憂い視線のその先に

雪村こはる

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勘違いがいっぱい

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 律の手が千愛希の頭の下に入り込んで、少し持ち上がった。自然と重ねた唇は深くなり、律の熱い舌先が千愛希の口内へ侵入する。

「ふっ……」

 甘い千愛希の吐息を飲み込むかのように、何度も舌を絡め合い、熱を共有した。
 律の手が千愛希の腿に触れた。

「待って、律」

「……ん?」

「あの……だから、シャワーを……」

「そのままでいいってば」

「よくないよ! 律ばっかりずるいじゃない! そんないい匂いさせて……」

「いい匂い? そう……確かに風呂入ってきたけど……」

「私なんて中華料理まみれなんだからね」

「中華料理まみれってなに……麻婆豆腐でも浴びてきたの?」

「空気にね」

「そう……」

「それに汗もかいてるし」

「俺は気にしないけど」

「私が気になるのー!」

 キーっとムキになる千愛希に、ふっと笑みがこぼれる律。けれどそのままぐっと距離を近付けた。

「この状態の俺を置いてシャワーに行くつもり?」

 ゴリッの千愛希の腹部に硬いモノが触れた。千愛希はそれが何なのかすぐに把握し、目を細める。
 
 私の知ってる律はこんなに猛々しくなかった。もっと中性的で、余裕があって、こんなに雄を剥き出しにしたりしなかった。

 千愛希は、今にも取って食い漁りそうな律の胸両手を置く。

「反応したところ悪いけど、とりあえずシャワーを」

「頑なだね」

「律こそ」

「じゃあ、一緒に行く」

「い、一緒に!?」

「なに、ダメなの?」

「だだだだだめっていうか……」

「もう明るい所で裸も見てる」

「ねぇ、デリカシーってものはないわけ?」

「あるよ、建て前上。仕事なら、そうする。でも千愛希だから」

「私だからもっと気を遣うんじゃなくて?」

「遣って遠慮した結果こんなことになった。だからもう遠慮をするのは止めようと思う」

 学んで言動を改良させたのか悪化したのかは千愛希でも判断しかねるところだが、このまま事を進められるのは困ると小さく息をついた。
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