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先生、お付き合いをしましょう!
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夕映はこの世の終わりのような絶望的な表情を浮かべた。夕映だってうまくいくとは思っていなかった。自分と旭が釣り合わないことなど最初からわかっていた。
出会った頃に高校生だった自分が恋愛対象になり得ないことも、主治医と患者という間柄では分が悪いことも。それでも諦めきれなかったからこそ行動に移したのだが、実際目の前で断られたら、もう2度と会えないよと言われているようだった。
「先生は、お付き合いされている方がいるんですか? 結婚はまだですよね」
「結婚はまだですね。お付き合いしている方もいません」
「好きな人がいますか」
「いますね」
そう言われれば心の中でミシっと軋んだ音がした。ハートが砕けるだなんて言うが、まさしく粉々に砕け散ってしまうほど心臓が激しく循環を速め、内側から夕映の体を叩き付けた。
好きな人がいるといった言葉に驚いたのは夕映だけではなかった。先程まで笑っていた看護師も目を見開いて旭の後頭部を見つめていた。夕映はチラリとそちらに視線をやり、ああ……この人も先生のこと好きだったんだろうなと思った。
「私が子供だからだめですか?」
「違いますよ」
「患者だからだめですか?」
「うーん……まあ、よろしくはないでしょうね」
患者と向き合うことに徹底している旭の言葉は、時に夕映を明るくさせたが本音を語られることがこれほど胸を痛めることになるとは思いもしなかった。
「でも私、先生のことが好きです」
「ありがとうございます。お付き合いはできませんが、気持ちだけもらっておきます」
そう優しい笑みを浮かべて言われたら、急に悲しくなった。普段は甘く、囁くような柔らかな声だったはず。それが途端に敬語に変わり、一線を引かれた気がした。
出会った頃に高校生だった自分が恋愛対象になり得ないことも、主治医と患者という間柄では分が悪いことも。それでも諦めきれなかったからこそ行動に移したのだが、実際目の前で断られたら、もう2度と会えないよと言われているようだった。
「先生は、お付き合いされている方がいるんですか? 結婚はまだですよね」
「結婚はまだですね。お付き合いしている方もいません」
「好きな人がいますか」
「いますね」
そう言われれば心の中でミシっと軋んだ音がした。ハートが砕けるだなんて言うが、まさしく粉々に砕け散ってしまうほど心臓が激しく循環を速め、内側から夕映の体を叩き付けた。
好きな人がいるといった言葉に驚いたのは夕映だけではなかった。先程まで笑っていた看護師も目を見開いて旭の後頭部を見つめていた。夕映はチラリとそちらに視線をやり、ああ……この人も先生のこと好きだったんだろうなと思った。
「私が子供だからだめですか?」
「違いますよ」
「患者だからだめですか?」
「うーん……まあ、よろしくはないでしょうね」
患者と向き合うことに徹底している旭の言葉は、時に夕映を明るくさせたが本音を語られることがこれほど胸を痛めることになるとは思いもしなかった。
「でも私、先生のことが好きです」
「ありがとうございます。お付き合いはできませんが、気持ちだけもらっておきます」
そう優しい笑みを浮かべて言われたら、急に悲しくなった。普段は甘く、囁くような柔らかな声だったはず。それが途端に敬語に変わり、一線を引かれた気がした。
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