憂い視線のその先に

最恐の男

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「曽根さんには、様々な技術とアプリ制作のイロハを教えてもらったと言っていました。婚約が解消され傷付いていた中でも、貴方のことは職場仲間として、上司として尊敬できたから今まで割り切って接してこられたんじゃないでしょうか。
　今回の件は、そんな彼女の敬意を踏みにじるような行為であることを理解いただきたい」

「そう……ですね」

「彼女は、人間としての本質にしっかり向き合うことのできる女性です。彼女は確かに貴方との結婚よりも仕事を優先させたかもしれません。ですが、結婚をすると決めたのも彼女だった。優しい方ですが、全てに流されてしまうような人ではありません。しっかりと自分の意見をもった自立した人です」

「はい……」

「長い間交際されていた貴方なら、彼女の気持ちを考えてあげることは困難ではなかったはずです。私達よりもずっと」

「そうですね……」

　睦月はしっかりと説教を受けている自分が恥ずかしくてたまらなかった。こんなにも真っ当なことを面と向かって指摘されているのだ。それも年下に。元婚約者の現在の恋人に。
　情けないやら、不甲斐ないやらで自分自身を恨めしく思った。

「私達は、彼女を愛する者として彼女の気持ちを最優先させる義務があります。貴方の優れた技術は、元恋人を傷付けるためにあるわけではないと、既に世に出ている人気ゲームが証明しているわけですし」

　睦月の仕事に対する姿勢だけは認めているような物言いに、睦月は心なしか泣きそうにすらなる。
　飴と鞭を上手く使い分ける男だと脱帽した。

「念のため、確認していただいてもよろしいですか？」

　そう言って律はスマートフォンを取り出すと、千愛希の動画を再生させた。それは間違いなく睦月が保管していたものだった。本当にこの男がやってのけたのかと目を疑った。