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先生、お付き合いをしましょう!
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だから夕映は、意を決して告白をした。成人を過ぎて、検査に問題がなければ母親の付き添いはなくてもよくなった。
初めて1人で受診をした日、夕映は震える手を必死に押さえ、深呼吸を2つして「荻乃先生、好きです! 私と付き合って下さい!」と声を張った。
旭も後ろに控えていた看護師も、おそらく隣で診察を受けているであろう患者もここは病院だったか? と一瞬疑問を抱いた。
いつもと変わらない総合病院の診察室。いくつもの外来ブースが並び、幾人もの患者がドア1枚の隔たりの向こう側で自分の番を今か今かと待っている。
そんな状況にそぐわない愛の告白に、旭は目を丸くさせ、ゆっくりと瞬きをした。
「……ん?」
旭が聞き返したのも当然だった。その見た目の華やかさから、何人もの女性に同じ言葉を与えられてきた旭。1度や2度ではない。しかし、仕事中に、ましてや受診中の患者に告白されたのはこれが人生で初めてのことであった。
「先生のことが好きなんです。患者としてこうやって通ってるだけで満足だったんですが、冬には渕上先生に変わっちゃうし、もう会えなくなるから……。だから、私と付き合って下さい」
夕映は真剣だった。こんなにも心臓が大きく跳ね上がって、喉がカラカラに乾いて、じっとりと掌に汗が滲んだことなどない。
バセドウ病の症状に似てはいたが、気持ちとしては全く異なるものだった。
「えっと……気持ちはありがたいんだけどごめんなさい」
真面目な夕映に対して、真面目に断りを入れた旭。そのやり取りを見ていた30代前半と思われる、厚化粧の看護師がクスッと笑いをこぼした。肩を震わせ、ゲラゲラと笑ってしまわないよう必死に耐えていた。
初めて1人で受診をした日、夕映は震える手を必死に押さえ、深呼吸を2つして「荻乃先生、好きです! 私と付き合って下さい!」と声を張った。
旭も後ろに控えていた看護師も、おそらく隣で診察を受けているであろう患者もここは病院だったか? と一瞬疑問を抱いた。
いつもと変わらない総合病院の診察室。いくつもの外来ブースが並び、幾人もの患者がドア1枚の隔たりの向こう側で自分の番を今か今かと待っている。
そんな状況にそぐわない愛の告白に、旭は目を丸くさせ、ゆっくりと瞬きをした。
「……ん?」
旭が聞き返したのも当然だった。その見た目の華やかさから、何人もの女性に同じ言葉を与えられてきた旭。1度や2度ではない。しかし、仕事中に、ましてや受診中の患者に告白されたのはこれが人生で初めてのことであった。
「先生のことが好きなんです。患者としてこうやって通ってるだけで満足だったんですが、冬には渕上先生に変わっちゃうし、もう会えなくなるから……。だから、私と付き合って下さい」
夕映は真剣だった。こんなにも心臓が大きく跳ね上がって、喉がカラカラに乾いて、じっとりと掌に汗が滲んだことなどない。
バセドウ病の症状に似てはいたが、気持ちとしては全く異なるものだった。
「えっと……気持ちはありがたいんだけどごめんなさい」
真面目な夕映に対して、真面目に断りを入れた旭。そのやり取りを見ていた30代前半と思われる、厚化粧の看護師がクスッと笑いをこぼした。肩を震わせ、ゲラゲラと笑ってしまわないよう必死に耐えていた。
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