憂い視線のその先に

糖度150%、スパイス多め

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　ネクタイを緩めながら慶吾は目を見開いた。

「同居？　結婚前に？」

「そう。いい提案だと思わない？　だって千愛希ちゃんてばあまりご飯食べてないって言うのよ？」

「彼女はまた細いからね。律の彼女っていうより奏の友達だって言われた方がしっくりくるよ」

「んもう、真剣に考えてよ。あの律がせっかく連れてきてくれた女の子なんだから」

「わかってるよ。きみのことだから早く結婚させたいんだろう？」

　慶吾は、なんでもお見通しとばかりに肩をすくめて柔らかく微笑んだ。律とも周とも似ていない渋めの顔は、大人の色気を漂わせる。

「だって、これを逃したらきっと結婚しないわよ？」

「だろうね。でも大丈夫だよ。律だって色々考えているだろうし、家に連れてくるほど大切な子をみすみす手放したりしないだろう」

「うーん……同居は？」

「もちろん、2人がそうしたいって言うなら反対はしないよ。大勢で暮らすのも楽しいだろうしね。奏も周も家を出て随分経つから寂しいんだろ？」

「そうね。律まで出ていっちゃったら寂しいわね……」

「でも新婚で同居なんてあの子が気を遣うんじゃないかな。家は安心できる場所であることが前提だと思うから、仕事が終わって帰ってきても気が休まらなければ意味がないと思うよ」

「それはうーん、そうなんだけど……うーん。お義母さんはどう思う？」

　慶吾から受け取ったシャツを腕に乗せながらそう尋ねると、ちょこんと座っていた義母が「りっちゃんのお嫁さんが一緒に住むって？　それは賑やかくなりそうだね」と優しく微笑んだ。

「お義母さんは嫌じゃない？」

「嫌じゃないよ。りっちゃんが家に残ってくれたら嬉しいね。でも、若い2人のことは2人で決めるのがいいね」

　さすが慶吾の母といったところか、意見は慶吾と同じようだった。ダリアはうーんと暫く考えて、「でも反対ってわけじゃないのよね？　それならそれで律達に確認しなきゃ！」と張り切っていた。

　つい先程の出来事に、慶吾は取り皿を受け取りながら苦笑を浮かべた。