【R18】美人過ぎる○○は今日も旦那様からの寵愛を受ける

雪村こはる

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それぞれの門出

【19】

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「実家に帰るなんて言わないよね?」

「え? ああ……うん」

 あまねくんの言葉にどきりとする。産まれたばかりの子供と家に2人きりなんて心細いから、暫くは守屋家に泊まらせてもらおうかと思っていたのだ。
 けれど、この言い方だと帰るのはいやなのかな……。

「……まどかさん、帰りたいの?」

「帰りたいっていうか……あまねくんが仕事の間は私1人になっちゃうし……ダリアさんがいてくれたら心強いなって思ったんだけど……」

「……でも、お義姉さんも1人でみてるじゃん」

「それは菅沼さんの両親も共働きだし、うちもそうだから仕方なくでしょ? でも、あまねくんちならダリアさんもおばあちゃんもいれくれるし……心配だったらおいでって前から言ってくれてたからそうしようと思ってたの……」

「俺、そんなの聞いてないよ?」

「ご、ごめん……あまねくんならいいよって言ってくれると思ってたから……」

「何で?」

「え? 何でって……あまねくん、俺の家族と仲良くしてくれるの嬉しいって言ってくれたじゃん。私も……本当の家族みたいに頼れるところには頼りたいって思って……」

「まどかさん、頼れるのは俺だけって言ったじゃん」

 心なしか、あまねくんの声が低くなったような気がする。戸塚さんと茉紀が帰ってから様子が変だ。いつもなら、こんなふうに私の言葉に対抗するようなことは言わないのに……。
 抱き締めている彼の腕にそっと触れ、「そうだけど……あまねくんがいない間はどうしたらいいの? うちで一人でいる時に子供に何かあったら……」そう言いかけている内に手が震えた。

 その異変に気付いたあまねくんが、慌てて「ご、ごめん! そうだよね、昼間は不安だよね? じゃあ、昼間は実家に行って、夜は俺と一緒に帰ろう?」と言った。

「……それはできないよ。子供の首がすわるまではあちこち動かしたくないし……。できたら、向こうにちょっと泊まれないかなって……」

「泊まり? それなら、行かなくていい」

 何故か彼はそう言ってまた私の肩に顔を埋めた。

「ねぇ、あまねくん? さっきから何か変だよ? 何でそんなに嫌がるの? 前は実家に行くものも、ダリアさんと仲良くするのも喜んでくれたじゃん……」

「うん……。嬉しいよ。母さんとばあちゃん大事にしてくれるの嬉しい。でも、夜もあの家にいるのはやだ……」

「あまねくん? どうしたの?」

「……律、いるから」

 あまねくんが顔を伏せたまま、そんなことをポツリと呟いた。
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