憂い視線のその先に

雪村こはる

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勘違いがいっぱい

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 律の頭に浮かんだのは周の顔。玄関先で周とすれ違う際、嫌悪を感じた香りと同じだった。まどかがクリスマスプレゼントとして用意した香水であり千愛希が「いい匂い」と褒めて距離を縮めたもの。体がそれを覚えている。

「仕事用とプライベート用とわけてもいいかなって思って」

 まどかの声も脳裏に響く。プライベート用の香水に、今夜は飲み会だと行ってまどかを置いて出ていった周。

 そんなはずはない。絶対にない。そう律は思うが、「ごめん、律……」そう執拗に謝罪を重ねた周の顔を思い出した。

 ごめんっていうのは千愛希を帰らせたことじゃなくて……そういう関係に至ったってことは……。いや、周に限ってあるわけがない。あんなにもまどかさんのことを好きでいて、独占欲の塊みたいなヤツが他の女性に目を向けるなんてあるはずが……。

 律はそこまで考えて、思考を止めた。周は絶対にまどか以外の女性を好きになることなんてありえない。そう今まで思ってきたが、律自身もまどか以外の人間を好きになることなどありえないと思っていたのに千愛希のことはこんなにも気になる存在になった。
 加えて、まどかのことさえ最初は興味がなかったのにもかかわらず気付けば好きになっていた。恋愛感情に気付く時はいつも突然で、理屈ではないことを知った。
 更に、周が好きだった人を律が好きになるということは、その反対も絶対にないとは言い切れないと律はふと思った。

 周と千愛希が外で2人で会っているはずがない。周はまどかさんを大切にしてるし、千愛希だってあんなにまどかさんのことが好きで……。

 思い出すのは、千愛希が目を輝かせてまどかに擦り寄る姿。けれど最近はよそよそしく避けていたことも思い出す。
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