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序章 ゴミ拾いのバイト様
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持ち上げているその人は、頭目よりもずっと身長が低く、華奢だ。屈強な鎧も、鋭い剣も持っていない。
身に纏うのは、村に住む平民と同じような布製の服と履き古したブーツ、そして分厚いメガネ。
その背には大きめのカゴを背負い、手に持つのは……何かわからないが、少なくとも武器ではなさそうだ。
そんな人が、軽々と大の男を持ち上げている。
メガネ男の目が、レンズの奥でぎろりと光る。
つまみ上げていた頭目を、ひょいっと投げると、馬車に乗り込もうとしていた数人に見事に命中した。
盗賊たちは、揃って地面にべしゃっと無様に落ちる。
「いてて……てめぇ、何しやがる」
「”ゴミ拾い”だ」
「なんだとぉ⁉」
よく見ると、先ほど頭目を拾い上げていたモノ……それは剣でも槍でもない。ただの掃除用トングだ。
メガネ男は、それを盗賊たちに向けて、カチカチ鳴らしている。
「さぁ、掃除の時間だ」
盗賊たちが一斉に飛びかかってくる。メガネ男は、ただ、立っている。避けようとも屈しようともしない中、男たちに袋叩きにされるかと思われた。
だが、そんなことにはならない。袋叩きどころか、盗賊たちの拳も短剣も、メガネ男にかすりもしない。
さらりと攻撃をかわされたかと思うと、トングでしたたかに打ちのめされる。その繰り返しだった。
しかも小さく軽い動きだというのに、メガネ男の打撃は確実に盗賊たちを一撃で仕留めていた。彼に打たれて、立っていられる者などいなかったのだ。
残すは、もっとも大柄な頭目だけだ。だがそれでもメガネ男は怯むことなく、相手を見据えている。
見ているアーデルハイトまでが息を呑んだ。
構えるでもなく、ふわりと立っているだけのその姿に、なぜか圧倒されていた。
頭目はそれを払拭するかのように、勢いで拳を繰り出した。だが、それも受け止められてしまう。トングで。
「な、何なんだ、てめぇは……⁉」
「言っただろう。ただのゴミ拾いの掃除屋だ」
頭目のひっくり返った声には答えず、メガネ男は掴んだ腕を捻りあげていく。トングで。
ひねって、ひねって、ひねり上げていく……。
「い、いてぇ‼ いてぇよ! も、もうやめてくれ! 降参だ、降参する!」
「降参したところで、お前たちの末路は変わらん」
メガネ男は、ひねり上げた腕を身体ごと地面に叩き付けた。
まるで布か紙を持ち上げているかのような軽々とした動きだ。
だというのに、次の瞬間に響いたのは、ドォォォォンという地響きにも似た音だった。おまけに土煙までもくもくと上がっている。
地響きとほぼ同時に、「ぐえっ」と潰れたカエルのような声が聞こえた。
土煙が霧散すると、そこにいたのは白目を剥いてぐったりと四肢を投げ出している大男と、その首根っこをトングで掴んだ華奢なメガネ男……それだけだった。
身に纏うのは、村に住む平民と同じような布製の服と履き古したブーツ、そして分厚いメガネ。
その背には大きめのカゴを背負い、手に持つのは……何かわからないが、少なくとも武器ではなさそうだ。
そんな人が、軽々と大の男を持ち上げている。
メガネ男の目が、レンズの奥でぎろりと光る。
つまみ上げていた頭目を、ひょいっと投げると、馬車に乗り込もうとしていた数人に見事に命中した。
盗賊たちは、揃って地面にべしゃっと無様に落ちる。
「いてて……てめぇ、何しやがる」
「”ゴミ拾い”だ」
「なんだとぉ⁉」
よく見ると、先ほど頭目を拾い上げていたモノ……それは剣でも槍でもない。ただの掃除用トングだ。
メガネ男は、それを盗賊たちに向けて、カチカチ鳴らしている。
「さぁ、掃除の時間だ」
盗賊たちが一斉に飛びかかってくる。メガネ男は、ただ、立っている。避けようとも屈しようともしない中、男たちに袋叩きにされるかと思われた。
だが、そんなことにはならない。袋叩きどころか、盗賊たちの拳も短剣も、メガネ男にかすりもしない。
さらりと攻撃をかわされたかと思うと、トングでしたたかに打ちのめされる。その繰り返しだった。
しかも小さく軽い動きだというのに、メガネ男の打撃は確実に盗賊たちを一撃で仕留めていた。彼に打たれて、立っていられる者などいなかったのだ。
残すは、もっとも大柄な頭目だけだ。だがそれでもメガネ男は怯むことなく、相手を見据えている。
見ているアーデルハイトまでが息を呑んだ。
構えるでもなく、ふわりと立っているだけのその姿に、なぜか圧倒されていた。
頭目はそれを払拭するかのように、勢いで拳を繰り出した。だが、それも受け止められてしまう。トングで。
「な、何なんだ、てめぇは……⁉」
「言っただろう。ただのゴミ拾いの掃除屋だ」
頭目のひっくり返った声には答えず、メガネ男は掴んだ腕を捻りあげていく。トングで。
ひねって、ひねって、ひねり上げていく……。
「い、いてぇ‼ いてぇよ! も、もうやめてくれ! 降参だ、降参する!」
「降参したところで、お前たちの末路は変わらん」
メガネ男は、ひねり上げた腕を身体ごと地面に叩き付けた。
まるで布か紙を持ち上げているかのような軽々とした動きだ。
だというのに、次の瞬間に響いたのは、ドォォォォンという地響きにも似た音だった。おまけに土煙までもくもくと上がっている。
地響きとほぼ同時に、「ぐえっ」と潰れたカエルのような声が聞こえた。
土煙が霧散すると、そこにいたのは白目を剥いてぐったりと四肢を投げ出している大男と、その首根っこをトングで掴んだ華奢なメガネ男……それだけだった。
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