デブターベイト

山縣

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 次の日の朝、いつもと変わりない日。
 朝食を家族で済ませ、片付けている間にお父さんが会社へ出勤する。
 洗い物、洗濯物、掃除が済んだらひと段落。テレビを見始める。
 もうお昼だ。時間が経つのはあっという間だな。改めて思う。
 「お茶持ってくるね。」
 遂に、やるのだ。やるしかないのだ。もう私は前に進むしかないのだ。
 「あら、珍しいわね。」
 「たまにはね」
 台所へ行きコップにお茶を注ぐ。
 ポケットへ入れていた睡眠薬を片方のコップに入れる。
 「はい、持ってきたよ。」
 「ありがとう。」
 お母さんはすぐに睡眠薬入りのお茶を飲み出した。これも計画通りだ。家の家事をやっている間、何も飲まずにやっていたから喉が渇いているからすぐに飲むと思っていた。
 「お母さん、ありがとね。」
 「え、急に何よ、あはは......」
 寝てしまった。
 ありがとうお母さん。本当に心から感謝している。いままで育ててくれてありがとうございました。
 台所へ行き包丁を持ってくる。
 イメージトレーニング通りまず、心臓へ刺す。思ったよりも硬かった。
 殺すのが一人でよかった。こりゃ重労働だ。二人もいたらヘトヘトになってその場で寝てしまいそうだ。
 心臓を取り出すのにも一苦労だ。
 最初はすごい量の血が飛び出してきていたけれどだんだん勢いがなくなってきた。血がほとんど出てしまったのか。
 ずっと血が出てい続けた方が綺麗だと思う。
 お母さんは起きることもなく。笑顔のまま死んだ。
 心臓がまだ動いていた。体から取り出しても動いていて面白かった。生きていた証拠。しばらく眺めていると動きが止まった。
 「ばいばい、お母さん。」
 もう後戻りはできない。
 次に自分の部屋へ行きホームセンターで買っておいたピカピカのノコギリでお母さんだったものの体をバラバラにする。
 まずは四肢を切ることにした。
 右腕から。
 心臓の部分からの血はもうほぼ止まっていたけれど新しく切ったところからはまた血が出てきた。
 肉は流石ノコギリと言うべきか、簡単に切ることができた。しかし骨がなかなか切れない。
 しばらくギコギコきっているとやっと切れた。
 はあ、こんなのをまだやるのか。疲れる。
 このノコギリの音は近所へは響いていないだろうか。誰かが不安に思って通報してないだろうか。
 頼むよ神様。
 このノコギリの騒音までは想定していなかった。
 やっと右腕を胴体から切り離すことができて、次は左腕だ。
 血の勢いが明らかに弱くなっていた。
 足を切る頃にはもう血は出ないかな。
 右腕と同じように肉の部分はすんなり切れる。やっぱり骨が硬い。
 頭を使おう。スマホでノコギリの正しい使い方を調べることにした。
 なるほど、引くときに力を入れるのか。
 心なしか、若干早く切り終えた気がした。
 次は足だ。
 腕よりも筋肉質だろうし、骨も太いはずだから時間がかかるだろう。
 時計は3時を指していた。まずい、時間が思ったよりもかかりすぎている。このままやっていたら家を出るときにお父さんとばったり会ってしまうかもしれない。急がないと。
 足は腕よりも太くて綺麗な赤色をしていた。美味しそうなくらいにいい太さをしていた。
 
 両足を切り終えたら最後は頭だ。
 もう顔は真っ白だ。
 死後硬直というやつなのか、首はだらんとはしていない。
 首からはまた血がたくさん出てきた。
 切れば切るほど出てきて気づいたら切り終わっていた。
 もうこれで終わりか。
 よし、隠そう。
 心臓をトイレへ流し、腕は自分の部屋と親の寝室へ。足は台所と和室へ。頭はリビングのテーブルの上。胴体はお風呂に入れておこう。
 隠している間はまるで宝探しゲームをしている気分だった。若返った気分だった。
 予想通り血しぶきを浴びたからお風呂へはいり体を洗って新しい服へ着替えた。
 血しぶきを浴びた服とノコギリと包丁をカバンへ入れ。
 お母さんの顔へ挨拶。
 「行ってきます。」
 返事はあるわけもない。
 時計の針は5時を指していた。急いでよかった。6時くらいになったらお父さんが帰ってくるだろう。
 死んじゃダメだよお父さん。
 家の鍵を閉め。
 最寄りの駅へ向かう。
 もう達成感でいっぱいだった。
 肩の荷が下りたように足取りは軽かった。
 初めて自分で決めた、大きな目標をやり遂げてとても嬉しかった。
 涙ひとつ流さないのは悪いかな。でも流れないものはしょうがない。流せるときに流そう。
 運良く電車がすぐにきた。
 危ない。電車の時刻まで考えていなかったけれどよかった。もしかしたらお父さんとばったり会うこともあったかもしれないな。
 
 山のある近くの駅で降りる。
 しばらくバスを待っているとやっときた。
 このバスの時間も確認していなかった。
 田舎だからもしかしたらもう5時を過ぎたらバスがこなかったかもしれないがきてよかった。
 バスに揺られながらお母さんとのいろんなことを思い出した。
 もうすこし普段から反抗して、あんなにいい子ぶらなくてもよかったかな。なんて思う。
 山の近くで降りる。
 もうあたりは真っ暗。流石田舎。明かりもほぼ家からの漏れている光で街頭もほぼない。
 あたりに人がいないのを確認し山へ走る。
 ここからが本当の勝負かもしれない。
 
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