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飛行~少しでも前に進まないと~
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アンさんにとって、僕はたまたま知り合った外国人の友達で、ただのメッセージのやり取りを楽しむ存在だったのかもしれない。
でも、僕にとってはそうではなかった。
いつの間にか彼女の明るさや純粋さにすっかり魅了されてしまい、もう彼女のことを考えずにはいられなかった。
だから、ついに僕は一つの行動を決意した。
「マレーシア旅行に行くから、そのあとベトナムにも寄るつもりなんだ」
そうアンさんに伝えた。
実はこれ、旅行というよりはアンさんに会うための完全な口実だった。
しかも、その予定をわざと彼女の誕生日の近辺に設定するという念の入れよう。
正直、日本人の女性相手だったら、ここまでグイグイ行くタイプではない僕。
でもアンさんの場合、遠いベトナムにいるからこそ、行動しなければただの「メル友」で終わってしまう。
そう思うと、不思議な勇気が湧いてきたのだ。
いざ2回目のベトナム旅行を決行した僕は、日中は一人でホーチミン市内を観光し、夕方に仕事終わりのアンさんと会う約束をした。
メッセージでは頻繁にやり取りをしているものの、実際に会うのはこれが初めてだ。
それでも、日本から遠く離れたベトナムの地では、僕を知っている人など誰もいない。
そんな状況が、普段の自分では考えられないような大胆さを後押ししてくれた。
約束の時間に現れたアンさんは、真っ赤な膝が出るくらいの丈のワンピースを着ていた。
そういえば赤が好きって言ってたなと思い返す。
デートとして誘ったわけではないものの、彼女が男友達と二人きりで会うのはあまり慣れていないのだろう。
少し緊張した様子が伝わってきて、その姿がまた可愛らしく思えた。
もっともこちらも似たようなものだ。
ただ、問題は会話だ。
メッセージでのやり取りは、辞書や翻訳アプリを駆使して文を組み立てられるけれど、実際の会話となるとそうもいかない。
お互いカタコトの英語で、ところどころ言葉が迷子になる。
でも、それもなんだかおかしくて、自然と笑いがこぼれた。
「私、案内するね」
そう言ってアンさんが向かったのは、近くのバイク置き場だった。
そこから彼女がスクーターを引っ張り出してくる。
ベトナムでは、バイクが主要な交通手段だという話は聞いていた。
でも、実際に目の前で、アンさんのような小柄でおとなしそうな女の子がバイクを軽々と操る姿を見て、日本人の僕にはかなり新鮮で驚きだった。
バイク置き場の管理人らしきおじさんとアンさんは顔見知りのようで、二人はベトナム語で何か楽しそうに会話をしている。
僕の妄想癖がここでも発揮される。
管理人のおじさんから「おう、彼氏か?」なんて茶化されて、アンさんが「やめてよ。まだ違うよ!」と返しているんだろう。
勝手に想像して、勝手に顔がにやける僕がいた。
「じゃ、乗って」
アンさんが後部座席を指差した。
僕は少し緊張しながらバイクの後ろにまたがった。
ほんのり香るアンさんの髪の匂いと、風を切る心地よさに包まれながら、バイクは湿度の高いホーチミンの夜を走り出した。
アンさんのバイクの後ろにまたがる僕。
彼女が「はい、これ」と手渡してくれたのは、二人乗り用に用意されていたヘルメットだった。
ヘルメットからは女性の髪の香りしかしなかったので僕は安心した。
男を乗せたことはきっとないんだ。
バイクの振動とアンさんの声がすぐそこに感じられる距離感に、僕は少し緊張しつつも、ドキドキしていた。
でも、僕にとってはそうではなかった。
いつの間にか彼女の明るさや純粋さにすっかり魅了されてしまい、もう彼女のことを考えずにはいられなかった。
だから、ついに僕は一つの行動を決意した。
「マレーシア旅行に行くから、そのあとベトナムにも寄るつもりなんだ」
そうアンさんに伝えた。
実はこれ、旅行というよりはアンさんに会うための完全な口実だった。
しかも、その予定をわざと彼女の誕生日の近辺に設定するという念の入れよう。
正直、日本人の女性相手だったら、ここまでグイグイ行くタイプではない僕。
でもアンさんの場合、遠いベトナムにいるからこそ、行動しなければただの「メル友」で終わってしまう。
そう思うと、不思議な勇気が湧いてきたのだ。
いざ2回目のベトナム旅行を決行した僕は、日中は一人でホーチミン市内を観光し、夕方に仕事終わりのアンさんと会う約束をした。
メッセージでは頻繁にやり取りをしているものの、実際に会うのはこれが初めてだ。
それでも、日本から遠く離れたベトナムの地では、僕を知っている人など誰もいない。
そんな状況が、普段の自分では考えられないような大胆さを後押ししてくれた。
約束の時間に現れたアンさんは、真っ赤な膝が出るくらいの丈のワンピースを着ていた。
そういえば赤が好きって言ってたなと思い返す。
デートとして誘ったわけではないものの、彼女が男友達と二人きりで会うのはあまり慣れていないのだろう。
少し緊張した様子が伝わってきて、その姿がまた可愛らしく思えた。
もっともこちらも似たようなものだ。
ただ、問題は会話だ。
メッセージでのやり取りは、辞書や翻訳アプリを駆使して文を組み立てられるけれど、実際の会話となるとそうもいかない。
お互いカタコトの英語で、ところどころ言葉が迷子になる。
でも、それもなんだかおかしくて、自然と笑いがこぼれた。
「私、案内するね」
そう言ってアンさんが向かったのは、近くのバイク置き場だった。
そこから彼女がスクーターを引っ張り出してくる。
ベトナムでは、バイクが主要な交通手段だという話は聞いていた。
でも、実際に目の前で、アンさんのような小柄でおとなしそうな女の子がバイクを軽々と操る姿を見て、日本人の僕にはかなり新鮮で驚きだった。
バイク置き場の管理人らしきおじさんとアンさんは顔見知りのようで、二人はベトナム語で何か楽しそうに会話をしている。
僕の妄想癖がここでも発揮される。
管理人のおじさんから「おう、彼氏か?」なんて茶化されて、アンさんが「やめてよ。まだ違うよ!」と返しているんだろう。
勝手に想像して、勝手に顔がにやける僕がいた。
「じゃ、乗って」
アンさんが後部座席を指差した。
僕は少し緊張しながらバイクの後ろにまたがった。
ほんのり香るアンさんの髪の匂いと、風を切る心地よさに包まれながら、バイクは湿度の高いホーチミンの夜を走り出した。
アンさんのバイクの後ろにまたがる僕。
彼女が「はい、これ」と手渡してくれたのは、二人乗り用に用意されていたヘルメットだった。
ヘルメットからは女性の髪の香りしかしなかったので僕は安心した。
男を乗せたことはきっとないんだ。
バイクの振動とアンさんの声がすぐそこに感じられる距離感に、僕は少し緊張しつつも、ドキドキしていた。
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