憂い視線のその先に

雪村こはる

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最恐の男

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 獣のように鋭い眼光を放つ律。中性的な美しい見た目とは反して、その瞳だけは妙に男性らしさを纏っていた。
 睦月はじわっと背中に汗が滲むのを感じ、きゅっと下唇を噛んだ。

「ストッキングはどうなさったんですか?」

「え!?」

「昨日の今日なので、私もそこまで動画を確認できませんでしたが、およそ想像はついております。想像していることが正しければ、それも立派なセクシャルハラスメントですが……まあ、幸いにも彼女自身は気付いていませんし、本人が不快に思っているわけではない以上、責めようもありませんけどね」

「……」

「持ち帰って何に使用していようが、彼女に迷惑がかからなければそれもまだ目を瞑っていることもできましたが……さすがにあの動画はそのままにしておくわけにはいきません」

「……はい」

 全てお見通しだと言わんばかりの律に、睦月は小さくなって目を伏せた。100%睦月に非がある以上、言い訳も開き直りもできなかった。

「防犯カメラですから、管理会社の人間に見られないよう、その部分だけを削除したのならばまだわかります。ですが、それをあんなにも修正をかけて保存していたとなると、必然的に目的は別にあるのだと思ってしまいますよ」

「そうですね……」

「私も同じ男性として全く貴方の気持ちがわからないわけではありません。彼女に対して本気で好意を抱いているのなら、尚更。
 ですが、人として超えてはならない領域というものがあると思うんです。例えそれが目に見えないものであったとしても」

 律の言うことは正論過ぎて、ぐうの音もでなかった。
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