10 / 208
友人の悩み
【10】
しおりを挟む
15分程して、「そろそろ行かなきゃ」そう律くんが言い、脱いでいた上着を羽織ったところで玄関のドア開く音がした。
「ただいまー」
パタパタと足音がして、あまねくんが顔を出す。
「おかえり」
そう言ったのは律くんだった。
「まどかさん! お腹大丈夫!? あ、律! 仕事中だったのにごめん。俺、電話出れなくて」
一旦律くんを無視して私に駆け寄ったあまねくんは、私のお腹をさすりながらそう言った。
「いいよ。電話きた時にはただ事じゃないって思ったし」
「え!? そんな切羽詰まった状態だったの!? お腹痛かったの?」
「ああ、うん……。お腹痛いのは痛かったんだけど、それより流産したらどうしようかと思って……」
身を屈めて、私の視線を合わせるあまねくん。眉を下げて、心配した様子で私の頭を撫でる。
「でも、何もなくてよかったよ。子供、元気だって」
律くんはそう言って、バッグを手に持つ。
「よかった……。律、今から戻るの?」
「うん。クライアントが来るからね。まどかさんも安静にね」
「うん! 律くん、本当にありがとうね」
「どういたしまして」
律くんは素敵な微笑を残して帰っていった。本当に彼がいてくれてよかった。
「ごめんね、まどかさん。不安だったよね?」
「う、うん。でも、私こそ仕事中に電話なんかしちゃってごめんね。迷惑かけちゃった」
「迷惑なんかじゃないよ! 俺の子供でもあるんだから。でも、一昨日検診に行った時はなんでもなかったのに、何で急に出血したのかね?」
あまねくんはようやく私のお腹から手を離し、ダイニングの椅子へ腰かけた。
「妊娠初期の出血はよくあるんだって。とりあえず少量なら大丈夫そうなんだけど、量が増えたり、ずっと続くならまた受診するように言われたよ」
「そうなんだ……。何か、安定期に入るまで落ち着かないね。まだ今日月曜日だし、あと4日間もまどかさんから離れて仕事しなきゃなんて俺も不安だよ……」
「大丈夫だって。何ともないって言われたんだから。あと4日くらい、お家でおとなしくしてるよ」
「うん。家事も無理してやらなくていいからね。仕事から帰ってきてから俺がやるし」
「いいよ、いいよ。さすがにそれは……」
さすがにそこまではしてもらえない。安静にっていったって、トイレ以外の何十時間をずっとベッド上で過ごすなんて私にも無理な話だ。
それに、病院で絶対ベッド上安静でって指示されたわけでもないし……。
「無理しないでよ? 妊娠中に気を付けた方がいいこととか茉希さんに聞いてみたら? この時期どうやって過ごしてたかさ」
何も知らないあまねくんはさらっとそう言う。
たしかに、本来茉希に聞くならこういうことだよなぁ……。
電話してすぐにハイジさんの話を始めた私を思い出し、気持ちが沈む。
「ただいまー」
パタパタと足音がして、あまねくんが顔を出す。
「おかえり」
そう言ったのは律くんだった。
「まどかさん! お腹大丈夫!? あ、律! 仕事中だったのにごめん。俺、電話出れなくて」
一旦律くんを無視して私に駆け寄ったあまねくんは、私のお腹をさすりながらそう言った。
「いいよ。電話きた時にはただ事じゃないって思ったし」
「え!? そんな切羽詰まった状態だったの!? お腹痛かったの?」
「ああ、うん……。お腹痛いのは痛かったんだけど、それより流産したらどうしようかと思って……」
身を屈めて、私の視線を合わせるあまねくん。眉を下げて、心配した様子で私の頭を撫でる。
「でも、何もなくてよかったよ。子供、元気だって」
律くんはそう言って、バッグを手に持つ。
「よかった……。律、今から戻るの?」
「うん。クライアントが来るからね。まどかさんも安静にね」
「うん! 律くん、本当にありがとうね」
「どういたしまして」
律くんは素敵な微笑を残して帰っていった。本当に彼がいてくれてよかった。
「ごめんね、まどかさん。不安だったよね?」
「う、うん。でも、私こそ仕事中に電話なんかしちゃってごめんね。迷惑かけちゃった」
「迷惑なんかじゃないよ! 俺の子供でもあるんだから。でも、一昨日検診に行った時はなんでもなかったのに、何で急に出血したのかね?」
あまねくんはようやく私のお腹から手を離し、ダイニングの椅子へ腰かけた。
「妊娠初期の出血はよくあるんだって。とりあえず少量なら大丈夫そうなんだけど、量が増えたり、ずっと続くならまた受診するように言われたよ」
「そうなんだ……。何か、安定期に入るまで落ち着かないね。まだ今日月曜日だし、あと4日間もまどかさんから離れて仕事しなきゃなんて俺も不安だよ……」
「大丈夫だって。何ともないって言われたんだから。あと4日くらい、お家でおとなしくしてるよ」
「うん。家事も無理してやらなくていいからね。仕事から帰ってきてから俺がやるし」
「いいよ、いいよ。さすがにそれは……」
さすがにそこまではしてもらえない。安静にっていったって、トイレ以外の何十時間をずっとベッド上で過ごすなんて私にも無理な話だ。
それに、病院で絶対ベッド上安静でって指示されたわけでもないし……。
「無理しないでよ? 妊娠中に気を付けた方がいいこととか茉希さんに聞いてみたら? この時期どうやって過ごしてたかさ」
何も知らないあまねくんはさらっとそう言う。
たしかに、本来茉希に聞くならこういうことだよなぁ……。
電話してすぐにハイジさんの話を始めた私を思い出し、気持ちが沈む。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
専属秘書は極上CEOに囚われる
有允ひろみ
恋愛
手痛い失恋をきっかけに勤めていた会社を辞めた佳乃。彼女は、すべてをリセットするために訪れた南国の島で、名も知らぬ相手と熱く濃密な一夜を経験する。しかし、どれほど強く惹かれ合っていても、行きずりの恋に未来などない――。佳乃は翌朝、黙って彼の前から姿を消した。それから五年、新たな会社で社長秘書として働く佳乃の前に、代表取締役CEOとしてあの夜の彼・敦彦が現れて!? 「今度こそ、絶対に逃さない」戸惑い距離を取ろうとする佳乃を色気たっぷりに追い詰め、彼は忘れたはずの恋心を強引に暴き出し……。執着系イケメンと生真面目OLの、過去からはじまる怒涛の溺愛ラブストーリー!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる