憂い視線のその先に

雪村こはる

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糖度150%、スパイス多め

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 敏腕弁護士である律の父親、守屋慶吾けいごを翻弄するダリアが実は1番口が達者なことを律と周はよく知っている。

 ああ言えばこう言うはまさにダリアにもってこいの言葉であると律はいつも思う。律が仕事で言葉巧みに相手を打ち負かすことができるのも、幼い頃から父と母を見て育ったからだろうと思うところもあった。

「千愛希ちゃんの気持ちを無視するつもりはないんだけど、同居は嫌なのかしら? 律と2人がいい?」

「いや……その……」

 もう既に結婚前提の話になっているダリアに千愛希までもが戦意喪失していた。友人の母から彼氏の母となり、現在ダリアは将来の義母としての立場からものを言っているのだ。先程、まどかの上手い返しを見ていながら、自分はなんと言うのが正解なのかわからなかった。

「家族が賑やかいのは嫌いかしら?」

「い、いえ! うちは元々大家族なので、家が賑やかなのは慣れていますし……」

「そうだったわね。今、一人暮らしだと寂しいんじゃなぁい?」

「え!? あぁ、まぁ……たまにそんなこともあります」

 とても1人は気楽ですよと言える雰囲気ではなかった。1人が寂しいと思うことはたしかにあったし、泣いて律に縋ったこともあった。けれど、賑やかというより戦場のような実家から離れ、1人で考え事をしたい時も、仕事を持ち帰ってきた時も、誰にも邪魔されない空間があるというのは落ち着く部分も持ち合わせていた。

「千愛希ちゃんが嫌じゃないなら、お母さんはここに来てほしいって思ってるんだけど」

「あの……でも、皆さんの意見も一度聞いてからにした方がいいと思うのです。お父様もお祖母様も、ある日突然同居人が増えるというのは気を遣うかと思いますし……」

 千愛希の言葉に律はコクコクと首を数度縦に振った。以前よりも千愛希に会える回数も時間も増え、その度に甘い雰囲気に包まれる。それが堪らなく心地良いのだが、毎日一緒にいたらそれはそれで律も千愛希のことばかり気になって心が休まらない気がした。
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