140 / 208
風雲児
【24】
しおりを挟む
「離婚!?」
思わぬ茉紀の言葉に私は大声で叫んだ。茉紀はぐっと眉を真ん中に寄せて「声がでかい」と言った。
「ご、ごめん……。まさかそんなことになってるとは思ってなくて……」
ハイジさんの話では、茉紀が旦那さんのことを大好きで子供達と離ればなれになっても踏ん切りがつかないなんていう状況だったはず。
その茉紀が離婚を決意するだなんて意外だった。
「そう? え? 普通2択じゃないだ?」
「だってあんた、旦那さんのこと大好きなんでしょ?」
「は? そんなことあるわけないじゃん。前から言ってんじゃん。次に子供できたらアイツの子じゃないって」
「……はあ? あれ本気だったの?」
「もちろん」
「じゃあ、麗夢は? 授かったってことはそれなりの営みをしたわけでしょ?」
「まあね。どうしても女の子が欲しかったから排卵日だけに的絞って的中だよ」
「え? すご……そんな簡単に子供できんの?」
私は、うどんをほぐしながら顔をしかめた。
「できる気したもん。そりゃ中には望んでもできない人もいるけんさ。私は望んでない時に光輝ができたんだよ? しかも別れるだ別れないだの話をしてる時」
「……そうだっけ?」
「そう。そん時もアイツの浮気が原因で別れる決意をしたわけ。そしたら子供いることわかってさ。1人で育てるの無理だから、認知だけして養育費ちょうだいって言ったら、向こうの親がそんな形だけのことさせられるわけないじゃないってさ」
「……聞いたことある」
「そうだよ。それで散々揉めて結局結婚しただよ」
「その間は浮気なかったの?」
「あったよ! これで3回目。今までは育児疲れとかもあってとても争う気にもなれなかったから泣く泣く許す形になったけんさ。もう今回ばかりは無理。アイツからも相手の女からも慰謝料もらうつもり」
「よく許したじゃん! 3回って……知らんかったよ。そんなことがあったなんて」
「許したっていうか、離婚の話は何度もあったけん、離婚は世間体が悪いからやめろって相手の親に言われたんだよね。女は一度嫁いだらどんなことがあっても主人についていくことですなんて言われてさ」
「は!? 何それ」
前々から思っていたけれど、茉紀の旦那さん側の家族は変わっている。私だったらきっと耐えられなかっただろう。
「少しばかりの気持ちだからって100万渡されてさ」
「ひゃ、100万!?」
「アイツは稼ぎないけど、実家は金あんだわ。だから私が嫁ぐのも反対だったわけ。まあ、私はそこそこ頭がよくて学歴はあったから? 渋々認めたってところ」
「おお、自分で言うね……」
「言うでしょ。だってアイツ、商社落ちて子会社の営業所にいったようなやつだよ? バンバン出世して稼ぐならまだしも、だらだら仕事してろくに稼ぎもしないくせに一丁前に浮気だけはするんだから」
「……あんたの旦那、モテるよね?」
「昔からね。顔はそんなによくないくせに調子だけはいいからさ。逆にあまねくらいのイケメンだったらこっちもしょうがないかなぁって思うけんさ、あの程度の男に浮気されてたかと思うと腹立たしくてしょんないよ!」
随分ご立腹だ。そりゃそうだろう。家事も育児もしないで給料も茉紀の方が上で、浮気までされて……。
「私だっていくらあまねくんがイケメンでも浮気されたら嫌だよ……」
「あんたんとこはないでしょ。あまねの方が惚れてんだから」
「そんだけ愛情感じる分、裏切られた時のショックが大きいと思うけど」
「まあね。って、あんたまだ新婚で何言ってるだ? 今日はね、あんたのノロケを聞きにきたわけじゃないだでね!」
そう言って箸の先を私に向けた。これは長くなりそうだ。そんなに鬱憤が溜まっているならもっと早く話してくれたらよかったのにと思えてならない。
「それで、上手く離婚できそうなの?」
「無理だら。泥沼だよ。あんたハイジさんからどこまで聞いた?」
そう言われてギクリとする。この言い方は、ハイジさんからどこまで話したかの報告がいっていないということ。間にハイジさんが入ったことで、旦那さんに会ったことやハイジさんとの会話など、お互いに認識していない部分があるに違いない。
「どこまでって……私もどこまで本当でどこまで嘘かもうわかんないよ。ハイジさんも言うこと適当だもん。何か子供と離ればなれになって、実家戻ったけど茉紀は旦那さん大好きだから離婚はないって聞かされてたし」
私がそう言うと、茉紀は二度瞬きをしてあははと大きく笑った。
思わぬ茉紀の言葉に私は大声で叫んだ。茉紀はぐっと眉を真ん中に寄せて「声がでかい」と言った。
「ご、ごめん……。まさかそんなことになってるとは思ってなくて……」
ハイジさんの話では、茉紀が旦那さんのことを大好きで子供達と離ればなれになっても踏ん切りがつかないなんていう状況だったはず。
その茉紀が離婚を決意するだなんて意外だった。
「そう? え? 普通2択じゃないだ?」
「だってあんた、旦那さんのこと大好きなんでしょ?」
「は? そんなことあるわけないじゃん。前から言ってんじゃん。次に子供できたらアイツの子じゃないって」
「……はあ? あれ本気だったの?」
「もちろん」
「じゃあ、麗夢は? 授かったってことはそれなりの営みをしたわけでしょ?」
「まあね。どうしても女の子が欲しかったから排卵日だけに的絞って的中だよ」
「え? すご……そんな簡単に子供できんの?」
私は、うどんをほぐしながら顔をしかめた。
「できる気したもん。そりゃ中には望んでもできない人もいるけんさ。私は望んでない時に光輝ができたんだよ? しかも別れるだ別れないだの話をしてる時」
「……そうだっけ?」
「そう。そん時もアイツの浮気が原因で別れる決意をしたわけ。そしたら子供いることわかってさ。1人で育てるの無理だから、認知だけして養育費ちょうだいって言ったら、向こうの親がそんな形だけのことさせられるわけないじゃないってさ」
「……聞いたことある」
「そうだよ。それで散々揉めて結局結婚しただよ」
「その間は浮気なかったの?」
「あったよ! これで3回目。今までは育児疲れとかもあってとても争う気にもなれなかったから泣く泣く許す形になったけんさ。もう今回ばかりは無理。アイツからも相手の女からも慰謝料もらうつもり」
「よく許したじゃん! 3回って……知らんかったよ。そんなことがあったなんて」
「許したっていうか、離婚の話は何度もあったけん、離婚は世間体が悪いからやめろって相手の親に言われたんだよね。女は一度嫁いだらどんなことがあっても主人についていくことですなんて言われてさ」
「は!? 何それ」
前々から思っていたけれど、茉紀の旦那さん側の家族は変わっている。私だったらきっと耐えられなかっただろう。
「少しばかりの気持ちだからって100万渡されてさ」
「ひゃ、100万!?」
「アイツは稼ぎないけど、実家は金あんだわ。だから私が嫁ぐのも反対だったわけ。まあ、私はそこそこ頭がよくて学歴はあったから? 渋々認めたってところ」
「おお、自分で言うね……」
「言うでしょ。だってアイツ、商社落ちて子会社の営業所にいったようなやつだよ? バンバン出世して稼ぐならまだしも、だらだら仕事してろくに稼ぎもしないくせに一丁前に浮気だけはするんだから」
「……あんたの旦那、モテるよね?」
「昔からね。顔はそんなによくないくせに調子だけはいいからさ。逆にあまねくらいのイケメンだったらこっちもしょうがないかなぁって思うけんさ、あの程度の男に浮気されてたかと思うと腹立たしくてしょんないよ!」
随分ご立腹だ。そりゃそうだろう。家事も育児もしないで給料も茉紀の方が上で、浮気までされて……。
「私だっていくらあまねくんがイケメンでも浮気されたら嫌だよ……」
「あんたんとこはないでしょ。あまねの方が惚れてんだから」
「そんだけ愛情感じる分、裏切られた時のショックが大きいと思うけど」
「まあね。って、あんたまだ新婚で何言ってるだ? 今日はね、あんたのノロケを聞きにきたわけじゃないだでね!」
そう言って箸の先を私に向けた。これは長くなりそうだ。そんなに鬱憤が溜まっているならもっと早く話してくれたらよかったのにと思えてならない。
「それで、上手く離婚できそうなの?」
「無理だら。泥沼だよ。あんたハイジさんからどこまで聞いた?」
そう言われてギクリとする。この言い方は、ハイジさんからどこまで話したかの報告がいっていないということ。間にハイジさんが入ったことで、旦那さんに会ったことやハイジさんとの会話など、お互いに認識していない部分があるに違いない。
「どこまでって……私もどこまで本当でどこまで嘘かもうわかんないよ。ハイジさんも言うこと適当だもん。何か子供と離ればなれになって、実家戻ったけど茉紀は旦那さん大好きだから離婚はないって聞かされてたし」
私がそう言うと、茉紀は二度瞬きをしてあははと大きく笑った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
専属秘書は極上CEOに囚われる
有允ひろみ
恋愛
手痛い失恋をきっかけに勤めていた会社を辞めた佳乃。彼女は、すべてをリセットするために訪れた南国の島で、名も知らぬ相手と熱く濃密な一夜を経験する。しかし、どれほど強く惹かれ合っていても、行きずりの恋に未来などない――。佳乃は翌朝、黙って彼の前から姿を消した。それから五年、新たな会社で社長秘書として働く佳乃の前に、代表取締役CEOとしてあの夜の彼・敦彦が現れて!? 「今度こそ、絶対に逃さない」戸惑い距離を取ろうとする佳乃を色気たっぷりに追い詰め、彼は忘れたはずの恋心を強引に暴き出し……。執着系イケメンと生真面目OLの、過去からはじまる怒涛の溺愛ラブストーリー!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる