99 / 208
効果覿面
【17】
しおりを挟む
私達は指定された店に入り、驚愕する。高級そうなお店だ。伊織くんの名前を出すと、すぐに案内された。
「何か、凄いお店だね……」
私が恐縮してあまねくんに小声で話しかけると「ね。金持ちの道楽って感じ」と嫌味を言っている。
本当に本人に悪態ついたりしないだろうかと今から気が気じゃない。
個室に通され、中を覗くと暖色のライトで照らされた広い個室だった。高そうなシャンデリアが高い天井から下がっていて、その下でいくつものシャンパンが置かれている。
「こんばんは」
声をかけると伊織くんが私に気付き、顔を上げた。
「まどかさん! お久しぶりです。今日は遠くまでありがとうございます」
笑顔で私達の元に駆け寄る伊織くん。
「初めまして。いつも妻がお世話になっております。夫の守屋周と申します。本日は押し掛けてしまって申し訳ありません」
私が答えるよりも先に、あまねくんが私と伊織くんの間に入って言った。
高身長の周くんを見上げるようにして伊織くんが視線を上に向ける。
「……初めまして。間宮伊織と申します。こちらこそ、すみません。奥様をこんなところにまで呼び出してしまって。ご迷惑ではなかったですか?」
「とんでもない。妹がお世話になったそうで、一度お会いしてお礼をしたいと思っていたところです」
お互いによそ行きの顔をしている様子の2人。伊織くんの背後に能の面、あまねくんの背後に般若の面が見えるのは気のせいだろうか……。
初対面でこの空気。大丈夫かな……。
「奏ちゃんのお兄さんになるんですよね? まどかさんの話を聞いた時には驚きましたよ」
「ええ。妹も姉ができて嬉しいようで、妻にはすっかりなついてくれていますよ」
「仲が良さそうで羨ましいです。あ、遅くなりましたがよければどうぞ」
そう言って伊織くんはあまねくんに名刺を渡した。プライベートでも持ち歩いているのだから油断ならない。そう思っていたら「頂戴致します。よろしくお願いします」そう言ってあまねくんも名刺を渡していた。
プライベートでも名刺のやりとりって普通なの!?
職種柄、今まで名刺を持ったことなどない私は2人のやり取りに唖然する。
「何か、凄いお店だね……」
私が恐縮してあまねくんに小声で話しかけると「ね。金持ちの道楽って感じ」と嫌味を言っている。
本当に本人に悪態ついたりしないだろうかと今から気が気じゃない。
個室に通され、中を覗くと暖色のライトで照らされた広い個室だった。高そうなシャンデリアが高い天井から下がっていて、その下でいくつものシャンパンが置かれている。
「こんばんは」
声をかけると伊織くんが私に気付き、顔を上げた。
「まどかさん! お久しぶりです。今日は遠くまでありがとうございます」
笑顔で私達の元に駆け寄る伊織くん。
「初めまして。いつも妻がお世話になっております。夫の守屋周と申します。本日は押し掛けてしまって申し訳ありません」
私が答えるよりも先に、あまねくんが私と伊織くんの間に入って言った。
高身長の周くんを見上げるようにして伊織くんが視線を上に向ける。
「……初めまして。間宮伊織と申します。こちらこそ、すみません。奥様をこんなところにまで呼び出してしまって。ご迷惑ではなかったですか?」
「とんでもない。妹がお世話になったそうで、一度お会いしてお礼をしたいと思っていたところです」
お互いによそ行きの顔をしている様子の2人。伊織くんの背後に能の面、あまねくんの背後に般若の面が見えるのは気のせいだろうか……。
初対面でこの空気。大丈夫かな……。
「奏ちゃんのお兄さんになるんですよね? まどかさんの話を聞いた時には驚きましたよ」
「ええ。妹も姉ができて嬉しいようで、妻にはすっかりなついてくれていますよ」
「仲が良さそうで羨ましいです。あ、遅くなりましたがよければどうぞ」
そう言って伊織くんはあまねくんに名刺を渡した。プライベートでも持ち歩いているのだから油断ならない。そう思っていたら「頂戴致します。よろしくお願いします」そう言ってあまねくんも名刺を渡していた。
プライベートでも名刺のやりとりって普通なの!?
職種柄、今まで名刺を持ったことなどない私は2人のやり取りに唖然する。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
専属秘書は極上CEOに囚われる
有允ひろみ
恋愛
手痛い失恋をきっかけに勤めていた会社を辞めた佳乃。彼女は、すべてをリセットするために訪れた南国の島で、名も知らぬ相手と熱く濃密な一夜を経験する。しかし、どれほど強く惹かれ合っていても、行きずりの恋に未来などない――。佳乃は翌朝、黙って彼の前から姿を消した。それから五年、新たな会社で社長秘書として働く佳乃の前に、代表取締役CEOとしてあの夜の彼・敦彦が現れて!? 「今度こそ、絶対に逃さない」戸惑い距離を取ろうとする佳乃を色気たっぷりに追い詰め、彼は忘れたはずの恋心を強引に暴き出し……。執着系イケメンと生真面目OLの、過去からはじまる怒涛の溺愛ラブストーリー!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる