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それぞれの門出
【15】
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後からやってきたあまねくんも、既に膝の上にいる光輝を見つけて、ぶっと吹き出した。
「あまねにちゃんとありがとうしてよ」
光輝の頭にぽんっと手を置いた茉紀が目を細めて言う。
「あまね、ありがと!」
スキッチを持って嬉しそうに体を揺らしながら、笑顔であまねくんに顔を向けた。
呼び捨てされてるし。それも可愛くて、私も頬が緩む。
「だから、年上の人にはさんをつけなさいって言ってるでしょ」
何回言えばわかるの、と茉紀は疲れ果てた様子で抱いていた麗夢を抱き直す。麗夢はお腹いっぱいになって眠くなったのか、茉紀の腕の中で目を閉じていた。
「はーい」
気のない返事をして画面を見ながら、嬉しそうに振り返ると、同じように画面を覗き込んでいる戸塚さんがいる。
本当の親子のようだと思った。茉紀の元旦那さんよりも、よっぽど親子らしく見える。
「あまねくん、ありがとね」
洗い物を全て片付けた私は、まだ立ったままのあまねくんの元に行った。
「ううん。光輝くんも喜んでくれてよかったよ。子供は残酷だからね。仲間外れなんて平気でするんだから」
そう言ったあまねくんに、茉紀が「買ってやれなくて悪かったね」とつっかかっている。
「え!? そういう意味で言ったんじゃないじゃん。茉紀さん、本当嫌味っぽいんだから」
「あんたねぇ……嫌味っぽいのはどっちだっつーの。まあ、今回は借りを作っちゃったから悪態もつけないけど」
「借りなんて思わなくていいですよ。律にとってはいらないものなんだから」
「そうは言っても高価なものだから……」
「大丈夫、律は俺より稼いでるから」
上着を脱ぎならそう言ったあまねくん。私はそれを受け取って、ハンガーに吊るしに向かった。
「ああ、弁護士だもんね。あんなゲームのコレクションを見せられたらとても信じがたいけど」
やり取りは声だけ聞こえる。未だに私は律くんの部屋を見たことがないけれど、茉紀の言い方だと、部屋に入ったのだろうか。
「とても光輝くんには見せられないですね」
「ほんとだよ! あれもこれも欲しいってなっちゃうから! でも、律くんはあんたと違ってしっかりしてそうだね」
「……どういう意味ですか?」
「ん? THEお兄ちゃんって感じ。しっかりした頼もしい感じが漂ってるよね。前に会った時には仕事中だったからなぁ」
「あー……」
詳細を知らないまでも、離婚をするにあたり律くんを紹介する旨をあまねくんには説明してある。
当然プライベートで守屋家へ行くのは初めてなわけで、仕事モードを解除した律くんに会うのも初めてのはず。反対にスーツを着ていても仕事モードの律くんには会ったことのない私。
詐欺の件も主体的に動いてくれたのは律くんだけれど、話し合いは律くんの勤める事務所に行くこともなくほとんどが守屋家で行われた。
そんな茉紀もすぐに女性弁護士を紹介してもらい、律くんと会ったのもほんの少しだろう。
「茉紀もありがとうね。わざわざ一緒に行ってもらって」
私はリビングに戻って声をかけた。
「ううん、私もお礼言いたかったし。今日はまどかさんいないんですねって寂しがってたよ」
「ん?」
「律くん」
「寂しがってないよ! 何で律が寂しがるのさ!」
私と茉紀との会話にムキになって割り込んでくるあまねくん。茉紀だってほんの冗談なのに、すぐに子供みたいに拗ねるんだから。
「私からも今度お礼に行くね。ペッパーチーズクッキーでも作ってこうかな」
あまねくんをさておき、茉紀と会話を続ける。
「ペッパーチーズクッキー?」
「うん、律くん甘いもの苦手なんだ」
「へぇ……」
そんな会話をしてると、あまねくんが私の右腕を掴んで「律に手作りなんてあげなくていいの!」とむくれていた。
「あまねにちゃんとありがとうしてよ」
光輝の頭にぽんっと手を置いた茉紀が目を細めて言う。
「あまね、ありがと!」
スキッチを持って嬉しそうに体を揺らしながら、笑顔であまねくんに顔を向けた。
呼び捨てされてるし。それも可愛くて、私も頬が緩む。
「だから、年上の人にはさんをつけなさいって言ってるでしょ」
何回言えばわかるの、と茉紀は疲れ果てた様子で抱いていた麗夢を抱き直す。麗夢はお腹いっぱいになって眠くなったのか、茉紀の腕の中で目を閉じていた。
「はーい」
気のない返事をして画面を見ながら、嬉しそうに振り返ると、同じように画面を覗き込んでいる戸塚さんがいる。
本当の親子のようだと思った。茉紀の元旦那さんよりも、よっぽど親子らしく見える。
「あまねくん、ありがとね」
洗い物を全て片付けた私は、まだ立ったままのあまねくんの元に行った。
「ううん。光輝くんも喜んでくれてよかったよ。子供は残酷だからね。仲間外れなんて平気でするんだから」
そう言ったあまねくんに、茉紀が「買ってやれなくて悪かったね」とつっかかっている。
「え!? そういう意味で言ったんじゃないじゃん。茉紀さん、本当嫌味っぽいんだから」
「あんたねぇ……嫌味っぽいのはどっちだっつーの。まあ、今回は借りを作っちゃったから悪態もつけないけど」
「借りなんて思わなくていいですよ。律にとってはいらないものなんだから」
「そうは言っても高価なものだから……」
「大丈夫、律は俺より稼いでるから」
上着を脱ぎならそう言ったあまねくん。私はそれを受け取って、ハンガーに吊るしに向かった。
「ああ、弁護士だもんね。あんなゲームのコレクションを見せられたらとても信じがたいけど」
やり取りは声だけ聞こえる。未だに私は律くんの部屋を見たことがないけれど、茉紀の言い方だと、部屋に入ったのだろうか。
「とても光輝くんには見せられないですね」
「ほんとだよ! あれもこれも欲しいってなっちゃうから! でも、律くんはあんたと違ってしっかりしてそうだね」
「……どういう意味ですか?」
「ん? THEお兄ちゃんって感じ。しっかりした頼もしい感じが漂ってるよね。前に会った時には仕事中だったからなぁ」
「あー……」
詳細を知らないまでも、離婚をするにあたり律くんを紹介する旨をあまねくんには説明してある。
当然プライベートで守屋家へ行くのは初めてなわけで、仕事モードを解除した律くんに会うのも初めてのはず。反対にスーツを着ていても仕事モードの律くんには会ったことのない私。
詐欺の件も主体的に動いてくれたのは律くんだけれど、話し合いは律くんの勤める事務所に行くこともなくほとんどが守屋家で行われた。
そんな茉紀もすぐに女性弁護士を紹介してもらい、律くんと会ったのもほんの少しだろう。
「茉紀もありがとうね。わざわざ一緒に行ってもらって」
私はリビングに戻って声をかけた。
「ううん、私もお礼言いたかったし。今日はまどかさんいないんですねって寂しがってたよ」
「ん?」
「律くん」
「寂しがってないよ! 何で律が寂しがるのさ!」
私と茉紀との会話にムキになって割り込んでくるあまねくん。茉紀だってほんの冗談なのに、すぐに子供みたいに拗ねるんだから。
「私からも今度お礼に行くね。ペッパーチーズクッキーでも作ってこうかな」
あまねくんをさておき、茉紀と会話を続ける。
「ペッパーチーズクッキー?」
「うん、律くん甘いもの苦手なんだ」
「へぇ……」
そんな会話をしてると、あまねくんが私の右腕を掴んで「律に手作りなんてあげなくていいの!」とむくれていた。
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