【R18】美人過ぎる○○は今日も旦那様からの寵愛を受ける

雪村こはる

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風雲児

【2】

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「でも、私は妹が欲しかったから今のままでいいなぁ」

 私がへらっと笑ってそう言うと、奏ちゃんは目を真ん丸くさせて「ああ、そう。……まあ、私も男兄弟ばっかりでうんざりしてたから今のままでいいけど」と言った。

「ああ、そう言えばさ、間宮さんがお義姉さんによろしくお伝え下さいって言ってたよ。知り合いなの?」

 奏ちゃんは思い付いたかのようにそう言う。不意に伊織くんの名前が聞かれてドキリと胸が跳ねた。
 奏ちゃんが、昔私がテレビ関係の仕事をしていたと話していたと彼が言っていたが、奏ちゃん側は何て聞かされているのかを知らずにいた。

「え? あ、うん。むかーしね、まだテレビの仕事をしていた頃。収録で会った事があるんだ」

「そうなの!? 昔、俺もお世話になったことがあってって言ってたから……」

「お世話って程じゃないんだよ! 向こうはまだバイトの子で、ちょっと話したことあるくらいなんだから!」

「何ムキになってんの。実は今回の仕事、ほとんど間宮さんが紹介してくれてさ」

 奏ちゃんは笑いながらそんなことを言う。

「え……? いつ?」

「んー、1週間くらい前かなぁ」

「い、1週間!?」

 私は身を乗り出して声を張り上げた。1週間前といったら、私が伊織くんの連絡先をブロックした後だ。てっきり奏ちゃんに嫌がらせをするものかと思っていたが、仕事が増えたと言うのはどういうことだろうか……。

「うるさいなぁ……。何かあったの?」

 奏ちゃんは、人差し指を耳の穴に突っ込んで顔をしかめている。私の声が余程うるさかったようだ。

「ご、ごめん……。いや、特に何もないんだけど……伊織くん、他に何か言ってた?」

「え!? 伊織くんとか呼び合う仲なの!?」

「な、仲っていうか、出会った頃は向こうもバイトの男の子だったし。今みたいな立場じゃなかったからね」

「ああ、そうか……でも不思議。間宮さんって私の中ではもうお偉いさんって感じだから」

「まあ……そうだよね。番組作ってる人だもんね。嫌なこととかされてない?」

「ん? 何でそんな事聞くの? 間宮さんいい人だよ」

「そ、そう……。特に意味はないんだけど、なんか仕事あげる変わりにご飯に誘われたりとかありそうだなあって思って」

「あー……ご飯くらいはあるよ。皆で一緒にだけど。間宮さん、私なんかよりも人気の女優とかと仲良いから私は特になにも」

「そ、そう……」

 近衛真緒美とかね……。私は顔がひきつりそうになるのを必死に抑えた。

「あ、でもよかったら今度はお義姉さんも一緒に食事でもどうかなって言ってたよ」

「は!? それはいつの話?」

「ん? 最近だよー。お義姉さんと仲良くていいねぇって。私のことも、俺にとっては妹みたいなものだから、仕事のことも任せてよって言ってくれたし」

「そ、それは……」

 多分、奏ちゃんが思ってる妹みたいなものとはかけ離れている気がする……。あの人、全然懲りてないし……。
 それどころか今度は奏ちゃんを使って誘いだそうとする始末。油断も隙もあったもんじゃない。
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