109 / 208
効果覿面
【27】
しおりを挟む
あまねくんに背中を預けながら、夜景を見つめる。ほんの少しあまねくんからお酒の匂いがして、私まで酔いそうになる。
「こんなにいいホテル、凄く高いでしょ? 結婚式も挙げたばっかりなのに……」
2人の結婚式だというのに、式はまどかさんとご両親のために挙げたようなものだからと金銭的な管理は全てあまねくんが行ってくれた。
一緒に祝儀を確認したりはしたが、実際のところ式にいくらかかったのかは知らされていない。
富士山が綺麗に見える会場で式を挙げたし、それなりに費用はかかっているはず。
仕事も辞めてしまった私は、貯金の中から月々かかる保険料やスマホ代なんかを支払うだけで精一杯だ。そのため、家のローンも生活費も何もかもあまねくん任せ。
それなのにまたこんなにいいホテルまで用意してもらっては申し訳ない気持ちも募る。
「んー、いいんだよ。結婚式もさほとんど祝儀で賄えたし」
「え? そんなに多かったっけ?」
「父さんと律からね」
「え!?」
初耳だった。ただでさえ口うるさいお父さんのせいでしっかり結納までやって、結納金までいただいてしまったのに……。
あんなに盛大に守屋家に歓迎された上に、相当なご祝儀までいただいてしまっては申し訳ない。
「あんなに大切にされている娘さんをお嫁にもらうなんて、ありがたいことなんだからって200万くらいくれたよ」
「に、200万!? ちょ、わかってたらお礼言ったのに! てか、お礼だけじゃ足りないし!」
「いいの、いいの。律も家にばっかとじ込もってないでたまにはどっか連れてってやんなよって言ってその4分の1くらいくれたし」
「はぁ!?」
「律だって普段は一人で過ごしてること多いくせにね。自分も千愛希さん連れて遊びにいけばいいのに」
「や、ちょっとあまねくん……いくらなんでももらい過ぎでは? 結婚式の資金は貯めてあったからってご祝儀とは別にいただいてしまったよね?」
「まあね。でもそんなことないと思うよ。2人の好意だからいいんだって。俺だって律と奏の時にはそれなりに包まなきゃだし」
そう言ってあまねくんは笑っている。兄弟同士でこんなにも大金が動くなんて……仲の良い証拠だけど。
「……結婚して大丈夫だったのかな? なんか、迷惑をかけたみたいで申し訳ないな……」
「何言ってるの、まどかさん。俺ね、ずっと結婚するならまどかさんとって思ってたんだよ。律はそのことよく知ってるし、まどかさん以外の女の人は両親に紹介したこともないんだ。だから、両親も律も凄く喜んでくれてるんだよ。もちろん、奏もね。
まどかさん以外となら結婚しないって言い張ってたから、両親には心配させたと思うんだ。でも、本当に好きな人と結婚できたから……」
そう言ってあまねくんは、私に頬擦りする。確かにダリアさんも、一生独身なんじゃないかと思ったなんて言って笑っていた。
「じゃあ、皆喜んでくれてる?」
「当たり前じゃん。うちの家族は皆まどかさん大好きなんだから。奏は東京行っちゃってるしさ、すぐに来れる距離に俺達がいるのってきっと貴重なんだよ。それに、初孫だしね」
あまねくんは私のお腹をそっと撫でる。お姉ちゃんの子供を見て泣いていたお父さん。あの顔を思い出すと、お義父さんとダリアさんにも早く初孫を見せてあげたい気持ちになった。
「初孫、早く抱っこさせてあげたいね」
「でしょ? でも、俺が先だよ。パパだもん」
「そうだね。きっとこんなに優しいパパなら赤ちゃんも嬉しいね」
「そうかな? 赤ちゃんはこんなに綺麗なママがいることの方が嬉しいと思うよ」
「えー。そんなこと言うのあまねくんだけだよ」
「それならこんなに心配しない。祝福してくれる人は多いけど、敵も多いんだから。こうやって現実逃避するのもいいでしょ?」
「そうだね。綺麗で、オシャレで、普段じゃ味わえない高級感だもんね」
「ね? だから、お金のことも、父さん達のことも気にしなくていいの。まどかさんは、ただこの場を楽しんで。それで、俺にいっぱい幸せちょうだい」
そう言って頬に軽くキスをされた。見上げれば、美しく優しい笑顔の旦那様。先程の怖い顔なんて微塵も感じさせない、甘い甘い雰囲気。この人は、どこまでも私に甘くて優しい。
こんなに甘やかされていいのだろうかと時々不安になる程。しかし、まどかさんの幸せそうな顔を見てる時が俺の幸せ。なんて嬉しい事を言ってくれるので、今夜はとことんこの別世界のような空間をあまねくんと満喫することにした。
「こんなにいいホテル、凄く高いでしょ? 結婚式も挙げたばっかりなのに……」
2人の結婚式だというのに、式はまどかさんとご両親のために挙げたようなものだからと金銭的な管理は全てあまねくんが行ってくれた。
一緒に祝儀を確認したりはしたが、実際のところ式にいくらかかったのかは知らされていない。
富士山が綺麗に見える会場で式を挙げたし、それなりに費用はかかっているはず。
仕事も辞めてしまった私は、貯金の中から月々かかる保険料やスマホ代なんかを支払うだけで精一杯だ。そのため、家のローンも生活費も何もかもあまねくん任せ。
それなのにまたこんなにいいホテルまで用意してもらっては申し訳ない気持ちも募る。
「んー、いいんだよ。結婚式もさほとんど祝儀で賄えたし」
「え? そんなに多かったっけ?」
「父さんと律からね」
「え!?」
初耳だった。ただでさえ口うるさいお父さんのせいでしっかり結納までやって、結納金までいただいてしまったのに……。
あんなに盛大に守屋家に歓迎された上に、相当なご祝儀までいただいてしまっては申し訳ない。
「あんなに大切にされている娘さんをお嫁にもらうなんて、ありがたいことなんだからって200万くらいくれたよ」
「に、200万!? ちょ、わかってたらお礼言ったのに! てか、お礼だけじゃ足りないし!」
「いいの、いいの。律も家にばっかとじ込もってないでたまにはどっか連れてってやんなよって言ってその4分の1くらいくれたし」
「はぁ!?」
「律だって普段は一人で過ごしてること多いくせにね。自分も千愛希さん連れて遊びにいけばいいのに」
「や、ちょっとあまねくん……いくらなんでももらい過ぎでは? 結婚式の資金は貯めてあったからってご祝儀とは別にいただいてしまったよね?」
「まあね。でもそんなことないと思うよ。2人の好意だからいいんだって。俺だって律と奏の時にはそれなりに包まなきゃだし」
そう言ってあまねくんは笑っている。兄弟同士でこんなにも大金が動くなんて……仲の良い証拠だけど。
「……結婚して大丈夫だったのかな? なんか、迷惑をかけたみたいで申し訳ないな……」
「何言ってるの、まどかさん。俺ね、ずっと結婚するならまどかさんとって思ってたんだよ。律はそのことよく知ってるし、まどかさん以外の女の人は両親に紹介したこともないんだ。だから、両親も律も凄く喜んでくれてるんだよ。もちろん、奏もね。
まどかさん以外となら結婚しないって言い張ってたから、両親には心配させたと思うんだ。でも、本当に好きな人と結婚できたから……」
そう言ってあまねくんは、私に頬擦りする。確かにダリアさんも、一生独身なんじゃないかと思ったなんて言って笑っていた。
「じゃあ、皆喜んでくれてる?」
「当たり前じゃん。うちの家族は皆まどかさん大好きなんだから。奏は東京行っちゃってるしさ、すぐに来れる距離に俺達がいるのってきっと貴重なんだよ。それに、初孫だしね」
あまねくんは私のお腹をそっと撫でる。お姉ちゃんの子供を見て泣いていたお父さん。あの顔を思い出すと、お義父さんとダリアさんにも早く初孫を見せてあげたい気持ちになった。
「初孫、早く抱っこさせてあげたいね」
「でしょ? でも、俺が先だよ。パパだもん」
「そうだね。きっとこんなに優しいパパなら赤ちゃんも嬉しいね」
「そうかな? 赤ちゃんはこんなに綺麗なママがいることの方が嬉しいと思うよ」
「えー。そんなこと言うのあまねくんだけだよ」
「それならこんなに心配しない。祝福してくれる人は多いけど、敵も多いんだから。こうやって現実逃避するのもいいでしょ?」
「そうだね。綺麗で、オシャレで、普段じゃ味わえない高級感だもんね」
「ね? だから、お金のことも、父さん達のことも気にしなくていいの。まどかさんは、ただこの場を楽しんで。それで、俺にいっぱい幸せちょうだい」
そう言って頬に軽くキスをされた。見上げれば、美しく優しい笑顔の旦那様。先程の怖い顔なんて微塵も感じさせない、甘い甘い雰囲気。この人は、どこまでも私に甘くて優しい。
こんなに甘やかされていいのだろうかと時々不安になる程。しかし、まどかさんの幸せそうな顔を見てる時が俺の幸せ。なんて嬉しい事を言ってくれるので、今夜はとことんこの別世界のような空間をあまねくんと満喫することにした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
専属秘書は極上CEOに囚われる
有允ひろみ
恋愛
手痛い失恋をきっかけに勤めていた会社を辞めた佳乃。彼女は、すべてをリセットするために訪れた南国の島で、名も知らぬ相手と熱く濃密な一夜を経験する。しかし、どれほど強く惹かれ合っていても、行きずりの恋に未来などない――。佳乃は翌朝、黙って彼の前から姿を消した。それから五年、新たな会社で社長秘書として働く佳乃の前に、代表取締役CEOとしてあの夜の彼・敦彦が現れて!? 「今度こそ、絶対に逃さない」戸惑い距離を取ろうとする佳乃を色気たっぷりに追い詰め、彼は忘れたはずの恋心を強引に暴き出し……。執着系イケメンと生真面目OLの、過去からはじまる怒涛の溺愛ラブストーリー!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる