118 / 208
風雲児
【2】
しおりを挟む
「でも、私は妹が欲しかったから今のままでいいなぁ」
私がへらっと笑ってそう言うと、奏ちゃんは目を真ん丸くさせて「ああ、そう。……まあ、私も男兄弟ばっかりでうんざりしてたから今のままでいいけど」と言った。
「ああ、そう言えばさ、間宮さんがお義姉さんによろしくお伝え下さいって言ってたよ。知り合いなの?」
奏ちゃんは思い付いたかのようにそう言う。不意に伊織くんの名前が聞かれてドキリと胸が跳ねた。
奏ちゃんが、昔私がテレビ関係の仕事をしていたと話していたと彼が言っていたが、奏ちゃん側は何て聞かされているのかを知らずにいた。
「え? あ、うん。むかーしね、まだテレビの仕事をしていた頃。収録で会った事があるんだ」
「そうなの!? 昔、俺もお世話になったことがあってって言ってたから……」
「お世話って程じゃないんだよ! 向こうはまだバイトの子で、ちょっと話したことあるくらいなんだから!」
「何ムキになってんの。実は今回の仕事、ほとんど間宮さんが紹介してくれてさ」
奏ちゃんは笑いながらそんなことを言う。
「え……? いつ?」
「んー、1週間くらい前かなぁ」
「い、1週間!?」
私は身を乗り出して声を張り上げた。1週間前といったら、私が伊織くんの連絡先をブロックした後だ。てっきり奏ちゃんに嫌がらせをするものかと思っていたが、仕事が増えたと言うのはどういうことだろうか……。
「うるさいなぁ……。何かあったの?」
奏ちゃんは、人差し指を耳の穴に突っ込んで顔をしかめている。私の声が余程うるさかったようだ。
「ご、ごめん……。いや、特に何もないんだけど……伊織くん、他に何か言ってた?」
「え!? 伊織くんとか呼び合う仲なの!?」
「な、仲っていうか、出会った頃は向こうもバイトの男の子だったし。今みたいな立場じゃなかったからね」
「ああ、そうか……でも不思議。間宮さんって私の中ではもうお偉いさんって感じだから」
「まあ……そうだよね。番組作ってる人だもんね。嫌なこととかされてない?」
「ん? 何でそんな事聞くの? 間宮さんいい人だよ」
「そ、そう……。特に意味はないんだけど、なんか仕事あげる変わりにご飯に誘われたりとかありそうだなあって思って」
「あー……ご飯くらいはあるよ。皆で一緒にだけど。間宮さん、私なんかよりも人気の女優とかと仲良いから私は特になにも」
「そ、そう……」
近衛真緒美とかね……。私は顔がひきつりそうになるのを必死に抑えた。
「あ、でもよかったら今度はお義姉さんも一緒に食事でもどうかなって言ってたよ」
「は!? それはいつの話?」
「ん? 最近だよー。お義姉さんと仲良くていいねぇって。私のことも、俺にとっては妹みたいなものだから、仕事のことも任せてよって言ってくれたし」
「そ、それは……」
多分、奏ちゃんが思ってる妹みたいなものとはかけ離れている気がする……。あの人、全然懲りてないし……。
それどころか今度は奏ちゃんを使って誘いだそうとする始末。油断も隙もあったもんじゃない。
私がへらっと笑ってそう言うと、奏ちゃんは目を真ん丸くさせて「ああ、そう。……まあ、私も男兄弟ばっかりでうんざりしてたから今のままでいいけど」と言った。
「ああ、そう言えばさ、間宮さんがお義姉さんによろしくお伝え下さいって言ってたよ。知り合いなの?」
奏ちゃんは思い付いたかのようにそう言う。不意に伊織くんの名前が聞かれてドキリと胸が跳ねた。
奏ちゃんが、昔私がテレビ関係の仕事をしていたと話していたと彼が言っていたが、奏ちゃん側は何て聞かされているのかを知らずにいた。
「え? あ、うん。むかーしね、まだテレビの仕事をしていた頃。収録で会った事があるんだ」
「そうなの!? 昔、俺もお世話になったことがあってって言ってたから……」
「お世話って程じゃないんだよ! 向こうはまだバイトの子で、ちょっと話したことあるくらいなんだから!」
「何ムキになってんの。実は今回の仕事、ほとんど間宮さんが紹介してくれてさ」
奏ちゃんは笑いながらそんなことを言う。
「え……? いつ?」
「んー、1週間くらい前かなぁ」
「い、1週間!?」
私は身を乗り出して声を張り上げた。1週間前といったら、私が伊織くんの連絡先をブロックした後だ。てっきり奏ちゃんに嫌がらせをするものかと思っていたが、仕事が増えたと言うのはどういうことだろうか……。
「うるさいなぁ……。何かあったの?」
奏ちゃんは、人差し指を耳の穴に突っ込んで顔をしかめている。私の声が余程うるさかったようだ。
「ご、ごめん……。いや、特に何もないんだけど……伊織くん、他に何か言ってた?」
「え!? 伊織くんとか呼び合う仲なの!?」
「な、仲っていうか、出会った頃は向こうもバイトの男の子だったし。今みたいな立場じゃなかったからね」
「ああ、そうか……でも不思議。間宮さんって私の中ではもうお偉いさんって感じだから」
「まあ……そうだよね。番組作ってる人だもんね。嫌なこととかされてない?」
「ん? 何でそんな事聞くの? 間宮さんいい人だよ」
「そ、そう……。特に意味はないんだけど、なんか仕事あげる変わりにご飯に誘われたりとかありそうだなあって思って」
「あー……ご飯くらいはあるよ。皆で一緒にだけど。間宮さん、私なんかよりも人気の女優とかと仲良いから私は特になにも」
「そ、そう……」
近衛真緒美とかね……。私は顔がひきつりそうになるのを必死に抑えた。
「あ、でもよかったら今度はお義姉さんも一緒に食事でもどうかなって言ってたよ」
「は!? それはいつの話?」
「ん? 最近だよー。お義姉さんと仲良くていいねぇって。私のことも、俺にとっては妹みたいなものだから、仕事のことも任せてよって言ってくれたし」
「そ、それは……」
多分、奏ちゃんが思ってる妹みたいなものとはかけ離れている気がする……。あの人、全然懲りてないし……。
それどころか今度は奏ちゃんを使って誘いだそうとする始末。油断も隙もあったもんじゃない。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
専属秘書は極上CEOに囚われる
有允ひろみ
恋愛
手痛い失恋をきっかけに勤めていた会社を辞めた佳乃。彼女は、すべてをリセットするために訪れた南国の島で、名も知らぬ相手と熱く濃密な一夜を経験する。しかし、どれほど強く惹かれ合っていても、行きずりの恋に未来などない――。佳乃は翌朝、黙って彼の前から姿を消した。それから五年、新たな会社で社長秘書として働く佳乃の前に、代表取締役CEOとしてあの夜の彼・敦彦が現れて!? 「今度こそ、絶対に逃さない」戸惑い距離を取ろうとする佳乃を色気たっぷりに追い詰め、彼は忘れたはずの恋心を強引に暴き出し……。執着系イケメンと生真面目OLの、過去からはじまる怒涛の溺愛ラブストーリー!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる