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友人の悩み
【23】
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「はっきり言ってくれてありがとう」
私がそう言えば「当たり前でしょ? でも、まどかさんが1人の時にまたくると困るから、暫く実家にでも行く?」と言った。
現在建築中の家は、今月中には完成予定だ。それでもあと数週間このマンションに住み続けるのは少し怖いような気がした。
「そうしようかな……。何か、引越ばかりしてるね」
ふっと笑って言えば、「ね。望まない引っ越しばかりね。でも、家が完成したら今度こそ2人だけのお家だよ。あ、3人か」そうあまねくんは私のお腹を撫でながら言った。
家を建てたらもう引っ越しはできない。今までの経験から、他人に住所を知られないよう、気をつけて生活をしようと思った。
「さーて、ご飯食べよう、ご飯」
うーんと伸びをするあまねくんの後に続き、私達は夕食にした。
あまねくんがお風呂に入っている間に、私は伊織くんに返信をした。連絡は普通にしていいからってあまねくんが言ってたし。
彼が何を考えているかわからないけれど、奏ちゃんの仕事に関わっている以上、蔑ろにできない。
〔友達としてならいいけど、奏ちゃんに酷いことするのはやめてほしい。大切な妹なの。何かしたら許せないよ〕
苛立ちもあり、そう送った。直ぐに返信があった。
〔そんなに怒らないで下さい。まどかさんと会えて嬉しくて、また前みたいに少しお話ししたかっただけなんです。奏ちゃんは大切な仕事仲間なので、酷い扱いをするつもりはありません。誤解させてすみませんでした〕
〔お願いね。約束守ってね〕
〔俺もあなたに嫌われたくないので、ちゃんと約束は守ります〕
その文章を読んで、深い溜め息をついた。嫌われたくないのでって、既にちょっと嫌いだよ。
心の中でそう呟く。
そのまま返信はせず、その日は眠りについた。
翌朝目覚めると、私は朝食の準備に取りかかった。魚を焼いている内にスマホを開くと、伊織くんからメッセージが届いていた。
〔おはようございます。今日は東京に戻ります。打ち合わせをして、夜は俳優の中西賢人と食事です〕
中西賢人? 知らないなぁなんて思いながらインターネットで検索すると、今話題の若手俳優だった。ドラマやバラエティーで引っ張りだこのイケメンだ。
「ふーん。今、こういう子が人気なんだ」
「何が?」
「わぁー!」
画面に集中していた私は、あまねくんが起きてきたことに気付かなかった。
「……朝から男の裸見て、何してんの?」
たまたま一覧で出てきた画像を順番に見ていたのが上半身裸の写真だったのだ。何もいやらしい意味で見ていたわけではない。
「ち、違うよ! 昨日言った伊織くんが、今日中西賢人って俳優さんと食事だって言ってたから、どんな人なのかなぁって思って検索してたんだよ!」
「へぇ。でも、裸じゃなくてよくない?」
「だ、だ、だから! たまたま開いてたのが裸だっただけで……」
「本当?」
「本当!」
「男の裸に飢えてるなら、俺いつでも脱ぐよ? そんな貧相な体より、俺の方がよくない?」
そう言ってその場でスウェットを脱ぎ捨てるあまねくん。しっかりした胸筋に、割れた腹筋。ボクサーパンツの上から腹直筋が顔を出している。
子供ができてから、こんなにまじまじとあまねくんの裸をみたことなどなかった。
久しぶりにみたしっかりと鍛えられた裸体に、顔を赤らめずにはいられない。
冷蔵庫横の壁まで追い詰められ、頭の横にあまねくんの腕が置かれる。首から鎖骨までのラインがとても綺麗で、私の頬を撫でる綺麗な指も視線に入る。
「触りたくなったらいつでも言ってよ? 俺の体はまどかさんのものだよ?」
「わ、わかった、わかったから服着て!」
「んー? ドキドキする?」
「……ドキドキする」
熱くなった顔を背ければ、顎を固定されて、唇を奪われた。2、3度啄むようにキスをされ、ヌルッと熱い舌が侵入してくる。
なんか、こういうの久しぶりかも……。
胸の鼓動がドクドクと激しく高鳴って、胸の前で手をぎゅっと握りしめた。
私がそう言えば「当たり前でしょ? でも、まどかさんが1人の時にまたくると困るから、暫く実家にでも行く?」と言った。
現在建築中の家は、今月中には完成予定だ。それでもあと数週間このマンションに住み続けるのは少し怖いような気がした。
「そうしようかな……。何か、引越ばかりしてるね」
ふっと笑って言えば、「ね。望まない引っ越しばかりね。でも、家が完成したら今度こそ2人だけのお家だよ。あ、3人か」そうあまねくんは私のお腹を撫でながら言った。
家を建てたらもう引っ越しはできない。今までの経験から、他人に住所を知られないよう、気をつけて生活をしようと思った。
「さーて、ご飯食べよう、ご飯」
うーんと伸びをするあまねくんの後に続き、私達は夕食にした。
あまねくんがお風呂に入っている間に、私は伊織くんに返信をした。連絡は普通にしていいからってあまねくんが言ってたし。
彼が何を考えているかわからないけれど、奏ちゃんの仕事に関わっている以上、蔑ろにできない。
〔友達としてならいいけど、奏ちゃんに酷いことするのはやめてほしい。大切な妹なの。何かしたら許せないよ〕
苛立ちもあり、そう送った。直ぐに返信があった。
〔そんなに怒らないで下さい。まどかさんと会えて嬉しくて、また前みたいに少しお話ししたかっただけなんです。奏ちゃんは大切な仕事仲間なので、酷い扱いをするつもりはありません。誤解させてすみませんでした〕
〔お願いね。約束守ってね〕
〔俺もあなたに嫌われたくないので、ちゃんと約束は守ります〕
その文章を読んで、深い溜め息をついた。嫌われたくないのでって、既にちょっと嫌いだよ。
心の中でそう呟く。
そのまま返信はせず、その日は眠りについた。
翌朝目覚めると、私は朝食の準備に取りかかった。魚を焼いている内にスマホを開くと、伊織くんからメッセージが届いていた。
〔おはようございます。今日は東京に戻ります。打ち合わせをして、夜は俳優の中西賢人と食事です〕
中西賢人? 知らないなぁなんて思いながらインターネットで検索すると、今話題の若手俳優だった。ドラマやバラエティーで引っ張りだこのイケメンだ。
「ふーん。今、こういう子が人気なんだ」
「何が?」
「わぁー!」
画面に集中していた私は、あまねくんが起きてきたことに気付かなかった。
「……朝から男の裸見て、何してんの?」
たまたま一覧で出てきた画像を順番に見ていたのが上半身裸の写真だったのだ。何もいやらしい意味で見ていたわけではない。
「ち、違うよ! 昨日言った伊織くんが、今日中西賢人って俳優さんと食事だって言ってたから、どんな人なのかなぁって思って検索してたんだよ!」
「へぇ。でも、裸じゃなくてよくない?」
「だ、だ、だから! たまたま開いてたのが裸だっただけで……」
「本当?」
「本当!」
「男の裸に飢えてるなら、俺いつでも脱ぐよ? そんな貧相な体より、俺の方がよくない?」
そう言ってその場でスウェットを脱ぎ捨てるあまねくん。しっかりした胸筋に、割れた腹筋。ボクサーパンツの上から腹直筋が顔を出している。
子供ができてから、こんなにまじまじとあまねくんの裸をみたことなどなかった。
久しぶりにみたしっかりと鍛えられた裸体に、顔を赤らめずにはいられない。
冷蔵庫横の壁まで追い詰められ、頭の横にあまねくんの腕が置かれる。首から鎖骨までのラインがとても綺麗で、私の頬を撫でる綺麗な指も視線に入る。
「触りたくなったらいつでも言ってよ? 俺の体はまどかさんのものだよ?」
「わ、わかった、わかったから服着て!」
「んー? ドキドキする?」
「……ドキドキする」
熱くなった顔を背ければ、顎を固定されて、唇を奪われた。2、3度啄むようにキスをされ、ヌルッと熱い舌が侵入してくる。
なんか、こういうの久しぶりかも……。
胸の鼓動がドクドクと激しく高鳴って、胸の前で手をぎゅっと握りしめた。
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