と並んだ本棚、壁際には大きなピンク色の衣装ケース。
「ちょっとお茶入れてくるから、そこ座って待ってて」
美和が下の階に降りていき、僕はテスト勉強の準備を始めた。
「ねえ美和!蛍光ペンある?」
下の階の美和に声を掛けると
「引き出しに蛍光ペン入ってるから、それ使って!あとこれからパンケーキ焼くからゆっくりしてて!」
「わかった!」
引き出しってどれだよ…と目の前にあったピンクの衣装ケースの引き出しを開けると。
「うわっ…!」
目に飛び込んできたのは、引き出しいっぱいのカラフルな下着の山。
しかも、「勝負♡」「一軍」「二軍」 というラベルとかわいい猫のイラスト付き。
小さく畳まれて整然と並べられている。
ふんわりと甘いメープルシロップのような香りが下着の山から漂ってくる…。
魅惑の引き出し…。
美和らしい、めちゃくちゃ几帳面…。
見てはいけないと思いつつもやっぱり見てしまう。
…それなりにじっくり見てしまう。
白、チェック、水玉、グレー、淡いピンク、薄いイエロー、紺、ミントグリーン、フラワー柄、縞々…
美和の胸、意外に大きかったんだな。
ふむふむ「二軍」はやっぱり楽な素材が多いのかな。
ほう、「一軍」も思ったより地味なのが多いんだな。
やっぱり「勝負♡」はカラフルで女の子っぽい、ぺらっとクシュッとしたのが多いな。…っていうか勝負♡はどこかで見たことあるのが多い気が…。
下の階からパンケーキの焼ける香りが漂ってきたので、僕は我に返って静かに引き出しを閉めた。
でも頭の中にあの光景が焼き付いて離れない。
美和がパンケーキと紅茶を持って戻ってきた。
「あれ?蛍光ペンの場所さっき教えたじゃん」
「悪りぃ、忘れてた。」
「もう!先におやつ食べてから勉強しようねっ!」
「う…うん」
「パンケーキ美味え!ありがとう。」
「よかった!焼き加減きっちり計ったもん!」
勉強会で僕たちの距離は狭まった。
翌日以降、僕は授業中もあの整然と並んだ下着の絵面が頭から離れない。
なんなら「勝負♡」「一軍」「二軍」のラインナップが頭の中で再現できてしまう。
記憶力テストがあったなら90点は余裕だ。
見覚えがあった「勝負♡」に思いを巡らす。
そういえば、前に美和と一緒に行ったカラオケで立ち上がる瞬間にチラッと見えた水色は「勝負♡」の中にあったアレだ。縁取りのレースが白かったし間違いない。
ハンバーガー屋の階段で見上げた先に見えたフラワー柄も「勝負♡」にあった。
図書館で初めて自習に誘われたとき見えたのも、きっと「勝負♡」だ。
特徴的なミントグリーンは1つしかなかった。
ん?なんか美和が僕と会う日、必ず「勝負♡」ラベルの下着を着けている気が?
これって、もしかして…俺のこと、好きなのか?
いやいや偶然に違いない。
それからは意識せずとも美和のスカートの中が気になって仕方なくなってしまった。
風が吹いたとき、美和が階段を登るとき、クラスで女子たちと談笑して足を組み替えるとき…。
一緒に帰った公園のベンチで、二人でファストフードに行ったときの向かいの席、二人でカラオケに行ったときにちょっと屈んだとき…
シチュエーションの違いを意識して観察し、ちょっとしか見えなかった時も脳内の記憶と照らし合わせて特定する。
「おまえ美和のことずっと見てるよな。もう付き合っちゃえよ!」
クラスメイトも茶化してくる。
結果は、ハッキリしていた。
僕と二人で会う予定の無い学校生活では「一軍」「二軍」、僕と会う予定がある日は「勝負♡」だった。
一度だけ美和と約束が無い日に学校で「勝負♡」を確認したときは、やっぱりランダムだったのかとガッカリした。
その矢先、美和から「今日一緒に帰ろ?限定のアイスあるらしいよ!」と誘われた。
これはさすがにもう確定なのでは?
几帳面な性格の美和のこと、あれだけ整頓しておきながら朝、適当にがさっと掴んで着用してるとは思えない。
僕に会う約束を考えながら下着を選んでいる、ちょっと照れくさそうな美和の姿を想像し、僕はたまらなく愛おしく感じた。
もう迷っている暇は無い!
美和ひとりにずっと待たせるわけにはいかない!僕から告白するんだ!
初めて僕のほうから美和と一緒に帰る約束をした。
「ちょっと話があるんだけど」
「なに?」
「俺、美和のことが…好きだ」
美和は一瞬驚いた顔をして、すぐに嬉しそうに赤くなった。
「…ほんと?」
「うん。付き合ってほしい」
美和は恥ずかしそうにうつむいて、でも嬉しそうにうなずいた。
「…うん、私もずっと好きだった。」
付き合い始めてから数週間後、美和が突然聞いてきた。
「ねぇ、私の気持ちにいつから気づいたの?なにかきっかけがあったの?」
「えっ…」
「だって、最初は全然気づいてくれなかったみたいなのに、急に告白してくれたから。」
やばい。理由が絶対言えない。
「えっと、それは…その…」
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