デブターベイト

山縣

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 山へ入ってからどれくらい時間が経ったのだろうか。あたりはもう真っ暗で懐中電灯がないと見えないくらいだけれど懐中電灯を使うと真っ暗な中目立ってどこにいるかぎバレてしまうから使わないようにしている。
 時計を持ってくるべきだった。
 一応スマホとモバイルバッテリーも持ってきたけれど、時間を確認するたびにスマホを起動するのはめんどくさい。
 かなり上の方へ登ってきたはずだ。
 もう今日はここら辺で寝ようか。
 お母さんを殺すのとここまで歩いてくるので相当疲れた。
 ヘトヘトになりながら歩いていると山小屋を見つけた。
 よかった。明かりも付いていないから誰もいないだろう。今夜はぐっすり眠れそうだ。

 朝起きて、昨日は夕飯を食べていなくてお腹がとても空いていたから持ってきた非常食を食べることにした。
 流石非常食あまり美味しいとは言えない変な味をしている。しかし非常食に文句を垂れている暇はない。
 急いで書かなくては。
 その日から食事も睡眠もしっかり取りながら小説のことだけを考えて書き続けた。
 もう何日経ったかわからないくらいが過ぎた頃完成した。

 そして、出版社へ持って行こうとしたとき考えた。
 私は何日間か山の中に居て社会とは隔離されていて全く情報が入ってこなかった。
 家を出るときにお金を持ってきたけどあんまり使わなかった。でもとったおかげで家に入ってきた強盗と鉢合わせて顔を見られてしまった犯人が母を殺害。娘を誘拐した。ということになっていないだろうか。なっていてほしい。
 荷物は小屋へ置いてきた。
 今はバスと電車代と飲み物とか買うくらいはできるようにすこしのお金と原稿用紙の入っている茶封筒しか持っていない。逆に怪しまれるだろうか。
 でもビクビクしている方がむしろ怪しい。
 堂々として行こう。
 警察に止められたりしたらその時はその時だ。
 出版社に行くことだけを考えて、向かった。周りの目なんて気にしていたらダメだと思った。
 気づいたら着いていた。無事とは言えないがここまで来れたのだ。
 担当者に読んでもらった。
 「すごいリアルでいいね。」
 
 やっと褒めてもらえた。
 もう疲れたな。
 もうデビューするとかしないとかじゃなくて自分で満足するものが書けたから良かった。
 小屋へ戻って今日はもう寝よう。
 すごく疲れたからきっとぐっすり寝れるだろう。
 もう起きなくてもいいかな。
 

 
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