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魔王の噂
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アズノストはやってないって言っていた。スライムは別の誰かが操ったんだって……
「魔物が理由もなく暴れるケースが以前より格段に多いんだ。魔物の長である魔王……そいつが魔物を操って、近い未来に人間を滅ぼそうとしている、今はその前段階で、着実に魔の手は迫ってる……ってのが、城の中で危惧されていること。国民に言ったらパニックになるから黙っているけどね」
魔王はそんなことしようと思ってない、今だって自ら魔物を止めに行ってるんだ、誤解だって言いたいけど、言ったら魔王と繋がってることがバレる……! そうなったら平和作戦は丸つぶれだ。今は話を合わせるしかない。
「そう、なんだ……」
「でもすごい力を持ってるフォルが一緒に戦ってくれるなら頼もしいよ」
「俺としてはまず実力を見たいが。お前、本当に戦えるのか?」
「えっ!?」
楓月はじろじろと俺の体を見てくる。ボソッと「こんな細い体で……」って呟いた。あーくそ、前世で初対面の時も「そんな細っこい体で踊れんのか?」って言われたの思い出した。変わってねぇなあ。
「え、えーと……俺はこの、魔法で戦うから!」
俺は武器なんて持ったことない。農具しか持ったことないんだ!
左手の紋章を掲げる。しかし何も起こらない。楓月はため息をつき、陽凪は苦笑いだ。
「……きっとなんとかなる!」
「なんとかならなかったらどうするんだ」
「うっ……」
「まあまあ、魔物と戦いに行くことになったら俺と一緒に行こう。俺だって騎士だからフォルを守れるよ」
「ありがとう……」
楓月には痛いところを突かれた。俺は魔物とぶっつけ本番で戦おうとしてる。アズノストが裏で手を回してくれるって言ったって、アズノストの知らないところで魔物が暴れているんだから、突然目の前の魔物が暴れだす可能性だってあるかもしれない……アズノストも自分が暴走した時の保険に力をつけてほしいって言ってたし……
「レベリングから逃げちゃいけないよな……」
「レベリング?」
「強くなるためにレベルアップしたいってこと、だよね、フォル」
「そ、そうそう!」
見知った顔しかいないからって油断して現代日本用語が出てた。フォロー助かるぞ、陽凪。
「じゃあそろそろ王様のところへ行こう、フォル」
「あ、そうだな。団長さん、じゃあまた」
会釈をしてその場を離れる。ちらっと振り返ると、楓月はどこか割り切れないような顔でこちらを見ていた。
城に入る前、陽凪が門番に俺のことを伝えてくれて、話はすでに通っているらしく王様の謁見室に向かった。
「さっきの、レベリングって。思わず笑いそうになっちゃった。ゲームみたいに話すもんだからさ」
「だって日本のことを思い出したら、ここってゲームみたいな世界観じゃん」
「まあそうだね。でも今はここが俺たちの現実だ。死んでもゲームみたいに復活できない。一回きりだ」
笑っているはずなのに、すべてを切り離したような冷たい言い方にゾッとした。表情と言葉と感情がちぐはぐで……
「大丈夫、これからは俺が叶空を守るから安心して。団長ほどじゃないけど、俺もけっこう強いんだ。叶空を死なせたりしない」
陽凪はすぐにいつものふんわりとした笑顔に戻った。さっきの一瞬の冷たさが、俺の勘違いだったと感じるぐらいに。
すると、廊下の奥から走ってきた兵士に呼び止められた。
「ルクスさん、お連れの方、申し訳ないですが現在王に謁見はできません。別日にまたお越しください」
「どうしてですか?」
息を切らす兵士に陽凪が問う。
「……少々トラブルがあったらしく……詳しくは私も知らず……」
兵士も困っていると、また廊下の奥から男の人が歩いてきた。
「アレク王子!」
兵士は王子と呼び、傅く。だんだん近づいてはっきりと見えてくる顔に、俺は思わず声をあげた。
「そいつらは俺のところに通す」
「えっ、天真!?」
装飾がたくさんついた高そうなシルクの服に身を包んでいる男は、ステラシエルのリーダー、天真だった。ここにきて三連続でメンバーに会えるなんて……! これだけで来た甲斐があるってもんだ!
って、天真が王子!? 責任感があってリーダー気質だったけど、抜けてるところも多くて天然だからトークが面白くて、バラエティー露出が多くて、グループ内ではいじられキャラだった天真が!
「てんま……? なんだそれは」
「魔物が理由もなく暴れるケースが以前より格段に多いんだ。魔物の長である魔王……そいつが魔物を操って、近い未来に人間を滅ぼそうとしている、今はその前段階で、着実に魔の手は迫ってる……ってのが、城の中で危惧されていること。国民に言ったらパニックになるから黙っているけどね」
魔王はそんなことしようと思ってない、今だって自ら魔物を止めに行ってるんだ、誤解だって言いたいけど、言ったら魔王と繋がってることがバレる……! そうなったら平和作戦は丸つぶれだ。今は話を合わせるしかない。
「そう、なんだ……」
「でもすごい力を持ってるフォルが一緒に戦ってくれるなら頼もしいよ」
「俺としてはまず実力を見たいが。お前、本当に戦えるのか?」
「えっ!?」
楓月はじろじろと俺の体を見てくる。ボソッと「こんな細い体で……」って呟いた。あーくそ、前世で初対面の時も「そんな細っこい体で踊れんのか?」って言われたの思い出した。変わってねぇなあ。
「え、えーと……俺はこの、魔法で戦うから!」
俺は武器なんて持ったことない。農具しか持ったことないんだ!
左手の紋章を掲げる。しかし何も起こらない。楓月はため息をつき、陽凪は苦笑いだ。
「……きっとなんとかなる!」
「なんとかならなかったらどうするんだ」
「うっ……」
「まあまあ、魔物と戦いに行くことになったら俺と一緒に行こう。俺だって騎士だからフォルを守れるよ」
「ありがとう……」
楓月には痛いところを突かれた。俺は魔物とぶっつけ本番で戦おうとしてる。アズノストが裏で手を回してくれるって言ったって、アズノストの知らないところで魔物が暴れているんだから、突然目の前の魔物が暴れだす可能性だってあるかもしれない……アズノストも自分が暴走した時の保険に力をつけてほしいって言ってたし……
「レベリングから逃げちゃいけないよな……」
「レベリング?」
「強くなるためにレベルアップしたいってこと、だよね、フォル」
「そ、そうそう!」
見知った顔しかいないからって油断して現代日本用語が出てた。フォロー助かるぞ、陽凪。
「じゃあそろそろ王様のところへ行こう、フォル」
「あ、そうだな。団長さん、じゃあまた」
会釈をしてその場を離れる。ちらっと振り返ると、楓月はどこか割り切れないような顔でこちらを見ていた。
城に入る前、陽凪が門番に俺のことを伝えてくれて、話はすでに通っているらしく王様の謁見室に向かった。
「さっきの、レベリングって。思わず笑いそうになっちゃった。ゲームみたいに話すもんだからさ」
「だって日本のことを思い出したら、ここってゲームみたいな世界観じゃん」
「まあそうだね。でも今はここが俺たちの現実だ。死んでもゲームみたいに復活できない。一回きりだ」
笑っているはずなのに、すべてを切り離したような冷たい言い方にゾッとした。表情と言葉と感情がちぐはぐで……
「大丈夫、これからは俺が叶空を守るから安心して。団長ほどじゃないけど、俺もけっこう強いんだ。叶空を死なせたりしない」
陽凪はすぐにいつものふんわりとした笑顔に戻った。さっきの一瞬の冷たさが、俺の勘違いだったと感じるぐらいに。
すると、廊下の奥から走ってきた兵士に呼び止められた。
「ルクスさん、お連れの方、申し訳ないですが現在王に謁見はできません。別日にまたお越しください」
「どうしてですか?」
息を切らす兵士に陽凪が問う。
「……少々トラブルがあったらしく……詳しくは私も知らず……」
兵士も困っていると、また廊下の奥から男の人が歩いてきた。
「アレク王子!」
兵士は王子と呼び、傅く。だんだん近づいてはっきりと見えてくる顔に、俺は思わず声をあげた。
「そいつらは俺のところに通す」
「えっ、天真!?」
装飾がたくさんついた高そうなシルクの服に身を包んでいる男は、ステラシエルのリーダー、天真だった。ここにきて三連続でメンバーに会えるなんて……! これだけで来た甲斐があるってもんだ!
って、天真が王子!? 責任感があってリーダー気質だったけど、抜けてるところも多くて天然だからトークが面白くて、バラエティー露出が多くて、グループ内ではいじられキャラだった天真が!
「てんま……? なんだそれは」
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