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同族嫌悪
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「俺が同行します。剣術が使える者がいた方がいいでしょう」
「ね?」と陽凪は小首を傾げてにこりと笑う。申し出はありがたいけど、それだとアズノストが魔王として存分に力を振るえないわけで……正直動きづらくなる、どうにかして断りたい……!
「いや、俺がいれば十分だ」
きっぱり断った! 俺が穏便に断る方法を探していたのに!
やばい。陽凪の周りの空気が変わったような気が……
「君ひとりでフォルを守りきれるのか?」
「フォルを危険な目に遭わせたりなどしない」
「俺は君の実力を知らない。魔法に自信があるのかもしれないが、信じられないな」
売り言葉に買い言葉だ!
「ちょ、ここで喧嘩するなよ」
「喧嘩じゃないよ。俺は危険を懸念しているんだ」
「屁理屈だ!」
「納得がいかないのなら、俺と戦ってみるか?」
「いいよ。受けてたつ」
「そんな場合じゃないだろ!」
俺の声に聞く耳を持たず、二人の間ではバチバチと火花が飛び散っている。なんでどっちも喧嘩腰なんだよ!
その時天真が部屋の中全てを制止するほどの大きな音で手を叩いた。ヒートアップしかけた二人の動きが止まる。あ、天真さんの周りに恐ろしいほど真っ黒なオーラが漂っている。とても怒っていらっしゃる……
「喧嘩なら外でやれ」
「申し訳ない……」
「申し訳ございません……」
喧嘩をしていた二人は声を揃えて謝り、天真の剣幕に縮こまっている。
(起こった天真が怖すぎるのだが……)
(俺的には、怒らせてはいけないステラシエル第1位だからな)
(うむ……身に刻ませてもらった)
天真はふ――、と深く息をついた。
「そんなに言うならお前たち3人に……いや、また喧嘩されたら迷惑だ。騎士団長も一緒に行かせる」
騎士団長……楓月は話が脱線するとすぐに戻してくれるし、喧嘩を止めるのには最適な人選だ。さすが天真。
「お前たち4人に任せたぞ。必ず無事で帰ってこい」
そんなこんなで話はまとまってしまい、明日セイレーンの洞窟へ向かうことになった。俺はどうやって諸々を誤魔化そうかと葛藤しているのに、城を出てアズノストと別れるまで二人の間には険悪な空気が漂っていた。
俺は昨日と同じく陽凪の家に泊まった。夜飯を作ってくれ、風呂も一緒に入り、一緒のベッドで寝る……この流れも昨日と同じだ。
(フォル、少しいいか)
目を閉じようとしたとき、アズノストの声が響いてきた。
(俺も言いたいことがあるよ)
(……それは陽凪とのことだろう)
(そうだよ)
(先に聞こう)
アズノストの声色はどことなく気まずそうだ。俺の言いたいことをなんとなく察しているのだろう。
(なんで陽凪とあんな喧嘩を……!)
(……すまない、つい喧嘩を買ってしまった。話してみて分かった。お互いに同族嫌悪をしているせいか、陽凪とはどうも馬が合わない)
(同族? アズノストと陽凪に似てるとこなんてある?)
(……まあそれは気にしないでくれ。明日のことだが、洞窟の魔物には死にたくなければ明日は身を隠せと言っておいた。洞窟内の魔物はいなくなるはずだ。セイレーンにも秘薬の件を交渉したが、断られてしまった)
(魔王でも断られるの?)
(……会えば分かる。それに、セイレーンの説得にはフォルの方が適任だと判断した)
俺の方が適任ってどういうことだ? そんな交渉とか上手くないんだけど……それこそ交渉事なら陽凪の方が得意だろう。
(セイレーンは戦闘を好まない。攻撃をすればあちらも身を守るために応戦してくるが、交渉さえうまくいけば戦闘せずに秘薬を手にできるだろう)
(それなら良かった。よし、次はアズノストの話を聞くよ)
(俺の推し、人との会話が上手すぎないか? ……えっとだな)
なんか魔王としての言語がおかしくなってるな。
「ね?」と陽凪は小首を傾げてにこりと笑う。申し出はありがたいけど、それだとアズノストが魔王として存分に力を振るえないわけで……正直動きづらくなる、どうにかして断りたい……!
「いや、俺がいれば十分だ」
きっぱり断った! 俺が穏便に断る方法を探していたのに!
やばい。陽凪の周りの空気が変わったような気が……
「君ひとりでフォルを守りきれるのか?」
「フォルを危険な目に遭わせたりなどしない」
「俺は君の実力を知らない。魔法に自信があるのかもしれないが、信じられないな」
売り言葉に買い言葉だ!
「ちょ、ここで喧嘩するなよ」
「喧嘩じゃないよ。俺は危険を懸念しているんだ」
「屁理屈だ!」
「納得がいかないのなら、俺と戦ってみるか?」
「いいよ。受けてたつ」
「そんな場合じゃないだろ!」
俺の声に聞く耳を持たず、二人の間ではバチバチと火花が飛び散っている。なんでどっちも喧嘩腰なんだよ!
その時天真が部屋の中全てを制止するほどの大きな音で手を叩いた。ヒートアップしかけた二人の動きが止まる。あ、天真さんの周りに恐ろしいほど真っ黒なオーラが漂っている。とても怒っていらっしゃる……
「喧嘩なら外でやれ」
「申し訳ない……」
「申し訳ございません……」
喧嘩をしていた二人は声を揃えて謝り、天真の剣幕に縮こまっている。
(起こった天真が怖すぎるのだが……)
(俺的には、怒らせてはいけないステラシエル第1位だからな)
(うむ……身に刻ませてもらった)
天真はふ――、と深く息をついた。
「そんなに言うならお前たち3人に……いや、また喧嘩されたら迷惑だ。騎士団長も一緒に行かせる」
騎士団長……楓月は話が脱線するとすぐに戻してくれるし、喧嘩を止めるのには最適な人選だ。さすが天真。
「お前たち4人に任せたぞ。必ず無事で帰ってこい」
そんなこんなで話はまとまってしまい、明日セイレーンの洞窟へ向かうことになった。俺はどうやって諸々を誤魔化そうかと葛藤しているのに、城を出てアズノストと別れるまで二人の間には険悪な空気が漂っていた。
俺は昨日と同じく陽凪の家に泊まった。夜飯を作ってくれ、風呂も一緒に入り、一緒のベッドで寝る……この流れも昨日と同じだ。
(フォル、少しいいか)
目を閉じようとしたとき、アズノストの声が響いてきた。
(俺も言いたいことがあるよ)
(……それは陽凪とのことだろう)
(そうだよ)
(先に聞こう)
アズノストの声色はどことなく気まずそうだ。俺の言いたいことをなんとなく察しているのだろう。
(なんで陽凪とあんな喧嘩を……!)
(……すまない、つい喧嘩を買ってしまった。話してみて分かった。お互いに同族嫌悪をしているせいか、陽凪とはどうも馬が合わない)
(同族? アズノストと陽凪に似てるとこなんてある?)
(……まあそれは気にしないでくれ。明日のことだが、洞窟の魔物には死にたくなければ明日は身を隠せと言っておいた。洞窟内の魔物はいなくなるはずだ。セイレーンにも秘薬の件を交渉したが、断られてしまった)
(魔王でも断られるの?)
(……会えば分かる。それに、セイレーンの説得にはフォルの方が適任だと判断した)
俺の方が適任ってどういうことだ? そんな交渉とか上手くないんだけど……それこそ交渉事なら陽凪の方が得意だろう。
(セイレーンは戦闘を好まない。攻撃をすればあちらも身を守るために応戦してくるが、交渉さえうまくいけば戦闘せずに秘薬を手にできるだろう)
(それなら良かった。よし、次はアズノストの話を聞くよ)
(俺の推し、人との会話が上手すぎないか? ……えっとだな)
なんか魔王としての言語がおかしくなってるな。
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