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黒歴史ポエムが奇跡を生んだらしい
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学校帰りの海岸。僕、充は、コンビニで買ったサンドイッチとコーラを片手に、自転車を停めて黄昏れていた。
ポケットからノートを取り出し、片思いの相手・成美への詩を書きつける。
『あぁ君の瞳は、夏の陽射しのように眩しくて Summer
涼風に揺れる髪は、まるで夕暮れに舞う金色の稲穂のようだ Gold
君が教室で笑うたび、僕の心はかき乱される Smile
あの日、君が貸してくれた赤いボールペン pen
Yes red it's red
それを返すたびに、君の指先に触れそうで you you it's you
体育祭のとき、君が走る姿に目を奪われ、危うくリレーのバトンを落としそうになったね
Run run run
冬の日、君がくれたホットココアの味が、今でも忘れられない So sweet very sweet
図書室で偶然手に取った同じ本、そのときの「運命だね」
って言葉を何度も思い出してしまう Love
僕はどれだけの時間、君を見つめていただろう Love Forever
気づいてほしいような、気づかれたくないような Yes
だけど、僕のこの想いは、届かないまま夜の波に永遠に消えていく Forever
君はどんな夢を見てるの Dream
Dream Dream…いつまでも永遠のForever』
うわ、やばい。めちゃくちゃ中二病全開のポエムになっている。でも、これが僕の本音だ。直接言えない思いをすべてこのノートに込めている。誰にも見られてはいけない、墓場まで持っていくべき黒歴史だ。
波の音とウミネコの鳴き声が寂しく響く。
……と、その瞬間——
バサッッ!
「うわっ!」
突如、トビが急降下して、何かをくちばしで掴んで飛び去った。
しまった!
サンドイッチを狙われた!油断した!
……と、思ったのに、サンドイッチはちゃんと目の前にある。
代わりにトビが持ち去ったのは——
「ポエム帳ーーーーっ!!!」
よりによって、それか!?
トビは軽快に羽ばたきながら、ノートを持ったまま遠ざかる。
お願いだ! せめて海に落としてくれ!
海の藻屑として葬ってくれ!
しかしトビは海ではなく、山の方へ飛んでいく。
むしろ……学校方面に近づいている!?
「待て待て待て待て!」
僕は慌てて自転車を漕ぎ、追いかけた。
しかし、鳥の飛行速度に勝てるはずもなく、あっさり見失ってしまった。
それから数日。
道ばたに落ちているゴミを見るたびに確認し、気が気でない。
クラスでの成美の視線も気になる。もし誰かに拾われてたらどうしよう。
そんな不安がピークに達した週末のことだった。
地元のローカルラジオから聞き覚えのある言葉が流れてきた。
クラスみんなが聞いてる人気番組だ。
『今週のポエムコーナー!
リスナーのみなさん!今夜は特別に、ある謎の詩集が局の玄関前に届けられていたので、それを紹介したいと思います!聞いてください…!』
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『あぁ君の瞳は、夏の陽射しのように眩しくて Summer
涼風に揺れる髪は、まるで夕暮れに舞う金色の稲穂のようだ Gold
君が教室で笑うたび、僕の心はかき乱される Smile
あの日、君が貸してくれた赤いボールペン pen
Yes red it's red
それを返すたびに、君の指先に触れそうで you you it's you
体育祭のとき、君が走る姿に目を奪われ、危うくリレーのバトンを落としそうになったね
Run run run
冬の日、君がくれたホットココアの味が、今でも忘れられない So sweet very sweet
図書室で偶然手に取った同じ本、そのときの「運命だね」
って言葉を何度も思い出してしまう Love
僕はどれだけの時間、君を見つめていただろう Love Forever
気づいてほしいような、気づかれたくないような Yes
だけど、僕のこの想いは、届かないまま夜の波に永遠に消えていく Forever
君はどんな夢を見てるの Dream
Dream Dream…いつまでも永遠のForever』
「ぎゃあああああ!!!やめてえええええ!!!」
僕のポエムが!
ローカルラジオで!!
読み上げられている!!
しかも人気DJがなぜか絶賛している。
『いや~、このポエム、すごくピュアでいいですねぇ!ボクね、実を言うとちょっと泣きました!(ドヤッ)
こういう純粋な愛の詩って、最近なかなか聞かないんですよ。書いた人…
(謎の間)
…ぜひ名乗り出てほしいですね!』
名乗るわけないだろうがぁぁぁぁ!!!
翌週の登校日。
クラスの空気がおかしい。
なんか、視線を感じる。
というか、クラスメイト全員が笑いをこらえてる。
「え、これ絶対充じゃん」「ボールペンの話、こないだしてたし」「リレーのバトン落としそうになったのアイツだろ?」「ホットココアとか図書室とか……もう答え合わせ終わってるって!」
ヒソヒソ声が丸聞こえだ。
そして、成美の視線が……
きっと軽蔑のまなざし…
?え、なんか、違う。
「充、ちょっといい?」
え。
休み時間、成美に呼び出された。
彼女の表情は、意外にも真剣だった。
「……あのポエム、充が書いたの?」
「……えっ」
どうしよう。
ここはシラを切るべきか?
でも、書いたのは事実。
もう、逃げられない。
「……うん」
観念して答えた。
成美は、しばらく僕を見つめて
「素敵……ありがとう。すごく嬉しかった」
……え?
「え???」
「前から、充のこと、ミステリアスだけど気になってた。だから、あのポエム聞いて、すごく……、嬉しくてちょっと私泣いちゃった…。」
頬を赤らめながら言う成美。
まさかの、
まさかの、
両思いーーーー!?!?
人生、何が起こるかわからない。
でも、ひとつだけわかったことがある。
黒歴史は、時に奇跡を生む。
ポケットからノートを取り出し、片思いの相手・成美への詩を書きつける。
『あぁ君の瞳は、夏の陽射しのように眩しくて Summer
涼風に揺れる髪は、まるで夕暮れに舞う金色の稲穂のようだ Gold
君が教室で笑うたび、僕の心はかき乱される Smile
あの日、君が貸してくれた赤いボールペン pen
Yes red it's red
それを返すたびに、君の指先に触れそうで you you it's you
体育祭のとき、君が走る姿に目を奪われ、危うくリレーのバトンを落としそうになったね
Run run run
冬の日、君がくれたホットココアの味が、今でも忘れられない So sweet very sweet
図書室で偶然手に取った同じ本、そのときの「運命だね」
って言葉を何度も思い出してしまう Love
僕はどれだけの時間、君を見つめていただろう Love Forever
気づいてほしいような、気づかれたくないような Yes
だけど、僕のこの想いは、届かないまま夜の波に永遠に消えていく Forever
君はどんな夢を見てるの Dream
Dream Dream…いつまでも永遠のForever』
うわ、やばい。めちゃくちゃ中二病全開のポエムになっている。でも、これが僕の本音だ。直接言えない思いをすべてこのノートに込めている。誰にも見られてはいけない、墓場まで持っていくべき黒歴史だ。
波の音とウミネコの鳴き声が寂しく響く。
……と、その瞬間——
バサッッ!
「うわっ!」
突如、トビが急降下して、何かをくちばしで掴んで飛び去った。
しまった!
サンドイッチを狙われた!油断した!
……と、思ったのに、サンドイッチはちゃんと目の前にある。
代わりにトビが持ち去ったのは——
「ポエム帳ーーーーっ!!!」
よりによって、それか!?
トビは軽快に羽ばたきながら、ノートを持ったまま遠ざかる。
お願いだ! せめて海に落としてくれ!
海の藻屑として葬ってくれ!
しかしトビは海ではなく、山の方へ飛んでいく。
むしろ……学校方面に近づいている!?
「待て待て待て待て!」
僕は慌てて自転車を漕ぎ、追いかけた。
しかし、鳥の飛行速度に勝てるはずもなく、あっさり見失ってしまった。
それから数日。
道ばたに落ちているゴミを見るたびに確認し、気が気でない。
クラスでの成美の視線も気になる。もし誰かに拾われてたらどうしよう。
そんな不安がピークに達した週末のことだった。
地元のローカルラジオから聞き覚えのある言葉が流れてきた。
クラスみんなが聞いてる人気番組だ。
『今週のポエムコーナー!
リスナーのみなさん!今夜は特別に、ある謎の詩集が局の玄関前に届けられていたので、それを紹介したいと思います!聞いてください…!』
????
『あぁ君の瞳は、夏の陽射しのように眩しくて Summer
涼風に揺れる髪は、まるで夕暮れに舞う金色の稲穂のようだ Gold
君が教室で笑うたび、僕の心はかき乱される Smile
あの日、君が貸してくれた赤いボールペン pen
Yes red it's red
それを返すたびに、君の指先に触れそうで you you it's you
体育祭のとき、君が走る姿に目を奪われ、危うくリレーのバトンを落としそうになったね
Run run run
冬の日、君がくれたホットココアの味が、今でも忘れられない So sweet very sweet
図書室で偶然手に取った同じ本、そのときの「運命だね」
って言葉を何度も思い出してしまう Love
僕はどれだけの時間、君を見つめていただろう Love Forever
気づいてほしいような、気づかれたくないような Yes
だけど、僕のこの想いは、届かないまま夜の波に永遠に消えていく Forever
君はどんな夢を見てるの Dream
Dream Dream…いつまでも永遠のForever』
「ぎゃあああああ!!!やめてえええええ!!!」
僕のポエムが!
ローカルラジオで!!
読み上げられている!!
しかも人気DJがなぜか絶賛している。
『いや~、このポエム、すごくピュアでいいですねぇ!ボクね、実を言うとちょっと泣きました!(ドヤッ)
こういう純粋な愛の詩って、最近なかなか聞かないんですよ。書いた人…
(謎の間)
…ぜひ名乗り出てほしいですね!』
名乗るわけないだろうがぁぁぁぁ!!!
翌週の登校日。
クラスの空気がおかしい。
なんか、視線を感じる。
というか、クラスメイト全員が笑いをこらえてる。
「え、これ絶対充じゃん」「ボールペンの話、こないだしてたし」「リレーのバトン落としそうになったのアイツだろ?」「ホットココアとか図書室とか……もう答え合わせ終わってるって!」
ヒソヒソ声が丸聞こえだ。
そして、成美の視線が……
きっと軽蔑のまなざし…
?え、なんか、違う。
「充、ちょっといい?」
え。
休み時間、成美に呼び出された。
彼女の表情は、意外にも真剣だった。
「……あのポエム、充が書いたの?」
「……えっ」
どうしよう。
ここはシラを切るべきか?
でも、書いたのは事実。
もう、逃げられない。
「……うん」
観念して答えた。
成美は、しばらく僕を見つめて
「素敵……ありがとう。すごく嬉しかった」
……え?
「え???」
「前から、充のこと、ミステリアスだけど気になってた。だから、あのポエム聞いて、すごく……、嬉しくてちょっと私泣いちゃった…。」
頬を赤らめながら言う成美。
まさかの、
まさかの、
両思いーーーー!?!?
人生、何が起こるかわからない。
でも、ひとつだけわかったことがある。
黒歴史は、時に奇跡を生む。
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