視界を変えれば、人生が変わる…かもしれない(僕のド近眼物語)

もっくん

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視力1.0→0.7 レーシック手術の魔法

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社会人になってからも、コンタクトレンズとメガネを併用する生活は続いていた。

そんなある日、友人からレーシック手術を勧められた。
レーシック手術を受けて近眼から解放された友人の体験談を聞く。
同じ苦しみを味わった者からの体験談は心に響くし、めちゃくちゃ共感できる。解放された喜びたるや想像するだけでこっちもニヤニヤしてしまう。
話を全部聞き終わる前に僕もレーシック手術を受ける決意が既に固まっていた。

眼科医療の進歩万歳!神様ありがとう!という感じである。

当時はまだレーシックのリスクに対する情報が今ほど広まっておらず、今言われている手術時の感染症や将来の白内障?緑内障?とかの手術への影響といった問題もあまり知られていなかった。
眼科では説明を受けたと思うがそんなにしっかりは覚えていない。
だが、僕が当時そのリスクを全てしっかり聞いて吟味していたとしてもレーシック手術は受けたと思う。

それだけ近眼によって人生の大事な時間を浪費していた意識は当時の僕にとって強かった。
僕自身のメガネ=根暗・ガリ勉キャラという勝手な偏見が主な原因だが、近眼になったことで対人関係や人格形成への影響も限りなく大きかった。

コンタクトレンズの煩わしさから解放され、眼鏡なしで生活できる。
災害時に夜中飛び起きても、そのまま逃げられるし、メガネが壊れたりコンタクトをなくしたりしてももう困らない。
小学校以来ずっと続いていた「視力の足かせ」から自由になれる。こんなに魅力的な話があるだろうか。
その時の僕にとってレーシック手術は単なる視力回復以上に、それまでの人生で感じていた自分への不甲斐なさとの決別の意味もあったのだ。近眼の呪いへの僕なりの復讐だ。


当時はレーシックの黎明期に近く、とにかく裾野を広げて事例を増やしたかったのだろう。
友人の紹介で手術を受けると、僕にも友人にも紹介料それぞれに2万円が入るという裏事情まであった。
もちろん、僕の友人は純粋な善意で勧めてくれたことは疑いようもない。


こうして僕はついにレーシック手術を受けることを決意した。
費用はウン十万円と高額だった。目薬とか以外は保険適用外だったが、これから先にかかるメガネ代、コンタクト代、洗浄液の費用、そして常についてまわるメガネコンタクトの準備、ゴロゴロする目の不快感から解放されると思えば安いものだ。

さらに、十年保証付きで視力が下がった場合は再手術が無料というのも自信のほどがうかがえる。多少のリスクはあっても、それを上回るメリットがあった。


手術当日までに角膜の厚さを測ったり何度か検査を受け、同意書などの書類も準備する。ついにその日が来た。
手術当日の眼科までの行きは普段使っているメガネを掛けていく。眼科に付いたら受付をしてメガネを外して裸眼で順番を待つ。

日帰り手術なので、予定時間に流れ作業のように手術室へ通された。
歯医者みたいな手術椅子に座らされ、目を閉じられないように器具で固定され、眼科医含めて3~4人に囲まれる。
麻酔の目薬を差されると、医師から「真ん中の赤い点をずっと見つめててください」と指示があった。

レーザーが角膜を削る間、もしここで目をそらしたらどうなるのかという恐怖がこみ上げる。
目は固定されているが、眼球は動かせる。もし視線をずらしてしまったら、違う場所を削られてしまうのではないか。
ヒィィィ
僕は迫ってくる赤い光を必死に見つめた。
ちなみにもしここで目を逸らしたらどうなるのか、そうしてしまった人が過去にいた場合どうなったかは知らない。

そんな緊張感の中、数分ほどであっけなく手術は終わった。
終わったから変化がわかる。
いま裸眼なのに視界の周囲は霞んでいるが中央がハッキリ見え始めている。

その日のうちに予定していたルートで電車に乗って帰宅した。
手術直後は麻酔が掛かっているのでそこまで痛くない。まだ周辺視野はぼんやりとしているものの裸眼視力が明らかに良くなっているのがわかった。
だって帰りはもうメガネを掛けていないしコンタクトももちろんしてないのに駅の看板がちゃんと読めるのだ。

家に帰って、麻酔が切れると目がじんじん痛み出したが、痛み止めの目薬で何とか乗り切った。
翌朝、目が覚めると驚いた。コンタクトを入れていないのに、コンタクトと同等に世界がクリアに見える。
まるで魔法にかかったようだった。

それまでの面倒くさい視力矯正から完全に解放された僕は、迷わず手持ちの眼鏡とコンタクトをすべて捨てた。
以前緊急用に作った高級眼鏡すらも、ためらいなくゴミ箱へ放り込んだ。
その解放感は言葉にできないほどだった。
小学校時代に近眼を自覚してから20年以上。矯正なしでは生きられない身体だった。
今、僕は完全体の自分を取り戻したのだ。


さて手術直後の視力は1.0まで回復したが、最初のうたい文句で言われてたほど完璧とはいかなかった。
年月が経つにつれてやっぱり徐々に低下していった。

僕が受けたレーシック手術の眼科は10年保証を謳っていた。
10年以内に視力が0.7を切った場合無料で1.0以上に戻す再手術が受けられるというものだ。

7年目に再検査を受けたが、視力は0.8を維持していると言われて、再手術には至らなかった。
まあ今思えば、眼科側としては無料で再手術したくないからよっぽど視力低下してない限りは大丈夫って言うよなという気もする。
とにかくその時は再手術を受けなかった。10年ギリギリの時にまた来ようと決めた。

さて10年保証の期限が近づいた頃、また改めてクリニックを調べると、いつの間にか経営母体が変わっていた。
前の経営の時の10年保証がどうなったかも不明になっていた。
裸眼で生活できなくなったというほどではない。無料とはいえ再手術にもリスクはある。
僕が受けた頃と比べると思ったほどレーシック手術は一般化しなくって、再手術までするかどうかは一考の余地があった。
そんな風にあれこれ迷っているうちに気付いたら10年保証の期間も過ぎてしまっていた。

結局、再手術は受けないまま15年が経過したわけだが、今の視力は両目で0.7をかろうじて保っているくらいだ。
運転免許の視力検査にはギリギリ通るものの、映画の字幕がちょっとぼやけることもある。

現在の僕は仕方なく、度数の弱い眼鏡をいくつかファッション感覚で作って使い分けている。なんとなく、学生時代に「授業中だけメガネをかける人」に近づいている感じだ。

今思えば、レーシック手術を終えたあの日すべての眼鏡を捨てる必要はなかった。
フレームだけ取っておけば今の弱い度数のレンズを入れて使えたのに。
それに結構高いフレームだってあったんだよな。

とはいえあの日レーシック手術を受けたこと自体にはまったく後悔はない。
近眼矯正のストレスからの解放感は教授しているし、旅行やアウトドアへの抵抗感も減ったからか以前よりアクティブに生きられていると思う。

時折、レーシックを受けたと話すと「よくそんな危険な手術を受けたね」と驚かれることもあるが、僕にとっては、あの時の決断は必然だったと思っている。

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