憂い視線のその先に

雪村こはる

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糖度150%、スパイス多め

49

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 千愛希は箸の先を口に含んだまま、ぽっと頬を赤く染めた。せっかく落ち着いてきた熱がまたぶり返したようだった。
 雰囲気は最悪だったが、周に対して自分のことで怒ってくれたことが嬉しかった。なによりもまどかのいる前で自分は特別だと言ってくれたみたいでなんとも言えない感情が湧き上がった。

 今までの律だったら、かっこつけて恥ずかしがって千愛希のことをどれほど好きかだなんて決して悟られないようにしていた。それが余計にまどかに知られたくないのではないかと千愛希に思わせたが、結婚の意思も今後のことも、更に千愛希を傷付けたら許さないという言葉まで出てきた。
 家族の前で、まどかの前で千愛希の気持ちを優先させてくれたことが心を温かくさせてくれた。

「あ、ごめん……千愛希さん」

 周としては、単なる律との口論に過ぎなかったが、千愛希の前での発言は彼女を不安にさせることに繋がるとようやく気付いた。まずい、とばかりに顔を強ばらせて千愛希に視線を向けた。

「大丈夫……私は」

 周の言葉よりも庇ってくれた律の言葉の方が頭に残っていた。照れた表情を見せた千愛希に、律の胸もきゅんと痛んだ。
 そっと左手を伸ばして千愛希の頭を撫でると「千愛希はなにも心配しなくていいよ。俺が全部段取り組むから」そう言って柔らかく微笑んだ。
 普段、家族の前では祖母にしか見せないその笑顔に家族全員が言葉を失った。こくこくと何度か頷く千愛希。2人の織り成す雰囲気は、周とまどかとはまた違った甘さを漂わせていた。
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