4 / 10
2500マイルの遠距離で
しおりを挟む
帰国後、僕はさっそく教えてもらったアンさんのメアドに連絡をした。
正直、僕も英語は不得意だ。
が、アンさんの英語力はさらに手前で止まっていそうだったので、辞書とにらめっこしながら簡単な言い回しを調べ、推敲に推敲を重ねた。
硬い言い回しにならないようスラングも調べて入れてみる。
「これならいける!」と送信ボタンを押したものの、数秒後には胃のあたりがぎゅっと掴まれるような不安が押し寄せてきた。
「やばい、これ、チャラいやつと思われるかも…」
一度送ったメールは取り消せない。
己の未熟な英語力を呪いながらソファに突っ伏していると、なんとアンさんからその日のうちに返信が来た。
内容はというと、彼女の故郷がベトナム中部のフエであること、六人兄妹の長女として育ったこと、一番下の妹がまだ三歳であること、そしてホーチミンシティでは友達とルームシェアをしながらベトナム料理店で働いているということなどなど。
文章の端々から、彼女の賑やかで温かな日常が垣間見えた。
日本とは何もかも違う彼女の暮らしぶり。
その新鮮さに僕は次第に引き込まれた。
英語自体はたどたどしいけれど、彼女の文章には妙に親しみやすい愛嬌があった。
笑いの「(笑)」を「hihihi」と書き、泣き顔の「(泣)」を「hichich」と表現するその無邪気さは、まるで知らない世界から届いた手紙のように僕の心をくすぐった。
メールのやりとりを重ねるうちに、いつしか僕たちは「毎日1通」を合言葉のように文通を楽しむようになっていた。
そんなある日、アンさんからfacebookの友達申請が届いた。
まさか、彼女のほうから距離を縮めてくれるなんて――。
心の中で小さな花火がパッと弾けた気がした。
ただ、後から冷静に考えると、ベトナムの人たちはfacebookの友達追加がかなりフランクらしい。
自撮り写真や家族の写真をどんどん投稿するのも普通のことで、僕との繋がりも「日本ってどんな国だろう?」くらいの軽い興味だったのかもしれない。
とはいえ、彼女の投稿から見える生活はますます興味深かった。
友達と撮った楽しげな写真たち。
そして「一番下の妹がまだ三歳」というのは本当だったらしく、ベビー服姿の小さな女の子が愛らしい笑顔で写っている。
改めてアンさんの写真を見ると、服装やメイクはどこか素朴でチープだけれど、その笑顔には何とも言えない可憐さがある。
「可愛いなぁ…」とつい声が漏れた瞬間、我ながら完全に恋してるなと悟った。
さらにfacebookのメッセンジャー機能を使うようになってからは、彼女との距離がぐっと近づいた気がした。
「おはよう」
「今何してる?」
「おやすみ」
それだけの短いメッセージなのに、可愛い絵文字や無邪気な言葉づかいが添えられているだけで、僕は勝手に一喜一憂していた。
気づけば、2500マイルも離れたベトナムの彼女が僕の日常の中心になっていた。
いつの間にか彼女のためにスマホを開く時間が一番の楽しみになっていたのだ。
正直、僕も英語は不得意だ。
が、アンさんの英語力はさらに手前で止まっていそうだったので、辞書とにらめっこしながら簡単な言い回しを調べ、推敲に推敲を重ねた。
硬い言い回しにならないようスラングも調べて入れてみる。
「これならいける!」と送信ボタンを押したものの、数秒後には胃のあたりがぎゅっと掴まれるような不安が押し寄せてきた。
「やばい、これ、チャラいやつと思われるかも…」
一度送ったメールは取り消せない。
己の未熟な英語力を呪いながらソファに突っ伏していると、なんとアンさんからその日のうちに返信が来た。
内容はというと、彼女の故郷がベトナム中部のフエであること、六人兄妹の長女として育ったこと、一番下の妹がまだ三歳であること、そしてホーチミンシティでは友達とルームシェアをしながらベトナム料理店で働いているということなどなど。
文章の端々から、彼女の賑やかで温かな日常が垣間見えた。
日本とは何もかも違う彼女の暮らしぶり。
その新鮮さに僕は次第に引き込まれた。
英語自体はたどたどしいけれど、彼女の文章には妙に親しみやすい愛嬌があった。
笑いの「(笑)」を「hihihi」と書き、泣き顔の「(泣)」を「hichich」と表現するその無邪気さは、まるで知らない世界から届いた手紙のように僕の心をくすぐった。
メールのやりとりを重ねるうちに、いつしか僕たちは「毎日1通」を合言葉のように文通を楽しむようになっていた。
そんなある日、アンさんからfacebookの友達申請が届いた。
まさか、彼女のほうから距離を縮めてくれるなんて――。
心の中で小さな花火がパッと弾けた気がした。
ただ、後から冷静に考えると、ベトナムの人たちはfacebookの友達追加がかなりフランクらしい。
自撮り写真や家族の写真をどんどん投稿するのも普通のことで、僕との繋がりも「日本ってどんな国だろう?」くらいの軽い興味だったのかもしれない。
とはいえ、彼女の投稿から見える生活はますます興味深かった。
友達と撮った楽しげな写真たち。
そして「一番下の妹がまだ三歳」というのは本当だったらしく、ベビー服姿の小さな女の子が愛らしい笑顔で写っている。
改めてアンさんの写真を見ると、服装やメイクはどこか素朴でチープだけれど、その笑顔には何とも言えない可憐さがある。
「可愛いなぁ…」とつい声が漏れた瞬間、我ながら完全に恋してるなと悟った。
さらにfacebookのメッセンジャー機能を使うようになってからは、彼女との距離がぐっと近づいた気がした。
「おはよう」
「今何してる?」
「おやすみ」
それだけの短いメッセージなのに、可愛い絵文字や無邪気な言葉づかいが添えられているだけで、僕は勝手に一喜一憂していた。
気づけば、2500マイルも離れたベトナムの彼女が僕の日常の中心になっていた。
いつの間にか彼女のためにスマホを開く時間が一番の楽しみになっていたのだ。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
