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第1章 荷物運びの(魔)王様
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目に涙をためて、しゅんとうなだれる様を見ると、なんだかかわいそうに思えてくる。
幼なじみゆえについ甘くなってしまいそうになるのは、悪い癖だ。そう思って厳しいことを言おうと思ったのだが……結局、許してしまいそうになる。
(まぁ、悪いことばかりでもなかったか……)
そう思い直して、ライは紙とペンを取り出し、何かを書き付けた。
頼れる副官・ギルへ宛てた旨を書き記すと、紙をくるくる巻いて、ルーグの首輪に結ぶ。
「国に戻って、これをギルに渡せ。今回、俺とともに秘密の調査任務に当たっていたということにしてあるから」
「秘密の調査任務? ご主人、何か調査してたんすか?」
「そのつもりはなかったんだが……気になることは色々とあったな」
(『魔獣』を捕らえて商売しようとしていた輩がいる、とかな……)
ライの胸の内には気付いていないように、ルーグは明るく返事をした。
「わかったっす! 絶対届けるっす! でも国に戻るって……どうやったらいいっすか? ここ、どこっすか?」
「城の近くに転移門を開いてやる。寄り道せずに帰れよ」
「ありがとうっす!……でも、今すぐっすか?」
「? なぜだ?」
ルーグは俯いて、なにやらもじもじしている。ライがその顔を覗き込むと、瞳を潤ませで、ルーグは言う。
「やっとご主人に会えたのに、もうお別れなんて寂しいっす……」
そうだった。幼なじみのこいつは、ライに会いたい気持ちひとつで祖国を出たのだ。すぐに帰せば、また耐えられずに出てきてしまうかもしれない。
それになにより、ライが今、離れがたいと思ってしまっていた。
「……仕方ないな。ルーグ、小さくなれるか?」
「できるっす!」
言うが速いか、ルーグは身体をどんどん縮めていった。ぐんぐん体躯は縮小していき、大岩ほどあった身体は、ライの足下にちょこんと佇む子犬へと変わった。
「これだと目立たない。このまま、もう一つの依頼の方へ行こう。それが終われば、俺とともに国に戻る……それで、いいな?」
「一緒にいられるなら何でもいいっす!」
そう叫ぶと、ルーグはぴょんと跳ねて、ライの腕に収まった。
ライはその額に優しく触れる。するとルーグの額の角がふわりと消えていった。
魔力をかけて角だけ見えないようにすると、どこからどう見ても、飼い犬を連れた旅人だ。
「よし、行くか。次の仕事へ」
歩き出すライの耳に、ルーグの遠吠えの声が響いた。
幼なじみゆえについ甘くなってしまいそうになるのは、悪い癖だ。そう思って厳しいことを言おうと思ったのだが……結局、許してしまいそうになる。
(まぁ、悪いことばかりでもなかったか……)
そう思い直して、ライは紙とペンを取り出し、何かを書き付けた。
頼れる副官・ギルへ宛てた旨を書き記すと、紙をくるくる巻いて、ルーグの首輪に結ぶ。
「国に戻って、これをギルに渡せ。今回、俺とともに秘密の調査任務に当たっていたということにしてあるから」
「秘密の調査任務? ご主人、何か調査してたんすか?」
「そのつもりはなかったんだが……気になることは色々とあったな」
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ライの胸の内には気付いていないように、ルーグは明るく返事をした。
「わかったっす! 絶対届けるっす! でも国に戻るって……どうやったらいいっすか? ここ、どこっすか?」
「城の近くに転移門を開いてやる。寄り道せずに帰れよ」
「ありがとうっす!……でも、今すぐっすか?」
「? なぜだ?」
ルーグは俯いて、なにやらもじもじしている。ライがその顔を覗き込むと、瞳を潤ませで、ルーグは言う。
「やっとご主人に会えたのに、もうお別れなんて寂しいっす……」
そうだった。幼なじみのこいつは、ライに会いたい気持ちひとつで祖国を出たのだ。すぐに帰せば、また耐えられずに出てきてしまうかもしれない。
それになにより、ライが今、離れがたいと思ってしまっていた。
「……仕方ないな。ルーグ、小さくなれるか?」
「できるっす!」
言うが速いか、ルーグは身体をどんどん縮めていった。ぐんぐん体躯は縮小していき、大岩ほどあった身体は、ライの足下にちょこんと佇む子犬へと変わった。
「これだと目立たない。このまま、もう一つの依頼の方へ行こう。それが終われば、俺とともに国に戻る……それで、いいな?」
「一緒にいられるなら何でもいいっす!」
そう叫ぶと、ルーグはぴょんと跳ねて、ライの腕に収まった。
ライはその額に優しく触れる。するとルーグの額の角がふわりと消えていった。
魔力をかけて角だけ見えないようにすると、どこからどう見ても、飼い犬を連れた旅人だ。
「よし、行くか。次の仕事へ」
歩き出すライの耳に、ルーグの遠吠えの声が響いた。
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