憂い視線のその先に

雪村こはる

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最恐の男

25

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 律の頭の中にはチラリと周の姿が過ぎる。まどかを身辺調査し、興信所に依頼した時の写真を執拗に買い取らせてくれと懇願した姿。まどかの使用したカップをこっそり持ち帰ろうとしていた挙動不審なあの日。

「ちょっと集めるのが好きみたいなの……」

 核心は突かなかったが収集癖を仄めかしたまどかの言葉。思い出すと、ありえないことじゃない。むしろあってもおかしくはない、と律の仮説は確信に変わった。

「ねぇ、曽根さんってさ、千愛希が使ってるもの欲しがったりとかした?」

「えぇ!?」

 唐突な質問に千愛希は驚愕する。思いもよらない律の言葉と今更睦月との過去を尋ねる行為に戸惑いを隠せない。

「食器とかタオルとか、そういうのがなくなったこととかあった?」

「な、ないよ! そんなことしないから!」

 慌てた口調でそう言う。と言われている周を哀れに思いながら、律は単なる収集癖とは違うか、と頭を悩ませる。

「んー……ねぇ、単刀直入に聞くけど変な性癖とかあった?」

「はぁ!?」

 こんなところで何を聞くのよ! と千愛希は辺りをキョロキョロと見渡して、もしかしたら電話の律の声が外に漏れているのではないかと焦る。

「いいから。大事なことだから」

「大事って……」

 ふざけている様子ではない律の声のトーンに千愛希も困惑しながらも少し記憶を辿る。
 性癖と言われて頭を過ぎったのは、容赦なく攻め立てた艶っぽい律の姿だった。

 あぁ、違う違う。あれも立派な性癖のような気がするけど……睦月ね、睦月。そうね……。

「性癖かはわからないけど、足は好きだったと思う」

「足?」

「うん。よく褒めてくれてくれたかな……」

「ああ、なるほどね。じゃあ今晩のおかずだ」

「え?」

「いや、こっちの話。曽根さんと会ったの何時頃?」

「えっと……10時くらいかな……」

 千愛希が事務所にたどり着いた時にふと見上げた時計を思い出す。なぜそんなことを聞くのかと思っている内に「わかった。今日はちょっと用事を思い出したから明日また連絡するね」と律から電話を切った。
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