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それぞれの門出
【4】
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小学1年生がどこまで理解できているかなんて私にはわからない。きっとそれは茉紀にもわからなくて、寂しい思いをさせないようにとここまで離婚せずにきたのだろう。
たとえ今光輝が辛くても、光輝が大人になった時、茉紀の行動を理解してくれればいいなぁと思う。
「茉紀は大丈夫? 向こうが再婚することになって……」
「私? 私はもちろん大丈夫。あんな男でよければくれてやるよ。家事も育児もやらない男だからね。結婚して私の苦労を思い知ればいいだよ」
うん、さすが茉紀……強い。
それでも今後1人で2人の子供を育てるのは大変だろう。まだ実家との仲が良くてよかった。
私はその後も暫く茉紀と話をする。その内に光輝がテレビの前で「轟き渡る孤高の遠吠え、キバレッド!」と決めポーズをし始める。
やっぱり好きなのはレッドなのね。
私も子供の頃には美少女戦士に憧れたなぁなんてほっこりする。
決め台詞は意味不明だけれど、恐らく光輝にとってはキバレッドがヒーローなのだろう。
「光輝、すっかり夢中だね」
「そうなんだよ。変身するトランシーバーみたいなの買わされてさ……戦隊モノもどんどん変わるからきりがないよね……」
茉紀は大きな溜め息をついている。その膝の上でおとなしく麗夢は座っているが、目の前の麦茶が気になるようで時々手を伸ばしている。
散々話をし、出したお菓子をある程度食べると「あまねもそろそろ帰ってくるかね? 邪魔になんない内に帰るかな」と茉紀は言った。
「あまねくんも、茉紀なら邪魔だなんて思わないと思うけんね」
「だけん、子供っちがいるでね。騒がしくなるし、今日のところは帰るよ」
茉紀がそう言うものだから、手土産を持たせてやり、一緒に家の外へ出た。あまねくんがいるつもりでやってきた茉紀は、近くのコインパーキングに車を停めてきたとのこと。
歩いてパーキングまで行こうとする茉紀を見送ろうとしていると、タイミングよくあまねくんの車が下がってきて自宅の駐車場へ停車した。
「おー、ピッタリだ」
茉紀が光輝の手を握ったままそう言うと、中からあまねくんと戸塚さんが降りてきた。
「こんにちは! 先日はご迷惑をおかけしてすみませんでした」
戸塚さんは元気な声でそう言ってこちらに頭を下げた。
「いえいえ、こちらこそそのままにしてしまってすみませんでした。無事に帰れましたか?」
「ええ。おかげさまで。これ、ほんのお詫びですがよかったら守屋くんと2人でどうぞ」
そう手渡されたのは和菓子のようで、その気遣いが嬉しくなる。
茉紀には、あまねくんが職場の先輩と食事に行っていることを伝えてあった。そのため状況を察したのか、戸塚さんと目が合うと軽く会釈をしてみせた。
「わざわざすみません。よかったら上がっていってください」
「いえ、おかまいなく。今日は直接お詫びをと思ってきただけなので」
遠慮して両手をぶんぶんと振る戸塚さん。わざわざ家に寄ってもらったのに、そのまま帰らせるのも悪い気がして私はあまねくんに視線を移した。
その時、「あ! ちょっ、光輝!」と茉紀の声が聞こえて振り返る。茉紀の手を離した光輝が家の前から道路に飛び出した。
その瞬間、けたたましい音が響く。車のクラクションだ。
たとえ今光輝が辛くても、光輝が大人になった時、茉紀の行動を理解してくれればいいなぁと思う。
「茉紀は大丈夫? 向こうが再婚することになって……」
「私? 私はもちろん大丈夫。あんな男でよければくれてやるよ。家事も育児もやらない男だからね。結婚して私の苦労を思い知ればいいだよ」
うん、さすが茉紀……強い。
それでも今後1人で2人の子供を育てるのは大変だろう。まだ実家との仲が良くてよかった。
私はその後も暫く茉紀と話をする。その内に光輝がテレビの前で「轟き渡る孤高の遠吠え、キバレッド!」と決めポーズをし始める。
やっぱり好きなのはレッドなのね。
私も子供の頃には美少女戦士に憧れたなぁなんてほっこりする。
決め台詞は意味不明だけれど、恐らく光輝にとってはキバレッドがヒーローなのだろう。
「光輝、すっかり夢中だね」
「そうなんだよ。変身するトランシーバーみたいなの買わされてさ……戦隊モノもどんどん変わるからきりがないよね……」
茉紀は大きな溜め息をついている。その膝の上でおとなしく麗夢は座っているが、目の前の麦茶が気になるようで時々手を伸ばしている。
散々話をし、出したお菓子をある程度食べると「あまねもそろそろ帰ってくるかね? 邪魔になんない内に帰るかな」と茉紀は言った。
「あまねくんも、茉紀なら邪魔だなんて思わないと思うけんね」
「だけん、子供っちがいるでね。騒がしくなるし、今日のところは帰るよ」
茉紀がそう言うものだから、手土産を持たせてやり、一緒に家の外へ出た。あまねくんがいるつもりでやってきた茉紀は、近くのコインパーキングに車を停めてきたとのこと。
歩いてパーキングまで行こうとする茉紀を見送ろうとしていると、タイミングよくあまねくんの車が下がってきて自宅の駐車場へ停車した。
「おー、ピッタリだ」
茉紀が光輝の手を握ったままそう言うと、中からあまねくんと戸塚さんが降りてきた。
「こんにちは! 先日はご迷惑をおかけしてすみませんでした」
戸塚さんは元気な声でそう言ってこちらに頭を下げた。
「いえいえ、こちらこそそのままにしてしまってすみませんでした。無事に帰れましたか?」
「ええ。おかげさまで。これ、ほんのお詫びですがよかったら守屋くんと2人でどうぞ」
そう手渡されたのは和菓子のようで、その気遣いが嬉しくなる。
茉紀には、あまねくんが職場の先輩と食事に行っていることを伝えてあった。そのため状況を察したのか、戸塚さんと目が合うと軽く会釈をしてみせた。
「わざわざすみません。よかったら上がっていってください」
「いえ、おかまいなく。今日は直接お詫びをと思ってきただけなので」
遠慮して両手をぶんぶんと振る戸塚さん。わざわざ家に寄ってもらったのに、そのまま帰らせるのも悪い気がして私はあまねくんに視線を移した。
その時、「あ! ちょっ、光輝!」と茉紀の声が聞こえて振り返る。茉紀の手を離した光輝が家の前から道路に飛び出した。
その瞬間、けたたましい音が響く。車のクラクションだ。
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