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ファンクラブ
【3】
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「新婚さんのお二人はデート?」
「ああ、はい。まあ……」
積極的に話しかける彼女に圧倒されながらもそう答えるあまねくん。
押しの強い女性が苦手なイメージがあるが、こんなふうに人見知りもなくさらりとパーソナルスペースに踏み込んでくる辺り、ハイジさんと似たようなものを感じる。
意外なのは律くんだ。彼は、もっとこう小さくて可愛らしくて、まるで陽菜ちゃんのような女の子を好むと勝手に思い込んでいた。彼女の性格の歪みはさて置き、だ。
そんな律くんの向かいに座るのは正統派の美人。律くんは、美人好きだったのね……。
「千愛希、食べ終わったならもう行くよ」
律くんはばつが悪そうに、頬杖をついて視線を外している。きっとこんなところを見られて恥ずかしいんだなぁと思えば、自然に笑みが溢れた。
「えー! せっかく弟くんに会えたのに?」
「2人の邪魔になるから」
「そうだけど……」
名残惜しいといった彼女の声に、少し胸が痛む。あまねくんは、私の旦那さんなのに……。
こんな些細なことでも嫉妬するなんて、私は嫌な女だ。
そうは思うけれど、こんなに綺麗な子なら余計にあまりあまねくんと話して欲しくはない。
「俺らも2人の邪魔になると困るんで。……てか、何か誰かに似てるような気がするんだよな。やっぱり会ったことあるのかな?」
一旦会話は終わりそうだったのに、あまねくんがそんなことを言ったために、全員が首を捻ることになった。
ただ、律くんだけは何となく、気まずそうにコーヒーカップを口に運ぶ。
何だろう……。何となく今日の律くん変なんだよなぁ……。そわそわしているというか、落ち着かないというか。んー、一緒か?
私も首を傾げて次の言葉を待っていると、「あ……そうか、まどかさんだ……」とボソッと呟くあまねくん。
「え……?」
ひょんなことから私の名前が登場して、ぴくんと体が反応する。そして、私の向かい側でも、あまねくんと千愛希と呼ばれていた女性を挟んでびくりと肩を持ち上げた。
何だ、何だ?
よくわからずにいると、「まどかさんに似てるんだ」そんなことを言い始めた。
私に? 似てる?
そう言われると気になる。さっき一瞬見えた時にはとても綺麗な子だと思ったけれど、似てると言われたらほんの少し嬉しいような気がした。
「髪の感じとか……化粧なのかな? よく似て……」
「まどかさんって、一まどかさん!?」
あまねくんがまだ喋っている途中で、彼女は腰を上げて飛び付くかのように声のトーンも上げた。
「え? ああ、はい……」
何だ、何だ……私のフルネームまで出てきたぞなんて思っていたら、「そうなの! 私、昔一まどかが大好きで、服装とかメイクとかよく真似してたの! いや、今でもまあ、好きなんだけど、最近はもうテレビ出ないし、昔の映像しかないから時々引っ張り出して見るくらいなんだけど……って、ごめん! 何か興奮しちゃって……て、一まどかさん知ってるの?」と捲し立てるかのように話した後、急に静かになった。
彼女以外の私達3人は、一瞬動きを止める。
ん? 私のことを好きだったと言ってくれたのかな?
私が理解するよりも先にあまねくんが「まどかさんのファンだったってことですか?」と聞いた。
「そうそう! あれからもう10年近く経ってるけど、今見ても本当綺麗なんだよね! あんなに美人で介護士さんなんだよ!? おじいちゃん達には刺激が強すぎるんじゃないかっていつも思ってたんだけど……」
いやいや、そんなことないのよ。仕事はすっぴんに眼鏡姿でしてましたから。
そう心の中で呟いてると、あまねくんは面白がってか「へぇ。それで、今でも真似してるんですか?」なんて言っている。
「ま、真似っていうか、参考って言ってよ! 私は、仕事上あまり派手なメイクができなくてね、昔まどかちゃんがお仕事中でもできるメイクっていうのをSNSで配信してたの!
それがナチュラルで凄く綺麗で、まあまどかちゃんがもともと綺麗なのもあるんだけど、それでそれからずっと参考にさせてもらってるっていうか……」
そんなこともしていたような気もする……。まあ、私はそれでも専らすっぴんだったけど。
でも、女の子からこんな話を聞けるなんて嬉しいなぁなんて胸が熱くなる。ほんの少しの期間だったけど、テレビ出てよかったかも。そう思えた。
「ああ、はい。まあ……」
積極的に話しかける彼女に圧倒されながらもそう答えるあまねくん。
押しの強い女性が苦手なイメージがあるが、こんなふうに人見知りもなくさらりとパーソナルスペースに踏み込んでくる辺り、ハイジさんと似たようなものを感じる。
意外なのは律くんだ。彼は、もっとこう小さくて可愛らしくて、まるで陽菜ちゃんのような女の子を好むと勝手に思い込んでいた。彼女の性格の歪みはさて置き、だ。
そんな律くんの向かいに座るのは正統派の美人。律くんは、美人好きだったのね……。
「千愛希、食べ終わったならもう行くよ」
律くんはばつが悪そうに、頬杖をついて視線を外している。きっとこんなところを見られて恥ずかしいんだなぁと思えば、自然に笑みが溢れた。
「えー! せっかく弟くんに会えたのに?」
「2人の邪魔になるから」
「そうだけど……」
名残惜しいといった彼女の声に、少し胸が痛む。あまねくんは、私の旦那さんなのに……。
こんな些細なことでも嫉妬するなんて、私は嫌な女だ。
そうは思うけれど、こんなに綺麗な子なら余計にあまりあまねくんと話して欲しくはない。
「俺らも2人の邪魔になると困るんで。……てか、何か誰かに似てるような気がするんだよな。やっぱり会ったことあるのかな?」
一旦会話は終わりそうだったのに、あまねくんがそんなことを言ったために、全員が首を捻ることになった。
ただ、律くんだけは何となく、気まずそうにコーヒーカップを口に運ぶ。
何だろう……。何となく今日の律くん変なんだよなぁ……。そわそわしているというか、落ち着かないというか。んー、一緒か?
私も首を傾げて次の言葉を待っていると、「あ……そうか、まどかさんだ……」とボソッと呟くあまねくん。
「え……?」
ひょんなことから私の名前が登場して、ぴくんと体が反応する。そして、私の向かい側でも、あまねくんと千愛希と呼ばれていた女性を挟んでびくりと肩を持ち上げた。
何だ、何だ?
よくわからずにいると、「まどかさんに似てるんだ」そんなことを言い始めた。
私に? 似てる?
そう言われると気になる。さっき一瞬見えた時にはとても綺麗な子だと思ったけれど、似てると言われたらほんの少し嬉しいような気がした。
「髪の感じとか……化粧なのかな? よく似て……」
「まどかさんって、一まどかさん!?」
あまねくんがまだ喋っている途中で、彼女は腰を上げて飛び付くかのように声のトーンも上げた。
「え? ああ、はい……」
何だ、何だ……私のフルネームまで出てきたぞなんて思っていたら、「そうなの! 私、昔一まどかが大好きで、服装とかメイクとかよく真似してたの! いや、今でもまあ、好きなんだけど、最近はもうテレビ出ないし、昔の映像しかないから時々引っ張り出して見るくらいなんだけど……って、ごめん! 何か興奮しちゃって……て、一まどかさん知ってるの?」と捲し立てるかのように話した後、急に静かになった。
彼女以外の私達3人は、一瞬動きを止める。
ん? 私のことを好きだったと言ってくれたのかな?
私が理解するよりも先にあまねくんが「まどかさんのファンだったってことですか?」と聞いた。
「そうそう! あれからもう10年近く経ってるけど、今見ても本当綺麗なんだよね! あんなに美人で介護士さんなんだよ!? おじいちゃん達には刺激が強すぎるんじゃないかっていつも思ってたんだけど……」
いやいや、そんなことないのよ。仕事はすっぴんに眼鏡姿でしてましたから。
そう心の中で呟いてると、あまねくんは面白がってか「へぇ。それで、今でも真似してるんですか?」なんて言っている。
「ま、真似っていうか、参考って言ってよ! 私は、仕事上あまり派手なメイクができなくてね、昔まどかちゃんがお仕事中でもできるメイクっていうのをSNSで配信してたの!
それがナチュラルで凄く綺麗で、まあまどかちゃんがもともと綺麗なのもあるんだけど、それでそれからずっと参考にさせてもらってるっていうか……」
そんなこともしていたような気もする……。まあ、私はそれでも専らすっぴんだったけど。
でも、女の子からこんな話を聞けるなんて嬉しいなぁなんて胸が熱くなる。ほんの少しの期間だったけど、テレビ出てよかったかも。そう思えた。
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