憂い視線のその先に

雪村こはる

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勘違いがいっぱい

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「今日って今日!?」

「うん。さっき……飲み会で……」

 苦笑する千愛希に、ぐっと奥歯に力を入れる律。周との仲を疑っている場合じゃなかった。やはり敵はそっちだったかと自分の勘の悪さに嫌悪すると同時に、無理にでも誘ってよかったと思わずにはいられなかった。

「それで……なんて答えたの? まさか保留にしたわけじゃないよね?」

 律が未だにまどかに好意を寄せていると思い込んでいた千愛希のことだから、勝手に見切りをつけて睦月との結婚も考え始めていたんじゃないかと律は落ち着かない。
 千愛希はふっと微笑んで、律の指先をきゅっと握った。

「曽根さんにはちゃんと律のことが好きだって伝えてあるから」

「……そうなの?」

「うん。曽根さんも律と別れてもう一度付き合ってくれって言うつもりはないって言ってたし……まぁ、もし律と上手くいってないなら俺とのことも考えてみてとは言われたんだけど……」

「……俺と上手くいってないって言ったの? 相談したの?」

「し、してないよ! 何でかな……楽しそうじゃないって言われて……律は私のこと好きじゃないって」

 寂しそうに眉を下げた千愛希の表情を見て、律はすっと目を光らせる。

 アイツ……ふーん、そういうタイプね。悩んで弱ってるところにつけ込んで俺から奪おうとしたわけか。そっか……そっか。

 ぶわっと殺気だった律にびくりと肩を震わせた千愛希。指先を握ったまま「で、でも私律じゃなきゃダメだからって言ったし……」と慌ててフォローする。

「うん。大丈夫、心配いらない」

 律はにっこりと千愛希に歯を見せて笑った。

 何が!? と怖いくらいの笑顔に戸惑う千愛希だが、律は大丈夫、出る杭は俺が叩き潰すから、と心の中で静かに呟いて変わらぬ笑顔を浮かべた。
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