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それぞれの門出
【32】
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5月4日 月曜日
私はどっと疲れた重い重い体を横たわらせ、天井を見上げていた。下半身はずきずきと痛くて、急激な眠気に襲われた。
それでも何とか寝ないでいられるのは、ベッドの端で愛しの旦那様がいつまでも泣いているから。
「あまねくん……大丈夫?」
「だ、大丈夫……。もう、俺ね……やっぱりダメかもしれない」
何度も何度も再生している私の出産動画。
昨日はあまねくんの誕生日を盛大にお祝いした。ケーキを作り、誕生日プレゼントに選んだ名刺入れを渡して楽しい1日を過ごした。
明後日には予定日かぁなんて言っていたら、夕食を終えた頃にきた陣痛。
最初は生理痛みたいな痛みでこんなもんかなんて思ってたのに、その内にどんどん痛くなっていった。
え!? こんなに痛いの!? なんて思っていたらいつもは騒がしいあまねくんが急にしっかりしだして、「まどかさん大丈夫。俺がずっとついてるからね」なんて言いながらずっと私の隣にいてくれた。
間隔が10分おきになったら電話して下さいと言われていた通り、あまねくんが電話をしてくれた。それからパジャマやタオルを用意したりちゃきちゃきと入院準備を進めていた彼。
律くん……本当にあまねくんは人が変わったみたいにしっかりしてしまったよ……。
唖然としながらも安心感に包まれて陣痛に耐えた。あまねくんは私の両親、姉、守屋家にも連絡を入れてくれた。
予てより立ち会い出産を希望していたため、お父さんも一緒に来て下さいねと言われていたのであまねくんと病院へ。
いよいよかぁなんて思っていた。本陣痛があんなに続くのね……。
格闘したこと、したこと。もう涙が出そうだった。
子宮口を確認されて分娩台へ上がったのだけれど、隣の分娩室からは壮絶な叫び声が聞こえた。
えぇ!? 隣で何が起こってるの!? 出産!? 本当に出産!?
そんなことを思っている内に、自分の出産が始まる。いきみたいのに「今はダメ!」と言われていつならいいの!? と怒鳴りたくなる。
カメラをかまえているあまねくんは「パパ、撮るならこっち!」と腕を引かれて怒られてるし、てんやわんや。
いよいよ分娩が始まると、隣の分娩室は静かになっていて、私は助産師さんの言うとおりに息を吸ったり止めたり。
痛いのなんの……。鼻からスイカが出る痛さって例えた人、天才かよって思ったよ。
ようやく下半身の圧迫感が去ったかと思うと、赤ちゃんの産声が聞こえた。
産まれたーー!! と感動に包まれていたら、私よりも先に泣いてるあまねくん。
パパ……。
一番に私に抱っこさせてもらって「元気な女の子ですよー」なんて言われてようやく私も一粒涙が溢れた。
「体重いくつー?」
「3400!」
そんなやり取りが聞こえる。
え……でかくない? うちの子女の子ですよね……?
そんな疑問を抱く中、「まどかさん、陽茉莉が可愛いよー! まどかさんが無事でよかったよー!」と泣くあまねくん。
「パパ、うるさい!」
そう助産師さんに怒られてしょんぼりしてるあまねくん。
パパは先に退室させられて、私は2時間分娩室で待機。
え? 歩くの? って思いながら病室まで歩かされて、あれよあれよという間に現在の状況。
出産まで10時間かかって私はぐったり。でもあまねくんはいつまでも泣いている。
産んだのあまねくんなんじゃないかってくらい。
「あまねくん……私、もう無理。ちょっと寝かせて……」
やっぱりもう無理だ。そう思ったら急激に睡魔が襲ってきて、吸い込まれるようにして眠りに落ちた。
目が覚めると、産まれたのが昼間でよかったねぇなんて嬉しそうなお母さん。お父さんはあまねくんと一緒に泣いている。だから、何でお父さん側が泣くのよ……。
面会もそこそこに、ご飯も美味しいし何とか歩けるしで早く体が回復してくれることを願う。
けれど、私の試練は始まったばかりで夜からはすぐに授乳の練習。全然上手くできなくて、嫌になる。
赤ちゃんが勝手に飲んでくれると思ってたのに、母乳が出ているのかもよくわからない。
乳首を咥えさせるだけで一苦労で、こんなのいつまでやるのって更にぐったり。3時間おきにちゃんと来て下さいね。体重計って下さいねって……。茉紀の言ってた産まれてからが地獄の意味がようやくわかった。
1日の流れを身をもって知った私は、家に帰ってから大丈夫だろうかと陽茉莉を抱きながら静かに目を閉じた。
私はどっと疲れた重い重い体を横たわらせ、天井を見上げていた。下半身はずきずきと痛くて、急激な眠気に襲われた。
それでも何とか寝ないでいられるのは、ベッドの端で愛しの旦那様がいつまでも泣いているから。
「あまねくん……大丈夫?」
「だ、大丈夫……。もう、俺ね……やっぱりダメかもしれない」
何度も何度も再生している私の出産動画。
昨日はあまねくんの誕生日を盛大にお祝いした。ケーキを作り、誕生日プレゼントに選んだ名刺入れを渡して楽しい1日を過ごした。
明後日には予定日かぁなんて言っていたら、夕食を終えた頃にきた陣痛。
最初は生理痛みたいな痛みでこんなもんかなんて思ってたのに、その内にどんどん痛くなっていった。
え!? こんなに痛いの!? なんて思っていたらいつもは騒がしいあまねくんが急にしっかりしだして、「まどかさん大丈夫。俺がずっとついてるからね」なんて言いながらずっと私の隣にいてくれた。
間隔が10分おきになったら電話して下さいと言われていた通り、あまねくんが電話をしてくれた。それからパジャマやタオルを用意したりちゃきちゃきと入院準備を進めていた彼。
律くん……本当にあまねくんは人が変わったみたいにしっかりしてしまったよ……。
唖然としながらも安心感に包まれて陣痛に耐えた。あまねくんは私の両親、姉、守屋家にも連絡を入れてくれた。
予てより立ち会い出産を希望していたため、お父さんも一緒に来て下さいねと言われていたのであまねくんと病院へ。
いよいよかぁなんて思っていた。本陣痛があんなに続くのね……。
格闘したこと、したこと。もう涙が出そうだった。
子宮口を確認されて分娩台へ上がったのだけれど、隣の分娩室からは壮絶な叫び声が聞こえた。
えぇ!? 隣で何が起こってるの!? 出産!? 本当に出産!?
そんなことを思っている内に、自分の出産が始まる。いきみたいのに「今はダメ!」と言われていつならいいの!? と怒鳴りたくなる。
カメラをかまえているあまねくんは「パパ、撮るならこっち!」と腕を引かれて怒られてるし、てんやわんや。
いよいよ分娩が始まると、隣の分娩室は静かになっていて、私は助産師さんの言うとおりに息を吸ったり止めたり。
痛いのなんの……。鼻からスイカが出る痛さって例えた人、天才かよって思ったよ。
ようやく下半身の圧迫感が去ったかと思うと、赤ちゃんの産声が聞こえた。
産まれたーー!! と感動に包まれていたら、私よりも先に泣いてるあまねくん。
パパ……。
一番に私に抱っこさせてもらって「元気な女の子ですよー」なんて言われてようやく私も一粒涙が溢れた。
「体重いくつー?」
「3400!」
そんなやり取りが聞こえる。
え……でかくない? うちの子女の子ですよね……?
そんな疑問を抱く中、「まどかさん、陽茉莉が可愛いよー! まどかさんが無事でよかったよー!」と泣くあまねくん。
「パパ、うるさい!」
そう助産師さんに怒られてしょんぼりしてるあまねくん。
パパは先に退室させられて、私は2時間分娩室で待機。
え? 歩くの? って思いながら病室まで歩かされて、あれよあれよという間に現在の状況。
出産まで10時間かかって私はぐったり。でもあまねくんはいつまでも泣いている。
産んだのあまねくんなんじゃないかってくらい。
「あまねくん……私、もう無理。ちょっと寝かせて……」
やっぱりもう無理だ。そう思ったら急激に睡魔が襲ってきて、吸い込まれるようにして眠りに落ちた。
目が覚めると、産まれたのが昼間でよかったねぇなんて嬉しそうなお母さん。お父さんはあまねくんと一緒に泣いている。だから、何でお父さん側が泣くのよ……。
面会もそこそこに、ご飯も美味しいし何とか歩けるしで早く体が回復してくれることを願う。
けれど、私の試練は始まったばかりで夜からはすぐに授乳の練習。全然上手くできなくて、嫌になる。
赤ちゃんが勝手に飲んでくれると思ってたのに、母乳が出ているのかもよくわからない。
乳首を咥えさせるだけで一苦労で、こんなのいつまでやるのって更にぐったり。3時間おきにちゃんと来て下さいね。体重計って下さいねって……。茉紀の言ってた産まれてからが地獄の意味がようやくわかった。
1日の流れを身をもって知った私は、家に帰ってから大丈夫だろうかと陽茉莉を抱きながら静かに目を閉じた。
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