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風雲児
【23】
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「忘れちゃったってこと?」
「どうだろうね。本当だか嘘だか知らんけん、まあそういう不思議なこともあるんじゃない? 麗夢がそういうこと言うかどうかはわからんけん」
「麗夢もう歩く?」
「歩くよ! 小走りくらいならするでね」
「えー……この前まで赤ちゃんだったじゃん」
「まあ、今でも赤ちゃんよ。だけんもう何でも食べるよ。すげぇ食うから」
「え……それは茉紀に似たんじゃない?」
茉紀は細いくせによく食べる。私も食べる方だとは思うが、それ以上に食べる。それでも全く太らないのだから得な体質だ。
「それは言えてるかも。まあ、その内また連れて遊びに行くよ」
茉紀がそう言ったタイミングで、店員がやってきて、刺身定食が運ばれた。
「おー、美味しそう」
他人が注文した食事はどうしてこうも美味しそうに見えるのだろうか。まあ、理由はそれだけではなく、生ものを控えていることもある。出産したら心置きなくお刺身が食べられる。そうわかっていても、目の前のお刺身が美味しそうに見えて仕方がない。
「あ……ごめん。あんた妊婦だっけね」
「今その話してたよね? いいよ。あと3ヶ月すれば食べれるし」
茉紀を恨めしく思うほど、大好物なわけではない。どちらかと言えば、お肉の方が好きだし。
「まあそうだね。だけん、離乳食完了すると同じもの食べたがるからさ、最初はあんまりうちも食卓に出さなかったよ」
「そうなの?」
「うん。光輝も3歳まではやめといた。アレルギー出ても嫌だしさ。アイツがくれたがるから止めるの必死だったけど」
なんて嫌そうな顔をする。茉紀がアイツと言えば旦那さん。
その内に私の煮込みうどんも運ばれてきて、扉は完全に閉められた。
店員がやってくることのない静かな空間ができると、茉紀は改めたように「色々心配かけて悪かったね。私、離婚することにしたわ」と言った。
「どうだろうね。本当だか嘘だか知らんけん、まあそういう不思議なこともあるんじゃない? 麗夢がそういうこと言うかどうかはわからんけん」
「麗夢もう歩く?」
「歩くよ! 小走りくらいならするでね」
「えー……この前まで赤ちゃんだったじゃん」
「まあ、今でも赤ちゃんよ。だけんもう何でも食べるよ。すげぇ食うから」
「え……それは茉紀に似たんじゃない?」
茉紀は細いくせによく食べる。私も食べる方だとは思うが、それ以上に食べる。それでも全く太らないのだから得な体質だ。
「それは言えてるかも。まあ、その内また連れて遊びに行くよ」
茉紀がそう言ったタイミングで、店員がやってきて、刺身定食が運ばれた。
「おー、美味しそう」
他人が注文した食事はどうしてこうも美味しそうに見えるのだろうか。まあ、理由はそれだけではなく、生ものを控えていることもある。出産したら心置きなくお刺身が食べられる。そうわかっていても、目の前のお刺身が美味しそうに見えて仕方がない。
「あ……ごめん。あんた妊婦だっけね」
「今その話してたよね? いいよ。あと3ヶ月すれば食べれるし」
茉紀を恨めしく思うほど、大好物なわけではない。どちらかと言えば、お肉の方が好きだし。
「まあそうだね。だけん、離乳食完了すると同じもの食べたがるからさ、最初はあんまりうちも食卓に出さなかったよ」
「そうなの?」
「うん。光輝も3歳まではやめといた。アレルギー出ても嫌だしさ。アイツがくれたがるから止めるの必死だったけど」
なんて嫌そうな顔をする。茉紀がアイツと言えば旦那さん。
その内に私の煮込みうどんも運ばれてきて、扉は完全に閉められた。
店員がやってくることのない静かな空間ができると、茉紀は改めたように「色々心配かけて悪かったね。私、離婚することにしたわ」と言った。
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